この文書は廃止文書です。現在の文書は流れのヒントよりお探しください。

[組織の流れ]
フィードバック

役所仕事の代名詞である「たらいまわし」は「フィードバック」と紙一重。組織ぐるみのたらいまわしで良い「流れ」をつくり出そう。

Contents
>市役所でも「ご意見カード」
>政治と行政はそれぞれに役割がある
>良いたらいまわしがある
>こんなアンケートで良いフィードバックを
>フィードバック=良いたらいまわし

市役所でも「ご意見カード」

 群馬県太田市では「大胆な役所改革を打ち出している」(「日経」2000.1.4)そうです。「住民アンケートを基にした行政評価の導入にも踏み切る」とのこと。
 ファミリーレストランやスーパーで「ご意見カード」と称して、はがきをよく見かけます。「このように対応しました」と壁に掲載されているのを見ると、「対応できないはがきはどう処理しているのか?」と、うがった見方をしてしまいますが、消費者の意見が反映されないお店は、淘汰される世の中です。あながち「ポーズだけ」ではないと思います。小売業のように競争原理が働く業界があれば、競争原理があまり働かない業界もあります。そういった状況で「役所改革」を実践している太田市は注目を集めて当然だと思います。

政治と行政はそれぞれに役割がある

 「太田市」をひとつのまとまりとしてとらえましたが、正確には「政治」の代表である太田市長が勇断をし、「行政」に対して働きかけているのです。さらに言いかえれば太田市有権者の行政に対する思いが、この市長を選び、そして行政にフィードバックしているのです。
 「政治」と「行政」を混同しない方が良いでしょう。あるテレビ番組で市役所のまちづくり関係担当者が住民に怒られていました。「何であんな迷惑施設を許可したんだ」というもの。担当者の答えは「審査で問題がなかったので許可しないわけにはいかなかった」とのこと。テレビのレポーターは役所は融通が利かないと憤激していました。
 しかし、担当者はルールに従って手続したのであって、「融通が利いて」いては公正な業務とはいえません。ある勇気ある自治体では、許可したくない建物に対し「上水道を供給しない」という違法行為により対処した例がありますが、一般的に違法行為を強要するのは酷なことです。

 行政組織はルールに従って住民にサービスをする専門家集団です。ルール違反が認められるなら世の中は荒れ放題です。
 ここで問題なのは、いったん決めたルールを変えることを悪とする風潮。ルールを変更出来ないから、現実と矛盾が生じる。だましだまし破る。そして、それが当たり前になる。これでは何のためのルールかわかりません。

 太田市では、現状に合わないルールを素早く改善するために、住民アンケートで問題点を速やかに把握するようにしたわけです。しかし、単に「目安箱」に投函された投書を市長が「徳川吉宗」よろしく「庶民は苦しんでおる。なんとかせねば」とトップダウンで勝手にルールを決めて、行政に指示してもかならずしも良い結果は生まれないでしょう。ルールを素早く運用する仕組みが出来ていなければ、現場は混乱するばかりでしょう。

良いたらいまわしがある

 ルールを素早く運用する仕組みづくりとして、「役所改革に先立ちISO9001を取得した」ということも重要なポイントです。ISO9000シリーズはどちらかというと「機械部品の耐久性」とか「操作の安全性」とかいった「工場」にぴったりのイメージがつきまといますが、サービスの品質保証も可能だということです。行政組織の場合、組織の中で役割分担がきちんと決められているかという点が品質を保証する基準となるでしょう。

 太田市役所の現場はちょっとした混乱だと思います。今までは、たらいまわしは悪いことで、受けた仕事は「責任持って」どんどん自ら抱え込むことが理想とされていました。その弊害として、書類を隠したり、ひどいときには命を絶つ不幸な結果も招きました。しかし、これからは思う存分たらい回しが出来るのです。もちろん無責任にたらい回しが出来るわけではありません。どこにたらい回しするのかルールを綿密に決めておく必要はあります。
 たらい回しに要する時間が長いと「品質」が悪いと評価され、ルールの改善が求められますから、あまり気楽なたらい回しではありません。しかし、情報(問題)は担当者個人に蓄積されず、行政全体の情報(問題)となり、組織の中で最善の対応が可能となります。

こんなアンケートで良いフィードバックを

 さて住民アンケートは、「アンケートをしたという既成事実をつくる」だけのものにならないことを祈ります。そこで望ましいアンケートのありかたと望ましくないアンケートのあり方を列挙してみました。

「こんなアンケートがいい」の表

望ましくないあり方 望ましいあり方
募集方法
  • 「なにかご意見がありましたら」という消極的な態度
  • 「全員返送ください」と言い切ってください
  • インターネットもありがたい
回収方法
  • 市役所の目安箱に投函する以外方法無しでは面倒
  • 返信はがきに切手を貼らないといけない
  • 返信はがきに切手を貼らなくてもいい
質問内容
  • 「○○地区の用途地域変更についてご意見をお聞かせください」と突然言われても困る
  • 「白紙のご意見欄」ばかりでは何を書けばいいのかわからない
  • 「道路のこと」「福祉のこと」等分野別にしてもらえると答えやすい。
アンケートの集計
  • 「賛成51.3%、反対で48.7%で賛成の意見が反対の意見を上回りました」と、僅差でも勝敗に一喜一憂する
  • 電算化になじまないご意見欄は集計が大変と放置する
  • 意見を担当部署別に仕分けして、担当者に声が伝わるよう
集計結果
  • 市長直轄の秘密情報部のみ結果を知る
  • 担当部署では全部読まないと自分たちに何が求められているかわからない報告書が送られてくる。
  • 各担当部署で出来ることと出来ないことを整理する
  • 市長には実行計画を発表する
  • 実行計画には出来ることだけを並べるのではなく、出来ないことも示す
どう活用されるか
  • 倉庫に眠る
  • 突然、報告書の頁を開け、字の大きさが6ポイントの小さな活字を指して、「アンケート結果ではこうなっています」と、言い逃れに利用する
  • 市単独では出来ないことを県、国に示す資料として活用する

フィードバック=良いたらいまわし

「フィードバック」の図

 このように住民がアンケートを解答し、市長がそれを反映するには問題点を浮き彫りにし、もっとも適切な行政内部の各担当が最大限の力を発揮できるようなたらい回しの仕組みづくりが必要となるのです。先の東海村の原発事故に関連してコメントがありました。「日本人は現場での対応能力が高いから、困難があっても乗り越えてきた。しかし、それが、組織として問題を処理する能力を低下させてきた」というものでした。日本の組織に課せられた将来への課題を突きつけられた事故でした。アンケートの結果についても、自分が処理できなければ得意な部署に速やかに出来る部署に送る。この一人一人の動きが大切なアンケート結果を生かすことを可能としていくのだと思います。

 発生した問題に対して一人一人が問題を抱え込まず、組織の問題として意見を集約するルールの確立。これは市町村の間(自治体により大差有り)で着実に進んでいるようです。このフィードバックという手続の流れが、一般化(県単位、全国単位)し大きな流れとなることを期待せずにはいられません。

(初出00.01.12)
(再編集03.01.04)

再編集しましたが、内容については3年前に書いた文章のままです。この話題に関する情報、ご意見がありましたら是非お寄せください。

この文書は廃止文書です。現在の文書は流れのヒントよりお探しください。