[快適な行列]
良いサービスの提供は受け手の協力から

昼食くらいのんびり食わせろという客が増えれば、低価格を維持できないことだってあり得るのです。

Contents
>絶妙な丼の流れ
>だらだら食べるのはお行儀悪いです

絶妙な丼の流れ

 昼時の食堂は入れ替わり客が立ち替わりで落ち着かないものです。さっさと食べて席を譲れなんて決して口には出せませんが、普段の流れというものがあります。その流れを乱すのは考えものです。

 私の勤務先は神田神保町から徒歩圏にあります。テレビや雑誌におなじみの有名飲食店が数多くが軒を連ねるこのまちは、サラリーマンのおじさん御用達のお店も数多くあります。こぢんまりとしたカウンター席だけの店で、おいしく、安く提供してくれています。安いからといって粗悪でないのが良いところです。

 カウンター席が15席ほどの天丼の店もその一つです。カウンターはきちんと磨かれた無垢の一枚板。割り箸は、ささくれが気になるような粗悪品ではありません。みそ汁は乾燥ワカメと麩の即席ではなく、いつもうまみたっぷりのしじみ汁です。炊いたご飯は必ずおひつに入れるという心遣いもうれしい限りです。ついでに漬け物もうまい。

 この店の低コスト運営の秘訣は店員さんの流れるような動きです。行列の出来る店ですから行列の待ち時間に店員さんの無駄のない動きが良くわかります。行列に並んでいるときに注文を聞かれます。一度に5人から6人づつ、天ぷらが揚げ終わったときにちょうど全員が着席するという絶妙な時間を見計らっているのです。着席してから揚げているのでは客の回転が悪い。かといって客が着席する前に出来てしまったら、さめてしまう。5杯づつにするか6杯づつにするか、店長の長年の勘がものを言うのです。

だらだら食べるのはお行儀悪いです

 この日はめずらしく女性が目立ちます。

  • 20代の女性2人組
  • 30代の女性2人組
  • 50代の女性1人

 5人もの女性がカウンターに並ぶというのはおじさんご用達の食堂としては異例のことですが、奇異の目で見るのはやめておきます。女性だけの中で私がジロジロ見られるなんて立場になれば困ってしまいます。

 しかし、行列に並ぶ私たちにはちょっとした不安があるのも事実です。「流れが乱れないか」と、言うことです。事実、50代の女性はかなりのんびり口に運んでいます。おじさん達の倍は時間がかかるでしょう。でもこれは個人の自由です。店長さんも長年の経験からこの女性がゆっくり食べる人だと言うことは百も承知でしょう。

 しかし、20代の2人組と30代の2人組は問題有りです。おしゃべりに興じているのです。途中で満腹になって、箸がすすまないのかも知れません。おしゃべりしながら「ぐちゃぐちゃ」天丼をかき混ぜています。ここまで来ると、のんびり食べるというより「行儀が悪い」食べ方です。そのうち食べるのが遅かった50代の女性が食べ終わりました。黙々と食べてくれれば、いくら遅くても食べ終わるものなのです。

 そして恐れていたことが起こりました。天丼が出来上がったのに、席が空かないのです。4人が席を占拠しているからです。私は運悪くこの4席の内のひとりなのです。これは「早く食べろ」の視線を浴びせるしかありません。おしゃべりばかりしてちっとも食べていないのです。

 店長の前には出来あがった天丼がいくつか置いてあり、席が空くのを待っている状態です。これを見て、4人もようやく自分たちのおかれている状態に気づきました。無言になり、そそくさとかき込み始めました。早く気がついて欲しかったものです。

 ちょっと気の毒ですが店長の絶妙な流れを乱してしまうのは考え物です。初めて訪れた店で暗黙の了解がわからなかったのかもしれません。良質な商品を手軽な価格で提供するために、客にも心得ておかなければならないルールは意識すべきでしょう。

(04.11.08)

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