[ゆったり道路はいいけれど]
中央ゼブラゾーン

アメリカでは「車線」と認められている「中央右折車線」は、日本では「中央ゼブラゾーン」。まだ緊急避難的な扱いですが、今後みんなが使い慣れてくれば、きっと市街地道路のスタンダードになりますよ。

Contents
>後から右折車線は追加できない
>>右折車線を設置するには道路幅員を広げる必要がある>>状況の変化で予定外の右折車線が必要になる>>右折車がまれであっても、右折車がじゃまであることには変わりない>>中央ゼブラゾーンでどこでも右折可
>アメリカの市街地で一般的な中央右折車線
>「中央ゼブラゾーン」の事例

後から右折車線は追加できない

右折車線を設置するには道路幅員を広げる必要がある

 2車線の道路に後から右折車線を追加するのは大変なことです。

 「道路構造令」というきまりよれば、新規に計画する場合の標準的な幅員は18mとなります。その内訳は

  • 歩道−植樹帯を含めて4.5m×2=9m
  • 車道−3mの車線×2+1.5mの路側帯×2=9m

です。

18m道路の標準的な幅員
18m道路の標準的な幅員

 ところが、右折車線を設けると

  • 車道−3m×3+路肩0.5×3=10m

となり、幅員は標準部よりも1m多くなります。現実な対応として歩道の幅や右折車線の幅を狭めることで、交通の流れにほとんど支障はありませんが、変則的な対応はいいものではありません。どんな「状況の変化」でも対応できる幅員構成のあり方はないものでしょうか。

状況の変化で予定外の右折車線が必要になる

 「状況の変化」というのは頻繁に起こります。たとえば新たな交差点が新設されたり、多くの集客がある店舗が立地したりです。このような場合、渋滞防止のために右折車線が必要になることでしょう。こんな時、慌てて沿道を買収したり、歩道や車線幅を犠牲にするのでは先見の明がありません。

右折車がまれであっても、右折車がじゃまであることには変わりない

 こうやって右折車線を設ける場合はまだ幸運です。小さな店舗が開店するくらいではいちいち右折車線を整備しません。このような場合交通への影響はわずかでしょう。しかし、稀であっても右折車が後続車をじゃますることは1日何回も起こります。ひとつの店舗当たりの回数は多くなくとも、その一帯の店舗全体となればかなりの回数でしょう。

 大きな交差点や大規模な店舗の前だけでなく、全線にわたり右折車線は必須だと考えるのです。

中央ゼブラゾーンでどこでも右折可

 そこで全線にわたり右折車線にする方法、「中央ゼブラゾーン」について考えてみました。

 実は、このページを3年前に書いたときは、的確な表現が分からず、「中央車線」と勝手に命名していました。どうやら、日本国内では「中央ゼブラゾーン」、アメリカでは「中央右折車線(Median Turning Lane)」と呼ぶのが一般的な様です。

アメリカの市街地で一般的な中央右折車線

 また海外事情の受け売りで申し訳ないのですが、アメリカの市街地は両側に建物が建ち並ぶ道路では車線数の多い少ないに関わらず「中央車線」設置が原則です。

中央右折車線の考え方
中央右折車線の考え方

 「中央右折車線」とは図の通り、対向するどちらの車両も使ってもいい右折車線です。「これでは対向車両がぶつかってしまうではないか!」と、いう議論がわき起こりそうです。確かにもっともですが、アメリカで実際に「中央右折車線」を利用するときに、危険な思いをしたことはありません。

 この「中央右折車線」の利点は、あらかじめ右折車線の設置個所を決めなくてもいいことです。緻密な交通計画をもとに割り出された右折車線の配置計画も、前述の通りコンビニ一軒が立地すれば、もう右折車を先頭とした渋滞が発生します。そんなイタチごっこのような苦労をするくらいなら、どこでも右折できる「中央右折車線」を設置しておいて「どこからでも右折してくれ」と、言った方が沿道の変化に柔軟に対応できて良いでしょう。

「中央ゼブラゾーン」の事例

 日本でもちらほら見られます。見る機会はどんどん増えています。この文を書いたのは3年前。埼玉県加須市の事例を発見して大喜びでしたが、その他にも旅先の京都府や兵庫県で似たような考え方の道路を発見し、既に実用レベルのアイデアになっています。

 日本では、車線としての扱いを受けていない様で、ゼブラゾーンが充てられています。ということで、日本での命名は「中央ゼブラゾーン」が一般的な様です。

グアムの目抜き通り
グアムの目抜き通り

 こちらは、グアムの目抜き通り。ちょっとしゃれてブロック舗装です。

横浜市
横浜市

 こちらは横浜市。ここに限らず、この程度のゼブラゾーンはよく見かけるようになりました。「右折車が邪魔にならないように」という現実論と「説明のつかない部分をできるだけ減らしたい」という建前論の微妙なバランスが「車両幅ちょうどくらい」という中途半端なゼブラゾーンを生み出したのかもしれません。

つくば市
つくば市

 こちらはつくば市。見た目は「中央車線」ですが、基本的には中央分離帯的な発想で店舗の入口で右折進入可能ですが、それ以外はゼブラゾーンに入ることが出来ません。

加須市
加須市

 こちら埼玉県加須市の国道125号です。車線と言っていいくらい立派です。これならバスのような大きな車両が右折しようとも後続の直進車には影響ありません。もう一つ感心する工夫が、路肩がぎりぎりまで縮小されていることです(仕方なく縮小したのかもしれませんが)。停車帯を広く確保しても、店舗利用者の駐車場の様な状態になってしまうので、それならば思い切って省略したというところでしょう。

さいたま市の国道
さいたま市の国道

 ここからは、03年の更新時に追加しました。こちらは国道。加須市にもあるのですから、同じ埼玉県に同様の道路があっても不思議ではありません。

さいたま市の県道
さいたま市の県道

 こちらはさいたま市内の県道。特筆すべきは、国道でないことと、新設の道路であることです。
 国道は実証実験的な要素で改良されることが多いので、たまにあってもその方法が普及するとは限りません。しかし県道に採用されたとなると普及まで一歩前進というところでしょう。
 もうひとつ、この道路は市街地整備事業によって出来た新設道路ということです。道路の混雑がひどくて解消策として「中央車線」を設けたのではなく、最初からスムーズな車の流れを重視して計画的に設置したということになります。

 このほか、国道6号や松江市などでの試みをサイト上で見ることが出来ますから、一度ごらんください。

(初出00.08.16)
(再編集03.11.03)

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