郊外型のショッピングセンターは集客力がものを言うようです。
ニューヨークはアメリカでないと言われます。「いなか」こそアメリカらしいというわけです。広い平原に町が広がる「いなか」の風景のなかでもショッピングモール(ショッピングセンター)は、まちのシンボルです。結構「いなか」にも立派なショッピングモールがあり、老人たちがフードコート(※後述)に集まるなど、そのまちの生活の中心となっています。
ところで、アメリカのショッピングモールの特徴は専門店街と核店舗(大規模店舗)がうまく共存しているところにあるようです。日本のように大型スーパーが中央を独占し、専門店を端っこに追いやって、ショッピングセンターと名乗っているのとは発想が違います。
日本では商業の中心地といえば、駅前と決まっています。駅前に出店すればお客さんはたくさんいるわけで、各店舗は自分が目立てば良いわけです。
しかし、商業の機能が郊外に分散するアメリカでは、何もしなければ利用客はショッピングモールを見つけてくれません。せっかく見つけてくれた利用客をつなぎ止めるにはショッピングモール自体の価値を高めなければならない訳です。
デパート、スーパーなど大規模店舗はどこに行っても同じサービスというのも特徴ですから、差別化は図れません。特徴を出そうと思えば専門店街をいかに魅力的にするかにかかっているわけですが、婦人服や化粧品など高収益な店舗が必ずしも専門店街の魅力向上にはつながるとは限りません。
そこで各ショッピングモールが力を入れているのは新規参入のための工夫です。やる気のあるベンチャーを受け入れるために、専門店街は様々な規模の区画が用意されていて、老舗からベンチャーまであらゆる規模に対応できるようになっています。
フードコート(ファーストフードの屋台村みたいなもの)も、ショッピングモールの集客力の重要な要素です。ここでは巧みに競争原理が生かされています。これからひと旗揚げようという人のために、売店のような小さな店舗が用意されており、成績が良ければ本格的に店舗を確保することができます。アメリカンドリームを夢見て世界から集まった人たちにより、フードコートではインド、タイ、ギリシャ、メキシコ等々世界各国の料理が提供されるようになり、それがショッピングモールの魅力にもつながっていきます。
このようにソフト面でも日本とは違いが見られるのですが、施設の形態にも興味深い違いが見られました。ショッピングモールの掟として紹介してみましょう。
広い国土のためかもしれませんが、広い敷地の真ん中に施設を配置するのがおきまりです。このため利用客は、四方八方から来店する事になるのですが、この結果専門店街において立地の善し悪しの格差が少なくなります。
さらにそれぞれの入り口はとてもちっぽけで、利用客の視線に入らないよう配慮されています。出入口を立派にしてもそれは利益を生みません。入口=出口ですから、せっかく入って来た利用客に立派なエキジット(出口)ホールをみせてしまっては、「もう帰る時間ですよ」と言わんばかりです。つまり、一度建物に入った利用客を封じ込めるため、出口は極力見えないような工夫です。一度入ったら外界と遮断される感覚は東京のディズニーランドでも体験できるでしょう。
上記に示しましたように、核店舗(大規模店舗)は真ん中に陣取るようなことはしません。そんなことをすれば専門店街の魅力が隠れてしまい、ショッピングモール自体の価値が下がってしまうのです。核店舗は必ず「端」です。専門店街を中心にするとはいえ、核店舗の力は絶大です。多少離れていても集客力が無くなる訳ではありません。
核店舗はたいてい2店舗以上配置されます。その理由は、専門店街の両端を核店舗でおさえておかないと、人の流れが偏ってしまうのです。もし、右の図で一番右の核店舗が無くなったとしましょう。おそらく、右半分の専門店街の人通りは極端に少なくなります。脇役に徹するも重要な役回りの核店舗と専門店街の共存共栄といったところでしょう。
これが最大の特徴なのですが、核店舗が3軒あればTの字、4軒あれば十の字という具合に通路は集約されています。これにより
ということが可能となるわけです。
通路の本数が少ないということは、各店舗の間口の確保が大変だということです。みんな平等に間口を分け合うことになります。アメリカの店舗面積は広いので、間口に対して相当長い奥行きを持つ店舗もあるわけです。
しかし利用客にとっては商店街の各店舗の間口が狭いおかげで、あまり歩かなくとも多くの店を巡ることが出来ます。店舗の側としても、すべての店舗がこのメインストリートに面しているのでビジネスチャンスが平等に与えられている訳です。
江戸時代から続く古い商店街を見ればわかるように日本の商店街は昔から間口が狭く奥行きが長いウナギの寝床状でした。間口の幅だけ税をとられるからとか、仕方なくとかネガティブな理由もありそうですが、利用客にとって限られたスペースで多くの店舗が並ぶことが便利な商店街だと言うことだったのではないでしょうか?間口がとても広い日本のショッピングモールにおける専門店街を見ると何か不自然なものを感じます。
下記のリンクは実際のショッピングモールの案内図です。日本のものとちょっと違うなと思われることでしょう。
専門店街は大きな店も小さな店もメインストリートに面するように工夫されています。業務用の通路が裏側に配置されていることで、利用客がごった返すモールの通路を荷物を積んだ台車がゴロゴロと行き交うことはありません。
このページの初出は10年前のことで、日本でもポツリポツリと郊外に巨大ショッピングモールが出現して来たころです。近隣にも「動線は核店舗を結ぶ1本のみ」タイプが開業したので、下記の写真を追加しました。
このショッピングモールはゆるやかなカーブをともなった3層の吹き抜け通路を持ち、ほとんどの店舗が通路に面しており、ひとめでにぎやかな様子が伺えます。通路がカーペット敷きなのが落ち着いた空間を創出しています。
私の住んでいる徒歩圏にもショッピングモールが開業し、散歩の際の絶好の目的地となっています。コーヒーショップでくつろぐのが何よりの楽しみとなっています。このページの内容もすでに単なる見慣れた風景となっているのかも知れません。
アメリカの事情を紹介してきましたが、今後の展開はさっぱりわかりません。ただ、かつては典型的な核店舗を結ぶタイプのショッピングモールが閉鎖に追い込まれているという情報もあり、事情は激変しているのかもしれません。
(初出00.03.25)(再編集03.06.16)(再編集09.05.18)(再編集11.02.21)編集前(log/2040.html)
アメリカのショッピングモールに見られる人の動線は核店舗同士を結ぶ1本のみという例がほとんど。でも、1本だから回遊性が無いというのは発想が短絡すぎます。
まちのスポットを結ぶ
町と人の流れについて論じている時、しきりに出てくるキーワードのひとつに「回遊性」が挙げられます。この言葉は「マグロの生態」だけでなく「人間」にも使われる言葉だったのです。特によく使われるのは、観光地や商業地でお客さんを誘導する算段を立てている時でしょう。「もっと回遊性を高めて人の流れを活発にしよう」と、いうふうに使われます。
がんばって一筆書きをつくってみても、その沿道が閑散としていたり、歩くのがイヤになるほど長い距離だったら人の流れが衰えてしまいます。
回遊性は人の流れです。道が無くても流れが出来ればそれで回遊性は生まれます。
古来より日本で人の集まる所と言えば道路沿い、一方ヨーロッパ(アメリカもヨーロッパの伝統を受け継いでいると思う)では広場と言えるでしょう。
ショッピングモールを見ても、お国柄が感じられます。日本のショッピングモールは、狭い幅の通路が縦横に張り巡らされている一方で、アメリカでは前述の通り、幅の広い通路が1本です。1本に集約したおかげで、通路は広場としての機能を併せ持っているというわけです。
日本型ショッピングモールの動線
アメリカ型ショッピングモールの動線
いずれも回遊性は実現されています。
日本型では通路をたどればぐるっと一筆書きできます。
一方アメリカ型でも広場状の通路は一度に両側の店舗を見ることが出来ず、広場をぐるりと回るように1周するという動線が形成されるでしょう。
誰が言ったか知りませんが、商業施設計画の教科書には「買い物客が歩いてくれる距離は600メートルまで」と、謳われています。いくら楽しいショッピングモールでも歩くばかりでは疲れてしまうというわけです。
このことに着目すると、日本型の欠点が見えてきます。アメリカ型は広場状の通路なので、多くの店舗を一度に見渡すことでき、歩かずに済ませやすい構造です。
ところが、日本型の細い通路では、行ってみないとどんなお店なのかわかりません。歩くこと、発見することの楽しさは、裏を返せば歩くことを強制し、探しにくくしていることだってあるのです。
すべての店舗を巡るには長すぎる
人の流れは広場でも生まれます。「広場だから回遊性が無い」とは言い切れません。でも、日本のショッピングモールの計画、まちの計画には賑わいのある「道」をより長くつくることに力が注がれているようです。
ここには、間口に対する信仰に近いこだわりが見え隠れしているように思えます。次は間口について考えてみます。
近年、百貨店やスーパーが経営不振に陥ることとなり、核店舗から撤退することもあります。こちらのショッピングモール(http://tokyobay.lalaport.net/pc/shop_guide/floor/)も百貨店とスーパーが両方とも撤退し、核店舗なしを前提としてリニューアルされました。その基本形態は「ループ型」。これからの主流かもしれません。
(初出00.04.17)(再編集03.07.14)(再編集09.05.18)編集前(log/2041.html)
イベント、広告、有力店の誘致に加えて、モール内の店舗配置はこれからますます重要になってくると思います。
ここに示したのは、土地評価に使用する表の一部です。
奥行き(m) | 高度商業地 | 商業地 | 住居地 |
---|---|---|---|
6 | 99.1 | 97.9 | 95.0 |
7 | 99.4 | 98.5 | 96.1 |
8 | 99.7 | 98.9 | 96.9 |
9 | 99.8 | 99.2 | 97.6 |
10 | 100.0 | 99.6 | 98.2 |
11 | 98.5 | 99.8 | 98.6 |
12 | 97.0 | 100.0 | 99.1 |
13 | 95.6 | 99.0 | 99.4 |
14 | 94.2 | 98.0 | 99.7 |
15 | 92.1 | 97.0 | 100.0 |
16 | 91.5 | 96.1 | 99.5 |
17 | 90.2 | 95.2 | 98.9 |
18 | 89.0 | 94.3 | 98.4 |
19 | 87.8 | 93.4 | 97.9 |
20 | 86.6 | 92.5 | 97.4 |
奥行き20mの住居地が1平方メートルあたり20万円で取り引きされるとすれば(数値は100(%)ですから減点はありません)、奥行き10mの土地は20万円×98.2%=19.64万円となるわけです。実際には形状、高低差など数種類の指標があるのですが、今回は奥行きについてのみのお話ですから割愛します。
住居地とは異なり、商業地では12mの時、高度商業地では奥行き10mの時に最も価値が高い100%となっていることから、商業地は奥行きが狭い方が好まれる事がわかります。
間口と奥行きの関係
例えば180平方メートルの土地があったとします。住居地として理想なのは南側が道路に面していて、まずは庭があって奥に住戸があるという構成。庭と住戸が縦に並ぶので、ある程度奥行きがあった方が有利というわけです。
一方、店舗では庭に相当する奥行きは不要です。また、お客さんを奥まで誘導するのは大変なので、かえって奥行きがじゃまになることもあります。
「奥行きが短くて良い」は「間口が広い方が良い」の裏返しです。同じ180平方メートルの面積であっても、間口が12m(奥行きが15mの場合)と18m(奥行きが10mの場合)では、1.5倍の差があります。看板を立てるなら、1.5倍幅の広いものを立てることが出来るわけです。
大きな看板は有利
右の店には「文具の」という文字を追加することが出来ました。間口が広ければ商売繁盛というわけです。これを間口信仰と呼んでおきましょう。
常々、日本のショッピングモールの通路は幅が狭くて、距離が長いと思っていました。ショッピングモールの運営者が通路の幅を犠牲にして、通路の距離を確保するというのは、「間口信仰」と関わりがありそうです。
運営者は貸し出す店舗の形状を検討する時点ではどんな規模のテナントが入ってくるかわからないことがあります。この時リスクの少ない選択としては、とりあえず奥行き狭いの店舗を用意しておけば、間口長を調節して小さな店舗でも大きな店舗でも対応出来るというわけです。実際には小さめの間口をひとつの単位として、規模が必要なら複数貸し出すという感じです。
同じ面積でも間口が広いほどテナント(借り手)に歓迎されるのですから、奥行きを統一するのは一見公平のように見えますが、利用者の立場としては歓迎できません。相対的に狭く長くなってしまう通路にはメリハリをつける修景施設を配置するのも難しく、単調な通路となってしまうのです。
さらに店舗側もこの幅の広い間口を十分に生かしていないことが多いように見受けられます。せっかくの間口ですからキャッチコピーや目玉商品、上品にショーウィンドウ等、店をアピールできる宝の山のはずです。ところが、ガラス越しに店内が見えるものの陳列だなの裏側だったり、単なる壁だったり、アピールしているようには見えません。陳列だなの裏側を見るためにショッピングモールに来たわけではありません。
だからといって、即座にお客が去ってしまうほどのインパクトはありませんが、マイナスイメージであることは確かです。ショッピングモール間の競争が激しければ、減点項目のひとつに挙げられるでしょう。
長い通路に店舗がまばらという閑散とした空間より、賑わいが連続する空間の方が良いでしょう。アメリカ型のショッピングモールの配置は参考となるはずです。
そのための工夫として大切なのが大きな店の間口対策。間口を確保する対策ではありません。延々とおなじ店舗の間口が続かないように、間口を狭くする対策です。何度も言うようですが充分に活用していない広い間口が少々狭くなったところで、その分たくさんの店舗の賑わいがでたほうが得策だと考えます。
下の図で通路の左側の店舗数を比較してみれば、広い間口だと5軒のみですが、狭い間口だと12軒見えます。
広い間口だと5軒
狭い間口だと12軒
12軒の方が賑わいを創出しやすいように思えるのです。
うなぎの寝床
アメリカ型は間口が狭く奥行きが長いうなぎの寝床状の店舗が一般的です。裏にはサービス通路が配置されていて商品の運搬はお客さんから見えません。
これはアメリカに限った特徴ではありません。日本でも古くからの街道筋では「うなぎの寝床」状の商家が軒を連ねる事例に事欠きません。間口に比例して課税されたからという言い方もされますが、間口を譲り合うための知恵だと考えれば納得できます。
大きな店舗
何でも大きなアメリカにも小規模な店舗はあります。長い奥行きのままだと利用に支障がでるほど狭い間口となってしまう場合、大きな店舗と隣接させて、奥の部分を大きな店舗に譲るということが行われています。譲るというより、大きな店舗の店先を小さな店舗が借りるという方が適切な表現かもしれません。
蛇行する
多様な種類の店舗規模を用意するために有効な方策が通路の蛇行です。通路を右側に寄せれば、左側の店舗の奥行きは増します。逆に右側の奥行きは狭くなります。それで大中小様々な規模の店舗が用意できます。店舗の形状を整形にするためだといって直角にこだわると、なめらかな蛇行が台無しです。店舗の不整形は目をつぶり、その分通路の魅力を向上させるほうが良いはずです。
こういった方策が実現出来るのは、運営者側のコーディネーターが強力だからと言えるでしょう。良いコーディネーターの言うことを聞いていればショッピングモール自体の活気が増して、個々の店舗も潤う。アメリカのショッピングモールの運営はこんな理屈に支えられているように思えます。
(初出00.04.17)(再編集03.07.29)(再編集10.04.19)編集前(log/2042.html)
便利なところは混んでいるという現実を目のあたりにすれば、余計な迷走も防げるというものです。
高速道路上の案内に「サービスエリアは混雑」の文字が表示されていても、入ってみたくなるものです。緊急を要するトイレ休憩ならなおさらです。
サービスエリア内の駐車場で一番混み合うのは施設のある中央部分です。混んでいるとわかっていても、「もう少し中央に近づこう」と、突き進みたくなります。最初に見つけたところであきらめるのが得策だとわかっていたとしても、誰もが「駐車場の挑戦者(チャレンジャー)」になってしまうのです。
最初は空いていたが
当然の事ながら、中央部分は大混雑しており、その後も空きがないまま駐車場は終わってしまいます。奇特な人は駐車をあきらめて次のサービスエリアを目指します。しかしあきらめきれない人は通路上やゼブラゾーン、そして(数少ない)大型車用駐車ますを占拠してしまうのです。
いっぱいになった
「もう少し」「後ちょっと」といいながら迷走を始めてしまうこの心理は、個人のモラルだけでは片づけられない何かがあると思うのです。駐車場での位置と駐車場の利用率をグラフにしてみました。入り口付近では少し空いていますが、中央部分以降はずっと100%で下がらないままです。
駐車場の挑戦者を生む利用率の分布
このグラフの特徴として、あきらめる地点が明確でないこと、失敗を自覚した後では既に復活の道が閉ざされているということが挙げられるでしょう。「駐車場の挑戦者」という悲劇を生み出さないためには、あきらめる地点が明確で、あきらめた後に空きを探すことができるという敗者復活の仕組みが必要です。前半と後半を分け、前半は便利だけど混雑、後半は不便だけど空いているという風に役割分担を明確にすることが解決策のひとつです。
きっぱりあきらめられる利用率の分布
最初が混むということは、最初の部分に施設があるということです。サービスエリアの配置計画では、入口近くに施設を集約するという事になります。
サービスエリアに限らず、大規模な駐車場を配置する際には、施設に近い方から進入するという配慮があれば迷走する車が少なくなるでしょう。逆行したり、何回も回ったりできるだけに、車の動線が錯綜しがちです。
便利なところを最初に
そこで最初に一番混んだところに誘導しておいて、無用な迷走を防ぐのが得策です。「便利なところはすべて埋まっている」という現実を目の当たりにし、空き探しをスタートすれば、迷いも少ないでしょう。この先どんどん不便になって行くのは確実なのですから。
(04.10.24)
右に行くべきか、左に行くべきかで悩む駐車場では迷走車が危なくていけません。
車の運転は即座の判断が要求されるものです。右か左かで迷っていると分かれ道の分かれ目に激突です。そんな迷い道をわざわざつくることはないのです。
高速道路上の案内に「サービスエリアは混雑」の文字が表示されていても、入ってみたくなるものです。緊急を要するトイレ休憩ならなおさらです。
サービスエリアに入るといくつかの通路に分かれています。
枝分かれで悩む
サービスエリア内の駐車場で一番混み合うのは施設に近い1番です。混んでいるとわかっていても、「もう少し施設に近づこう」と、突き進む。ここでは誰もが「駐車場の挑戦者たち」になってしまうのです。
当然の事ながら、施設に近い部分は大混雑しており、その後も空きがないまま駐車場は終わってしまいます。奇特な人は駐車をあきらめて次のサービスエリアを目指します。しかしあきらめきれない人は通路上やゼブラゾーンを占拠してしまうのです。
似たような話題を前回も考えてみました。前回の結論は施設を入口付近の一番混雑する部分に寄せることで迷走が避けられるというものです。進むほどに条件が悪くなりますから、迷いはありません。空いたところに停めればいいのです。もっと良いところがあったと後悔することはありません。
今回は分かれ道が問題だというのですから、通路を1本道にしてしまうのが第一案です。しかしそんなことをするとただでさえ細長いサービスエリアの駐車場は、ますます長く、不便になってしまいます。
それなら通路をぐねぐね蛇行させるというのも案ですが、都市部の立体駐車場ならよく見かけるのですが、高速が売りの施設にはふさわしくありません。
サービスエリアでは解決の糸口が見つかりませんから、一般的な大規模な駐車場ということで考えてみます。問題の状況は施設と平行に通路を設けるという場合となります。とりあえずこれを平行型と呼んでおきましょう。
先ずは、施設に近い方に探しに行き、ダメだとわかり、ぐるぐると迷走しているのです。探すのは個人の自由と言ってられません。何度も行き来する分、交通が交錯してしまうのです。
迷走車が増える平行型
解決策は、これです。
直交型が一番
この図は前回と同じです。施設と直角に通路を持ってくる。とりあえずこれを直交型と呼んでおきましょう。良い解決策というものは同じだということです。
直交型の特徴としては、どの通路を選んでも有利不利はありません。どの通路も同じように入り口付近は便利で、進めば進むほど不便になります。何も考えず入ってきて、最初に見つけた空きスペースが、その時点でもっとも便利な場所となるのです。有利不利を運転者に考えせず、最も便利な場所を提供すること直交型の駐車場通路は、多くの施設で使われています。
この有利性は、ショッピングセンターの計画の解説書に記載されているくらいですから私の単なる思いつきでは無いわけです。ただその説明では、歩行者動線と車動線が交差しないという点が強調されています。説得力のある説明ですが、私はむしろ自動的にいい場所に誘導してくれるという点を強調したいところです。
ところでアメリカのショッピングセンターでは、相当な割合で施設に直交型だったのですが、日本では必ずしもそうとも言えないのです。これはなぜなのか。次の機会に考えてみることにします。
(04.11.22)
施設に垂直に通路を配置する直交型を押し進めるには、駐車場の敷地は奥行きが長い方が利用効率がいいわけです。
前回の「駐車場を迷い道にしない(2044.html)」にも述べましたように、駐車場の通路は施設に向かっている方が良いわけです。これを直交型とよんでおきます。
先ず直交型の場合、車を降りた利用者が通路を横断することが少ないので安全です。通路が施設と並行に配置された並行型ではいくつもの通路を横断することを余儀なくされて危険です。
直交型の駐車場
一度施設の近くに寄ってから、駐車スペースを探すことになるので迷うことなく決断できます。進むにつれて、施設から遠ざかっていくのですから、一番最初に見つけたところで即決です。迷走することもなく、全体として流れがスムーズとなります。このことは前回の「駐車場を迷い道にしない(2044.html)」にも書いていますので、まだの方はご一読ください。
並行型の駐車場
自由に通路を配置できる大規模な駐車場にでも、直交型の通路を持つ駐車場は少ない気がします。
その理由のひとつは利用効率でしょう。例えば敷地に奥行きが少なく、幅が広い場合、並行型の通路を持つ駐車場の方が利用効率が高いものになります。何となく理解できるでしょう。
それが目の錯覚でないのか確認する意味でも、駐車場のモデルを想定し、利用効率の比較をしてみます。利用効率とは全体面積に対する駐車ますの面積が占める割合パーセンテージで表したものです。
横長の敷地に並行型の通路
横長の敷地に直交型の通路
例えば横長の例として、幅95m、奥行き50mの敷地の場合、並行型の利用効率が53%であるのに対し、直交型は50%と少なくなっています。住宅地の計画でも当てはまるのですが、道路で囲まれた街区は長いほど宅地率が向上するということで、利益を生むための手法として定着しています。駐車場も同様、通路で囲まれた「島」の延長が長いほど、たくさんの車が止められるというわけです。
直交型を有利にしたければ、奥行きを横幅よりも長くすれば良いわけです。次の表は横幅と奥行きの関係により有利な通路方向を示しています。ちょうど同じとなるのが35m同士、50m同士という具合に、敷地の形状が正方形になったときです。こんなことは、わざわざ表にしなくても直感的に分かりそうなものですね。
利用効率の表(並行型)
利用効率の表(直交型)
しかし横幅が110mとなった時点から、ちょっと様相が異なります。このとき、奥行きが65mしかなくても、直交型が有利となるのです。
これは、100m間隔で歩行者用の通路を入れたために起こったものです。住宅地の場合も長い街区長により行き来が不便になる上に、災害時の避難路確保に問題を生じるということで、おおむね120m間隔を標準として道路を設けることになっています。
駐車場の島も同様、施設に向かうのに車の横をすり抜けるのは好ましいことではありません。ましてショッピングカートを転がしながらでは、車に傷が付いてしまいます。そこで並行型の通路の場合、一定間隔ごとに歩行者用の通路を確保しているようです。どのような基準があるのか知らないので、とりあえず歩行者が迂回するのを苦痛とならない程度として100m間隔を想定してみました。
どちらが有利か示す表
こうしてみると一定の奥行きさえ確保してしまえば、直交型は常に有利に働くようです。この一定の奥行きというのが並行型で必要となる歩行者用通路の間隔と等しいと言うことになります。利用効率の観点からも直交型はそんなに悪くないという気がしてきました。
(04.12.20)
規模や形状に応じて横向きであってもいいと思うのです。
アメリカのショッピングモールは広いのです。いつものんびり散策がてらというわけにはいきません。「ちょっとした買い物にはコンビニが便利」という感覚で、目的の店だけに立ち寄りたいときもあるわけです。みんなが「モールを歩くのが大変」と思い始めたとき、パワーセンターが登場したのでしょう。
パワーセンターは、「強力な店舗の集合」という言い方をされるのですが、「流れ」的にみると、「店舗の前の廊下が駐車場にむき出し」と解釈できるのです。便利な反面、廊下の片側は殺風景な駐車場ですから、ゆったり散歩がてら、店舗を巡るという落ち着きがありません。
駐車場から店が近いパワーセンター
歩く距離という点についても問題があります。強力な店舗は規模が大きく、間口が広いのが特徴です。歩いて隣の店に行くのもちょっとした距離です。
店舗と駐車場との距離を近づけるため、駐車場の奥行きは短いものとなり、その代わり横幅を延ばして面積を確保します。全体としては、かなりの距離となり、店舗間の移動は車を使わずにはいられません。
日本にもパワーセンターが続々立地しているようです。狭い土地のお国柄、小規模なものもパワーセンターを名乗っています。駐車場が広がるその奥に、店舗が横方向に並ぶというパワーセンターの形式は小規模であっても同じです。相似形の縮小というわけなのですが、駐車場の奥行きも同様に縮小しているのは問題です。
駐車場の奥行きはある程度あった方がいいのです。このことは前回の「[ショッピングモールの掟]大規模な駐車場は奥行きがある方がいい(2045.html)」にて問題として取り上げました。駐車場内の通路は、店舗に向かって直交型に配置するのが理想なのですが、奥行きが狭い場合には相対的に通路面積が増えて効率が悪いのです。店舗の並びに並行型に通路を設けると今度は、店舗と駐車場間の行き来がしづらくなります。
特にパワーセンターは店の前に駐車するのが魅力です。通路が直交型の駐車場では、あたかも店の前に専用駐車場があるような形態となるのですが、並行型の駐車場ではそうはいきません。選んだ通路によっては、店から遠くにとめることになってしまいます。全体的に混んでいるのなら納得ですが、となりの通路なら空いていたとなれば、悔しいものです。
並行型は店の直前にとめにくい
駐車場、店舗、バックヤード、それぞれ必要な奥行きを合わせると案外長いものです。小規模なパワーセンターの場合、横幅を狭めた縦長の敷地が理想というわけです。しかし、そのような土地はないのです。
縦長が理想
開発事業の土地利用計画図を書いた場合、パワーセンターの候補地となる様な敷地の形状は、コピー用紙の縦横比をした横長となります。例えばA4サイズなら210mmと297mmの比です。もちろん道路に面する辺が長辺ということです。これは大規模、小規模に関わらず、そのようになっている気がします。縦横の割合については、「黄金比」という割合となっていて、落ち着くという気持ち上の問題もあるでしょうが、横長に配置するというのは、土地の利用価値を考えたとき一番無難となる形状であるわけです。
敷地を2分割にした場合を想定するとわかりやすいでしょう。縦長を前後に分けた場合、後ろの土地は道路に面しない価値の低い土地となります。仮に前後一体として考えた場合でも奥の方をうまく利用できないという危険を考慮し、価値が低くなってしまいます。同じ面積なら道路に接する延長が長い方が価値が高くなります。
大規模な敷地であれば短辺側でも、充分な奥行きの駐車場が確保できますが、小規模な場合、短辺側では奥行きが不足してしまうわけです。
縦長は価値が低くなる
横長の敷地にあわせた横長の駐車場が自然の成り行きのようです。でも発想を変えて、先ほど示した縦長の理想形を90度回転させてみたいのです。こうすると横長の敷地においても駐車場に充分な奥行きが確保できます。
それなら90度ひっくり返してみる
パワーセンターの形態として小規模な施設が多い日本ではこれの方が適しているでしょう。
これでめでたしということです。
(05.01.31)
商店街に対するイメージがあいまいなのです。
まちの玄関である駅前。都市計画で、駅前は商業地域に位置付けられることが多いのです。ここでは多様な業種が立地でき、高いビルを建てられます。
過大な商業系用途
商業地域と道路に沿った近隣商業地域(商店街に必要な店舗は大抵立地可能)を合わせた面積は、必要とされる面積より広めとなっています。商店やビルを集めるともっと小さな地域に収まるのですが、実際は住宅などが混在することになっているのが現状です。
既存の市街地に用途地域の規制をかける際、建物が違法建築になってしまないよう、あまり厳しく規制をかけられないわけです。
商業地域と名の付くものの、その地域は「何でも地域」と行った方が適切かもしれません。他の地域で規制されている施設の立地が可能となる代わりに、住宅が規制されているわけではありません。
商業地域を特徴づけているのは、容積率でしょう。高いビルが建てられるということは、それだけ家賃収入が期待できるのです。しかし商店街を構成する店舗は1階部分のみです。2階以上の部分は商店街に不要なのです。
つまり問題を整理するとこのようになります。
このように2種類の機能が混在しているので商店街の正体が見えにくくなっていると思うのです。そこで考えを単純にするために商業の機能を「商店街地域」と名付けましょう。
商店街地域は一種の公共財といえるでしょう。これは、それ自体何も利益を生み出さない駅前広場と同じ発想です。
駅前広場に面する土地はまち一番の地価となりますが、広場自体の土地は限りなくただです。所有者である自治体にとっては、維持費がかかるばかりで収益はないからです。
商店街地域は、まちの住民に必要な店舗が高い密度で連担するよう誘導します。
これらの条件を見てみると、現状の規制では商店街を形成するための条件を満たしていないことが感じられるのです。
容積率が400%もあるような地域で、それに見合った商店街の形態としては、下駄履きビルが挙げられるでしょう。
下駄履きビル
この事例は、事務所の需要があまり多くない地域であることから、集合住宅の下に店舗があります。単純に商店街を形成するのに、2階以上の部分がなぜ必要となるのか理解に苦しみます。
しかし資産を最大限活用するのは自然なことです。今の規制ではビルを建てるしか無いのです。
ですから商店街地域のような、平屋の店舗しか建てられない厳しい規制の地域を駅前の一等地に持ってくるのがいいと思うのですよ。
秋田駅前が寂れているというのです。全国的に商店街は不振ですが、仙台や盛岡にあるような商店街すら形成されていないというのです。実はかつて駅前には金座街などの駅前商店街が軒を連ねていたのですが、再開発により、デパートのテナントに入ってしまったというのです。
秋田駅前
秋田駅前の道路網計画は理想的だと思うのです。
上記で「商業ゾーンの機能が満載」と言いつつ、仲小路には肝心の商店街が形成されていませんでした。最近はアーケードができて、商店街らしく見えますが、店舗の数はわずかです。幹線道路に分断されない商業ゾーンが確保されているのに生かされてません。
もともと、金座街をはじめとする駅前商店街は、縦横無尽の狭い路地に軒を連ねるという状態でした。全国の共通の課題として、防災上(火事になったら消火も避難もできない)、権利関係上(権利関係が輻輳していて、将来建て替えができずにゴーストタウン化する)の問題があったのだと推察されます。
解決策のひとつとして土地区画整理事業があります。道路を広げて少し小さくなった敷地に建物を建て直すのです。しかし、敷地が小さすぎて、個別に建て替えができず、立体的(つまりビル)に敷地を再配分する市街地再開発事業を手法として選択したのでしょう。
結果、商店街が丸ごと再開発ビルに入ってしまうことになったのです。私など新参者はデパートとスーパーがあるという認識のみで、そこにかつての商店街が入っているとは思いませんでした。
せめて駐車場ビルの1階部分のように商店街が通路に面していればよいのですが。再開発ビルの壁はそっけないものです。
「全国チェーンのビジネスホテルや居酒屋が次々に進出している」−仲小路が商店街の中心として考えると、周辺に位置する広小路にビジネスホテルや居酒屋は適地だと考えるのです。千秋公園が目の前にあり、景色もいいし、居酒屋は宿泊客にとってもありがたいことでしょう。
「元の商店は次々に消え、秋田らしさが急速に失われている。」−秋田らしい商店街は、すでに再開発ビルのテナントになってしまっているのです。
「・・・(前略)行政の責任ではありません。(後略)・・・」−この言葉に憤慨する記事の読者もいるようですが、行政の責任に帰結してしまうのは、乱暴でしょう。ただ注意しなければならないのは、私が問題としている再開発事業についてです。再開発ビルに商店街をそっくり入れてしまって、商店街の活気がなくなってしまったという件については、組合施行なので、地元地権者の判断でこうなったという理屈になります(実際は核店舗の意向が強いのですが)。
商店街と再開発ビルの違いは、容積率です。商業地域に与えられる高い容積率は、すべてを活用する必要はありませんが、ビルを建てることによる収益という誘惑は強いものです。容積率の誘惑のない商店街地域は「土地が安いため低価格でも利益を上げられる」店舗の誘致可能となるでしょう。
(初出07.05.21)(再編集10.09.06)編集前(log/2047.html)
市庁舎の建てかえは、駅前商業施設の撤退を待つのが良いのです。
公益的施設は、駅から離れていることが多いのです。駅の方が後にできた場合もあるでしょう。しかし、みんなが使うものは便利な駅前にあれば良いと思うのですが、なかなか立地できません。
ここでいう公益的施設は、一般に公共施設と言われているものですが、道路、公園、河川などを除いた、市民が利用する建物ということにしておきましょう。市役所や市民会館、図書館、学校、医療施設などです。
学校や病院が不便なところに追いやられている様子は、新しい学校と病院は不便(2123.html)で語った通りです。
そもそも駅前の一等地に市民会館が出来るほどの広い用地が自然発生することはないでしょう。運良く市街地開発事業(土地区画整理事業や市街地再開発事業)が事業化しても、一等地を確保できるとは限りません。道路や駅前広場、公園等は「公共施設」として自動的に用地が確保されますが、公益的施設用地には強制力がありません。一般の宅地と同様に土地所有者から購入することになるのです。
一等地に広い土地が確保できたとしましょう。例えば
などが購入可能となる場合です。
でも一等地の価格は高いのです。市民のためだからといって適正な金額を下回るわけにはいきません。特に保留地は、この売却益で工事費等をまかないますので、保留地の減額は土地所有者にしわ寄せがくる仕組みになっているのです。
一方、市民会館のために高い土地を購入することに対して市民の理解が得られるかどうかが問題となるのです。市民のためのことなのですが、何でも「経費削減」と言っていると大切な買物チャンスも失ってしまうわけです。
結局のところ、売る側買う側の利害が一致して、そんなことより大型百貨店やスーパーを誘致することになってしまうのです。
このようなわけで、駅には市民会館が立地しにくいのです。下記の地図に示すような感じです。ここは古いタイプの土地区画整理事業地で、駅前に大きな商業施設を設けていないタイプです。駅前はあまり大規模でない雑居ビルが林立するまちなみです。
地図の中に示した赤のエリアが雑居ビルが立ち並ぶ中心市街地、矢印が撮影方向を示します。市役所に行くにも、デパートに行くにも、市民劇場に行くにも少し歩くことになるのです。
公益的施設が中心市街地の外側
市役所を望む
デパートを望む
市民劇場を望む
しかしまちの形成上、必ずしも悪いともいえないのです。公益的施設の利用者は多めに歩かされるわけですが、人通りが商店街の形成に役立っているのです。専門店街を挟むように核店舗を配置するメリットについてはアメリカのショッピングモールを歩いてみれば(2040.html)に語った通りです。
今や商業施設が良いテナントとは限りません。商業施設はハイリスクハイリターンと考えると良いでしょう。採算が合わなくなれば、撤退するというのは民間企業であれば仕方ありません。
「中心市街地の空きビル活用及びリニューアル事例調査」(平成24年3月国土交通省)によれば、
に対し、リノベーションを実施した事例が数多く報告されています。全国的に更地に新しいビルを建てる元気のある都市は少なくなっており、居抜き出店(テナントの空調・電気・厨房設備などを流用するメリットなどがある)で、コストダウンを図る時代なのです。
「中心市街地の空きビル活用及びリニューアル事例調査」の一文では、価値の下落に直面する厳しい現実も報告されています。
時価での購入にあたっては、相当の抵抗があった。購入時点は坪単価約30 万〜40 万円だったものが、現在の時価は約10 万円程度である。一番高かった時には、バブル前に約120 万円という時代もあり、その時に購入した方もいる。しかし、区分所有であるが故に、権利床を持ち続けると、所有している店を閉めていても共益費を負担しなければならないことなどを丁寧に、そして繰り返し説明することで、最終的には理解を得ることができた。
かつての優良テナントである商業施設が撤退し、公益的施設に生まれ変わっているのです。まちの活力が失われていることは間違いないのですが、公共交通から至近に公益的施設が集約できるというのは望ましい方向でもあるのです。
さいたま新都心では電波塔(スカイツリー)の誘致が実現せず、オフィスビルの誘致も事業者が撤退するという二転三転の後に、総合病院の誘致が決定となるようです。
他の地方都市に比べれば、大宮や浦和は比較的にぎやかですから、土地所有者としては商業施設を誘致して土地の価値を最大限に高めて欲しいと思うのは当然でしょう。しかし、事業化の分析をした結果、商業施設の業者が撤退したわけです。現在における価値はそれなりであることを認めるべきでしょう。そんな社会情勢の中で病院を誘致できたことは評価できるものです。
しかしながら、いろんな意見があるものです。それぞれ行政側が回答しているのですが、行政側の方がなるほどな理屈です。
8−1A街区は今までにぎわいづくりを目的として、地元の大変な協力・努力のもと、埼玉県が街づくりを進めてきた。なぜ平米96万円もする埼玉県の一等地に病院を建設するのか。にぎわいづくりに期待してきた住民や立ち退きをした住民に丁寧に説明してほしい。
(->県の回答)
和解金を支払ってまで民間事業者が撤退し、民間開発が困難な状況である。社会経済情勢が変わり民間によるにぎわいづくりは困難と判断せざるを得ない。貴重な土地の有効活用を検討した結果、喫緊の課題である医療体制の充実を図ることとした。丁寧に説明していきたい。
->病院とは高いタクシー代を払って行く不便な郊外の施設という認識があるのでしょう。
市役所を新都心近辺に移すという話があったが、8−1Aは適地ではないか。
(->さいたま市の回答)
合併協定書においては、「将来の新市の事務所の位置については、さいたま新都心周辺が望ましいとの意見を踏まえ検討する」とされているが、8−1Aに市役所を設置ということではない。市庁舎検討委員会において現在検討を進めている。
->豪華な市役所ビルを建てる発想は財政に過大な負担をかけかねません。現在浦和区にある市庁舎を建て替えるような時や商業施設が撤退する時などのタイミングが妥当でしょう。せっかくまとまりつつある病院計画を覆す必要はありません。
駅近といっても全ての人が鉄道利用とはならない。バス便の整備は考えていないのか。
(->県の回答)
バス路線については具体的な検討は行っていない。
->これは、バス路線も無いような不便な地域に病院を移転する時の質問でしょう。
県・市が土地を取得して民間に賃貸するという発想はないのか。何故民間ではダメなのか。
(->県の回答)
従来の土地の考え方は、民間に土地を処分(売買)して民間主導の開発を念頭に置いていた。それが頓挫して公共主体で事業展開するとなった場合、公共性の強い事業でないと税金を投入できない。賑わい施設に貸すために税金を投入するのは県民の理解を得ることは難しい。
->商業施設については、すでに駅の東側にイトーヨカードーやコクーンなどのショッピングモールがあり、大宮や浦和といった既存の商業集積と競合しているのです。共倒れにならないような戦略も必要なところでしょう。
説明会の対象は、主に利害関係者です。自分たちの利益のため主張するのは当然のことです。
しかしこの質問の内容が市民の声を代弁しているとは限りません。将来病院が出来れば、数多くの患者が便利さを実感するでしょう。でも将来自分がお世話になるかもしれない病院計画を、今からわざわざ「賛成」の声をあげることもないでしょう。このような沈黙の声は常に意識する必要があります。
全国的な中心市街地の縮小傾向に対して、さいたま市ではあまり深刻な影響はないのかもしれませんが、駅前に公益的施設を集約することは一つの流れとして認識する必要があると思うのです。
(12.10.01)