施設に垂直に通路を配置する直交型を押し進めるには、駐車場の敷地は奥行きが長い方が利用効率がいいわけです。
前回の「駐車場を迷い道にしない」にも述べましたように、駐車場の通路は施設に向かっている方が良いわけです。これを直交型とよんでおきます。
先ず直交型の場合、車を降りた利用者が通路を横断することが少ないので安全です。通路が施設と並行に配置された並行型ではいくつもの通路を横断することを余儀なくされて危険です。
直交型の駐車場
一度施設の近くに寄ってから、駐車スペースを探すことになるので迷うことなく決断できます。進むにつれて、施設から遠ざかっていくのですから、一番最初に見つけたところで即決です。迷走することもなく、全体として流れがスムーズとなります。このことは前回の「駐車場を迷い道にしない」にも書いていますので、まだの方はご一読ください。
並行型の駐車場
自由に通路を配置できる大規模な駐車場にでも、直交型の通路を持つ駐車場は少ない気がします。
その理由のひとつは利用効率でしょう。例えば敷地に奥行きが少なく、幅が広い場合、並行型の通路を持つ駐車場の方が利用効率が高いものになります。何となく理解できるでしょう。
それが目の錯覚でないのか確認する意味でも、駐車場のモデルを想定し、利用効率の比較をしてみます。利用効率とは全体面積に対する駐車ますの面積が占める割合パーセンテージで表したものです。
横長の敷地に並行型の通路
横長の敷地に直交型の通路
例えば横長の例として、幅95m、奥行き50mの敷地の場合、並行型の利用効率が53%であるのに対し、直交型は50%と少なくなっています。住宅地の計画でも当てはまるのですが、道路で囲まれた街区は長いほど宅地率が向上するということで、利益を生むための手法として定着しています。駐車場も同様、通路で囲まれた「島」の延長が長いほど、たくさんの車が止められるというわけです。
直交型を有利にしたければ、奥行きを横幅よりも長くすれば良いわけです。次の表は横幅と奥行きの関係により有利な通路方向を示しています。ちょうど同じとなるのが35m同士、50m同士という具合に、敷地の形状が正方形になったときです。こんなことは、わざわざ表にしなくても直感的に分かりそうなものですね。
利用効率の表(並行型)
利用効率の表(直交型)
しかし横幅が110mとなった時点から、ちょっと様相が異なります。このとき、奥行きが65mしかなくても、直交型が有利となるのです。
これは、100m間隔で歩行者用の通路を入れたために起こったものです。住宅地の場合も長い街区長により行き来が不便になる上に、災害時の避難路確保に問題を生じるということで、おおむね120m間隔を標準として道路を設けることになっています。
駐車場の島も同様、施設に向かうのに車の横をすり抜けるのは好ましいことではありません。ましてショッピングカートを転がしながらでは、車に傷が付いてしまいます。そこで並行型の通路の場合、一定間隔ごとに歩行者用の通路を確保しているようです。どのような基準があるのか知らないので、とりあえず歩行者が迂回するのを苦痛とならない程度として100m間隔を想定してみました。
どちらが有利か示す表
こうしてみると一定の奥行きさえ確保してしまえば、直交型は常に有利に働くようです。この一定の奥行きというのが並行型で必要となる歩行者用通路の間隔と等しいと言うことになります。利用効率の観点からも直交型はそんなに悪くないという気がしてきました。
(04.12.20)
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