商店街に対するイメージがあいまいなのです。
まちの玄関である駅前。都市計画で、駅前は商業地域に位置付けられることが多いのです。ここでは多様な業種が立地でき、高いビルを建てられます。
過大な商業系用途
商業地域と道路に沿った近隣商業地域(商店街に必要な店舗は大抵立地可能)を合わせた面積は、必要とされる面積より広めとなっています。商店やビルを集めるともっと小さな地域に収まるのですが、実際は住宅などが混在することになっているのが現状です。
既存の市街地に用途地域の規制をかける際、建物が違法建築になってしまないよう、あまり厳しく規制をかけられないわけです。
商業地域と名の付くものの、その地域は「何でも地域」と行った方が適切かもしれません。他の地域で規制されている施設の立地が可能となる代わりに、住宅が規制されているわけではありません。
商業地域を特徴づけているのは、容積率でしょう。高いビルが建てられるということは、それだけ家賃収入が期待できるのです。しかし商店街を構成する店舗は1階部分のみです。2階以上の部分は商店街に不要なのです。
つまり問題を整理するとこのようになります。
このように2種類の機能が混在しているので商店街の正体が見えにくくなっていると思うのです。そこで考えを単純にするために商業の機能を「商店街地域」と名付けましょう。
商店街地域は一種の公共財といえるでしょう。これは、それ自体何も利益を生み出さない駅前広場と同じ発想です。
駅前広場に面する土地はまち一番の地価となりますが、広場自体の土地は限りなくただです。所有者である自治体にとっては、維持費がかかるばかりで収益はないからです。
商店街地域は、まちの住民に必要な店舗が高い密度で連担するよう誘導します。
これらの条件を見てみると、現状の規制では商店街を形成するための条件を満たしていないことが感じられるのです。
容積率が400%もあるような地域で、それに見合った商店街の形態としては、下駄履きビルが挙げられるでしょう。
下駄履きビル
この事例は、事務所の需要があまり多くない地域であることから、集合住宅の下に店舗があります。単純に商店街を形成するのに、2階以上の部分がなぜ必要となるのか理解に苦しみます。
しかし資産を最大限活用するのは自然なことです。今の規制ではビルを建てるしか無いのです。
ですから商店街地域のような、平屋の店舗しか建てられない厳しい規制の地域を駅前の一等地に持ってくるのがいいと思うのですよ。
秋田駅前が寂れているというのです。全国的に商店街は不振ですが、仙台や盛岡にあるような商店街すら形成されていないというのです。実はかつて駅前には金座街などの駅前商店街が軒を連ねていたのですが、再開発により、デパートのテナントに入ってしまったというのです。
秋田駅前
秋田駅前の道路網計画は理想的だと思うのです。
上記で「商業ゾーンの機能が満載」と言いつつ、仲小路には肝心の商店街が形成されていませんでした。最近はアーケードができて、商店街らしく見えますが、店舗の数はわずかです。幹線道路に分断されない商業ゾーンが確保されているのに生かされてません。
もともと、金座街をはじめとする駅前商店街は、縦横無尽の狭い路地に軒を連ねるという状態でした。全国の共通の課題として、防災上(火事になったら消火も避難もできない)、権利関係上(権利関係が輻輳していて、将来建て替えができずにゴーストタウン化する)の問題があったのだと推察されます。
解決策のひとつとして土地区画整理事業があります。道路を広げて少し小さくなった敷地に建物を建て直すのです。しかし、敷地が小さすぎて、個別に建て替えができず、立体的(つまりビル)に敷地を再配分する市街地再開発事業を手法として選択したのでしょう。
結果、商店街が丸ごと再開発ビルに入ってしまうことになったのです。私など新参者はデパートとスーパーがあるという認識のみで、そこにかつての商店街が入っているとは思いませんでした。
せめて駐車場ビルの1階部分のように商店街が通路に面していればよいのですが。再開発ビルの壁はそっけないものです。
「全国チェーンのビジネスホテルや居酒屋が次々に進出している」−仲小路が商店街の中心として考えると、周辺に位置する広小路にビジネスホテルや居酒屋は適地だと考えるのです。千秋公園が目の前にあり、景色もいいし、居酒屋は宿泊客にとってもありがたいことでしょう。
「元の商店は次々に消え、秋田らしさが急速に失われている。」−秋田らしい商店街は、すでに再開発ビルのテナントになってしまっているのです。
「・・・(前略)行政の責任ではありません。(後略)・・・」−この言葉に憤慨する記事の読者もいるようですが、行政の責任に帰結してしまうのは、乱暴でしょう。ただ注意しなければならないのは、私が問題としている再開発事業についてです。再開発ビルに商店街をそっくり入れてしまって、商店街の活気がなくなってしまったという件については、組合施行なので、地元地権者の判断でこうなったという理屈になります(実際は核店舗の意向が強いのですが)。
商店街と再開発ビルの違いは、容積率です。商業地域に与えられる高い容積率は、すべてを活用する必要はありませんが、ビルを建てることによる収益という誘惑は強いものです。容積率の誘惑のない商店街地域は「土地が安いため低価格でも利益を上げられる」店舗の誘致可能となるでしょう。
(初出07.05.21)(再編集10.09.06)編集前
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