駅の表玄関が開かずのシャッターというのはちょっと寂しいものです。
「[1点豪華主義が好まれる]基準階は一階で」では、駅側と駅前広場側のそれぞれで勝手に施設を作ってしまうという連携の悪さを考えました。しかし、連携しようと思っても調整が不十分だと「こんなはずではなかった」ということになってしまうでしょう。
高架駅を下車し、自動改札を通り抜けた正面のことです。出口があるべきところにはシャッターが降りたままで、利用できるのは左の狭い階段のみです。通用門しか利用させてもらえないという感じです。
正面はシャッターが降りたまま
外からシャッターの様子を眺めてみます。シャッターの外側にあるべき歩道橋が見あたりません。これではシャッターが降りているのも無理はありません。
シャッターの先は何もなし
シャッターの位置をよく見ると2階としては、ちょっと低めです。設計ミスかもしれませんが、この駅の成り立ちを考えると納得する部分もあるのです。
鉄道高架の建設が始まったのは周辺の宅地造成より10年以上前のことで、造成設計の反映が間に合わなかったと考えられるのです。盛土をした様子は次の写真の通り、高低差は人の背丈の半分くらいにはなるでしょう。
現在の地盤高は少し高い
以前は水田地帯でしたから、盛土する事くらいは想像つきそうなものです。実際に高架の設計者は、周辺の盛土は予想がついていたかも知れません。しかし、盛土の高さを任意に計画したところで、結局は1階部分の高さがあわないということにでもなれば問題でしょう。正式な造成高さが提示されていない限り、「現況の地盤高」を使うのが無難な選択だったのだと思うのです。
このシャッターに続く幻の歩道橋が、道路を越えたショッピングセンターに向かうことは、ショッピングセンター側の途切れた歩道橋を見ればわかります。
ショッピングセンターのバーゲンの垂れ幕がかかっている場所が歩道橋の途切れた部分です。
ショッピングセンターに向かう
ちなみに駅からショッピングセンターに向けては幅の広い歩道が整備されていますから、それほど大きな混乱はありません。
「[1点豪華主義が好まれる]基準階は一階で」で取り上げたとおり、駅というのは鉄道、道路が集中するという性格上、いくつもの境界が交錯するものなのです。
歩道橋はその境界を乗り越えるという「夢の架け橋」なのです。今回出てくる境界は2箇所あります。
あとは道路に歩道橋を設置すれば「夢の架け橋」が完成するのです。道路といえば市役所が管理するもの(市道の場合)ですから、市役所に期待するのが普通です。しかし今回は市役所に期待してもダメなのです。
この市の都市計画を調べてみると、駅周辺は組合による土地区画整理事業により整備されているのです。多くの土地区画整理組合は、行政の後押しのある「第3セクター」みたいなものですが、行政そのものではないのです。
国や市から補助金を受けていますが、基本的に独立採算です。懐事情が悪ければ、コストダウンに踏み切る必要があるでしょう。歩道橋は後回しということは充分考えられます。ということで夢の架け橋は夢に終わりそうな気配です。
駅の表玄関が開かずのシャッターで、利用はもっぱら通用門の様な階段のみというのはちょっと寂しいものです。
(05.08.15)
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