目的を達成するために必要なルールか見極めることが、フィードバックを実現するのに必要な姿勢でしょう。
リニューアルする前のこのページは組織におけるフィードバックについて語っていました。その結論が、フィードバックがスムーズに行けばいいなあというあいまいなもので、「ヒント」を提示できていません。そこでリニューアル前の文章はきれいさっぱり消し去って、あらためてフィードバックを考えてみました。ものすごく小さな事例を想像しながら。
例として、私的な書類ファイリングシステムを計画してみました。その計画とは、
システムを揃えた当初は見た目にもきれいにそろって美しいのですが、バインダーや用紙がモデルチェンジし、だんだん不揃いになってくるのです。神経質な人はバインダーすべてを新しいものに取り替えて、見た目を揃えることに躍起になってしまうかもしれません。バインダーならまだ、お金がかかるだけですが、中身の用紙を取り替えるなんてことになれば、全部書き写すことになりかねません。
さすがに用紙を取り替えるために書き写すほど極端になることは無いでしょうが、整理を始めようと過大な計画を立てたものの、三日坊主に陥るという体験は珍しくないでしょう。そこで整理術のハウツー本などでは、「あまりきちんとしないで、ほどほどにやりましょう」とか書いてあるわけです。
ほどほどの基準とは「目的を達成するために必要か」といえるでしょう。私的なファイリングでは、きれいに並んでいる事など、あまり重要で無いと思います。用紙の形式などまったく何でも良いはずです。それなのに、そろっている方がきれいだからという理由に振り回されるというのは困ったことです。
部屋のインテリアとして、きれいにそろったバインダーが必要というのも立派な目的です。この目的を掲げるならば、バインダーがモデルチェンジするたびに全取り替えすることも合理的です。しかしモデルルームじゃあるまいし、そんなに体裁を気にするなら扉付の書架に収める方が現実的な対応でしょう。
目的を達成するために必要な事のみをルールに定めると次のようなものとなるでしょう。
これくらいでいいと思うのです。これを適用しますと、バインダーのデザインはバラバラになってしまいます。メーカーのカタログを収めたバインダーの廃品利用もあります。用紙もバリエーションに富みます。A4サイズなら何でも良く、不要となった印刷物の裏の利用も良いでしょう。
揃えないことでのメリットもあります。背表紙の文字を読まなくても(あるいは文字を入れなくても)色や柄だけで必要なバインダーを容易に見つけだすことができます。またA4サイズにさえ揃えておけば、受け取った資料をそのままファイリングできます。この様なことは時間に限りがある実務家には当たり前のことかも知れませんが、時間的な制約がないと変なところにこだわって、「揃えること」が重要なことに思えてくるのです。
用紙のサイズと穴のサイズだけを決めたら、後は自由です。せっかくの自由も、注意しないと不自由に逆戻りとなってしまいます。何気ない前例がそのまま暗黙のルールになってしまい、それから抜け出せなくなるからです。たとえば、たまたま「○○社の7ミリメートル幅の罫線入りA4サイズレポート用紙」を最初に使い始め既成事実化してしまうと、他の優れた用紙の利点を生かすことが出来なくなってしまうのです。「本当は6ミリメートル幅の罫線の方がいいのだが、今までと変えるのは不揃いだから」という理由で変えられないなら残念なことです。
こういった心の硬直化に対抗するには、無理矢理にでも少しずつ変化させる気持ちが必要でしょう。例えば用紙を購入するたび、わざと違うものを選ぶ。仮にその用紙は使いにくくて、結果としてその選択は失敗でも、様々な種類の用紙を混在させることに成功しています。「揃える」に惑わされず、さまざまな種類を試してみることができます。
自由であるはずの自分の事であっても、すぐに硬直化してしまうものです。組織でフィードバックをうまく生かすためには、工夫が必要となるでしょう。これを「ルールの運用指針」と名付けましょう。
この2点を考えると、案外つまらないことに固執しているかもしれません。
組織にフィードバックというシステムが導入されていたとしても、個々の構成員が「ルールの運用指針」に基づかなければ、それは段々と機能しなくなっていく可能性が大だと思うのです。
(初出00.01.14)(再編集03.01.04)(再編集08.03.24)編集前
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