航空運賃の値下げ競争に明け暮れるより、アクセス交通や空港使用料を含めた空港間競争で利用空港の選択ができるといいと思うのです。
「成田と羽田の役割を見直す」とか「新幹線を羽田に乗り入れる」など、大臣が思いつきと言われながら夢を語るのですから、一般人は夢を語っても良いでしょう。
大手航空会社2社(J航空とA空輸)のうち、J社が公共の支援下に置かれるようになりました。航空行政は今まで同じ扱いをしてきた大手航空会社2社(J航空とA空輸)に対して、それぞれ違った役割を与えることが可能となったのです。
J航空の再建案では赤字路線を大幅に縮小するようですが、民間企業でできることに税金を投入する意味がありません。公共交通のJ航空は、国庫や地方の補助金を頼りに赤字路線を運行するのが良いでしょう。
2社の特徴を踏まえて、全国の路線網を描くとこのようなイメージになるわけです。
民間と公共の2社体制
路線図では、A空輸が就航する空港とJ航空が就航する空港がそれぞれの地方でまんべんなく配置してみました。空港によってA空輸を利用するのかJ航空を利用するのか選ぶことになります。後述しますが、A空輸は羽田空港、J航空は成田空港という風に行き先がっことなるため、利用者の選択の幅が広がるということです。
空港が複数ある東京と大阪地区は各航空会社の専用空港を持ってもらうのです。
ハブ空港の条件は、地理的な要因が大きいわけです。成田空港の滑走路がたった1本で、第1ターミナルしか無いときから、ハブ空港の機能は持っていました。アメリカ全土から出発した便は、日本の夕方に集結し、アジアの各地に向かうのです。
ハブ空港は母都市の活力も条件です。大都市東京を抱える羽田空港はだまっていても、日本中の路線が集結しています。どの航空会社に乗っても、同じ料金で利用できるよう指導をしてきた航空行政も、結果的に乗り継ぎの利便性を高めてきました。
ハブ空港の条件は滑走路数ではなく、成田は国際線のハブ空港、羽田は国内線のハブ空港になっているわけです。羽田の場合はあまり戦略的ではありませんから、ハブといえるか微妙ですが。
これからの航空政策は国際線と国内線が乗り継げるハブ空港だ大臣は主張しています。D滑走路が出来ても、羽田の発着枠は劇的に増えるわけではありませんから、成田を廃止するわけにはいきません。そうなると
の同じ機能を持った空港を2つ整備するということになるのです。大臣ははっきり言っていませんが、そうとしか考えられません。
羽田と成田でJ航空とA空輸を振り分けるとき、どちらの航空会社も成田に国内線を移したくないという思いがあるでしょう。
ここは大臣が国策企業のJ航空に成田に行きなさいというしかありません。
なのです。
大半の国際線は、成田に乗り入れ続けることになるでしょうから、J航空が成田発のローカル線網を構築すれば、地方空港は、ワンストップで世界に向かえるわけです。
もう少し空港での役割分担を詳細に見てみますと
東京地区での分担
大阪地区は空港が3つありますから、ちょうどで、割り当てられます。
大阪地区での分担
結局、赤字路線は国策航空会社のJ航空に引き取られ、成田空港をベースに運行することになります。成田空港にも良いところはあるので、悲観することはありません。
成田はそんなに遠くないのです。日暮里から計算しますと、成田へは来年開業の新型京成スカイライナーで36分。羽田へはほぼ同じの37分ですから、快適に着席できる列車網が充実できれば、利用者の遠いという印象はすぐに打ち消せるでしょう。
羽田空港に国際便が就航するといっても、基本的にはA航空と仲間たちだけです。数多くの国際便が就航する成田空港へ直接乗り入れるのは大きなメリットです。
羽田空港から成田空港にバスで移動する時間を考えれば、地方側で成田空港への直行便を選択する需要は多いでしょう。
千葉県、埼玉県からであれば、成田空港はそんなに遠いものではありません。さらに埼玉県下から快適なアクセス列車を走らせるために、武蔵野線や成田線の整備に空港整備特別会計を投入するくらいの支援は、公共交通としての航空網を考えたときには必要となるでしょう。
成田空港への最短ルートというメリットを生かしながら、隣の県の客をターゲットにしましょう。少ないパイを奪い合うというよりも、羽田か成田かという選択肢を提供することで、利用者にもメリットのある競争です。きめ細かいサービスが必要となるでしょう。
利用者は、航空会社のみならず、空港施設やアクセス交通に対しても費用や時間を費やしているわけです。利用者の選択は単純に空港からの距離ではないことは、新規開業の空港を無視して、遠い既存の空港を利用する実態があることからわかるでしょう。
県をあげて支援するなら、これくらいはできそうな気がします。
(11.10.31追加)
S航空による成田−札幌間、成田−旭川間就航というニュースが飛び込んできました。その名も「成田シャトル」。
路線図で示した旭川便が実現したということです。本当は税金を投入するJ航空が適任だと思っていましたが、赤字を垂れ流してはいけないとのことでしょう。
ニュースでは、成田空港の社長さんが、これからはLCCの時代だと応援していましたから、会社として出来る限りの支援をしていくのでしょう。全国津々浦々から成田の国際線を利用できる機会を増やす、公共事業のようなものですから、期待は大きいのです。当のS航空が隙間需要を狙って充分儲けられるならいいのですが。
引き続き那覇、福岡にも「成田シャトル」は進出するようです。
(13.04.22追加)
成田経由の夜行便という新たなジャンルを切り開いたのは大きいのです。
成田早朝発の便に接続して、深夜バスが東京より出発するというのです。深夜1:30に東京駅を出発して、成田空港に3:30に到着。昼行便なら1時間かかるところをパーキングエリアで休憩を取りながら2時間かけて到着するわけです。
これなら6時台の出発便に余裕で間に合います。
費用面では高速バスと同等、新幹線より安いということになります。
何より夜の時間を有効に使った新たな交通手段が登場したということは大きな進歩です。
成田は「遠い」を逆手に取ったバス便の設定は感心しました。羽田空港行きも深夜バスがあるのですが、2時には空港についてしまい、暇つぶし時間がちょっと長すぎます。
羽田空港は24時間空港なのだから、3:00羽田発4:00関空着というのも丁度だと思うのですが、運行の効率が悪いのでしょうかねえ。
(10.01.25)
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