行列は1列に限ります。
前回取り上げた行列の方法−−1列に並んでいて開いた窓口から順に呼ばれて行く−−はフォーク並びと呼ばれているようです。
このフォーク並びは欧米では一般的な様子で、アメリカでの徹底ぶりには感心したものです。
フォーク並び
日本でも遅まきながらフォーク並びを普及させようとする機運に対して「欧米に較べ待合いスペースが小さいから大がかりな装置は設置できない」とか、「日本は譲り合いの精神がある」とか反発があったように記憶しています。
アメリカのような多民族国家に較べて、国民お互い同士に共通の認識が育ちやすい風土であることは言えるでしょう。しかし裏を返せば村社会の名残です。ルール違反をしたとき「かみなりおやじ」に怒鳴られるくらいならはっきりして良いのですが、村八分よろしく、かげでこそこそ後ろ指を指されて恥をかくなんていうのは願い下げです。
アメリカでは暗黙の了解なんてものはあきらめて、先にルールが示されます。フォーク並びにしても、白線を描いたり、ロープで区切ったりとても良くわかります。ファーストフード店内で鉄製の立派な柵が設置されているところなどを見てしまうと、日本に導入できないと思う気持ちも分かります。トイザラスやディズニーランドに立派な仕切が林立するところを見ると、日本では多少違和感があるでしょう。
鉄の柵
しかしながらフォーク並びもようやく普及してきたようです。銀行のATMとかトイレを始め、軽量な商品を扱っている文具店や百円ショップのレジにも見かるようになりました。
意外にも狭い場所での混乱を防止するのに結構役に立っている様です。前回取り上げたマクドナルドも、小さな店に先行して導入導入されているのを見かけました。狭いからダメだと言っていた人は、日本の適応力をあなどっていたとしか思えません。
フォーク並びのデメリットに、呼ばれて窓口に並ぶのに時間がかかるというのがあります。「お次の方どうぞ」と呼び出している間に2人分3人分の処理が終わってしまうような短い処理には適していません。
コートや荷物を預ける催し物会場でのクロークはそんな短い処理にあたるでしょう。
ある催し物会場のクロークでは2人の係員体制で荷物の返却にあたっていました。行列の方針としては2列に並ぶというもの。1列に並んで来た人から順に対応していくと渡し間違うということなのでしょう。
2列並びのクローク
対策として、図面に示したように、Aの係員は必ずイの窓口で、Bの係員は必ずロの窓口で対応するようにしておけば、間違いはありません。しかし待つ身はいらいらです。2列に並んだもう1列が気になります。ちょっとでも遅れると、こちらに並んだことを後悔します。利用者の気持ちを犠牲にして安全を優先優先した運営者サイドの発想ですが、解決策が無いわけではありません。
ある古くからあるホテルのクロークでは1列並びを実施していました。もちろん安全を犠牲にしたわけではなく、ちょっとした工夫で実現していました。荷物と引き替えにもらう荷物札に加えて、受け取りの時だけ有効な受け取り札を用意するものでした。受け取り札は、係員ひとりに1枚だけ用意されていて、荷物を探しに行く間、利用者に持っていてもらうのです。荷物を渡すときに利用者より受け取り札を返してもらうようにすれば、渡し間違いはおこりません。
1列並びのクローク
さすが長年の蓄積だと感心しました。
混んだ場所での行列は周到な準備があるもので、意外に快適なものです。ところが普段は空いているところに限って、混雑したときに大混乱がおこるということが良くあります。確率的には低くても行列する方法はあらかじめ示して置いて欲しいのです。滅多にない事に備える防災訓練の様なものです。
ある観光地でのこと。山頂の展望台に行くために2種類ののりものが選べました。ひとつは屋根の無い(スキー場にあるような)リフト、もうひとつは定員20名ほどの小規模なモノレールで15分間隔に運行されていました。
このモノレールは滅多に混まないのです。なぜなら天気の良い日は待ち時間がないリフトを利用できますし、雨のときはそもそも展望台に利用者は上がってきません。
ところがめずらしく、モノレールが満員になりました。突然雨が降ってきたのです。数分前まで下界が見晴らせていたのにです。
こんな事は稀ですからモノレール乗り場でどう行列するかなど考えられてはいません。係員は経験無さそうな若い人で、何の案内もせずに乗車の時間になりました。案の定、定員オーバーになりました。問題は、乗りきれなかった人が一番最初から並んでいた人だったという事実。なんとも変な話です。
後から来た人を責めるわけにも行かないでしょう。
日常生活で結構こういうことはあります。運営者が思っている以上に利用者はどう並べばいいのか知りたがっていると思うのです。
12.11.26追加
数年経ち、フォーク並びはずいぶん浸透しましたが、マクドナルドではフォーク並びが見られません。
マクドナルド伝統の「お待たせしません」については、ますます徹底されており、注文を受けて90秒で提供できなければビックマックの無料券が配られるという熱の入れようです。
あらかじめ注文内容を決めてもらえるよう、カウンターに置くメニューを撤廃したところ、不便だという批判の声が上がっているようです。スピードアップなんかより、
の解消をまじめに検討してほしいものです。
企業であることですから、評判が悪くなって収益が減少するのは勝手なのですが、社会的影響の大きな企業なのですから、快適な行列も実現して欲しいものです。
(04.04.05)
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