流れのヒント

[格子状の道]
都市計画に公共交通軸がなかった

公共交通軸は、交通計画図の発想です。

Contents
>都市計画と交通計画の融合「公共交通軸」
>>低密度な都市への反省>>公共交通軸に沿ってコンパクトな都市
>公共交通軸の主力はバス
>>大量・中量輸送機関がある都市はこれ以上強化することもない>>バスしかない小規模な都市に必要な「公共交通軸」
>都市計画道路網はバス路線の概念がない
>>バイパス>>グリッドパターン

都市計画と交通計画の融合「公共交通軸」

低密度な都市への反省

 日本の平野は一帯が農村地帯で、どこにでも人が住んでいました。一方、都市計画の計画論としては、都市と農村は明確に区切られるものとされていました。そこで都市の範囲として都市計画区域とか市街化区域で囲ってみたものの、その外側にも既存の住宅が広がっているのです。

 計画上は建設省主導の都市であったり、農水省主導の農村であったとしても、実際の生活上では、人口密度が高い地域と低い地域という程度の違いです。市役所は上水道やごみの収集など公共サービスは確保しなければなりません。

 人口が分散していると公共サービスの効率も下がりがちです。その中でも公共交通は強い影響を受け、自家用車の普及に反比例するように公共交通が弱体化してしまったのです。自家用車の便利さが享受出来るうちは良いのですが、運転できなかったり、車両を所有できなければたちまち、移動の自由が失われてしまうのです。

 少なくとも「都市」と位置付けられた地域に住んでいる限りは、公共交通のサービスを受けることができてしかるべきでしょう。こんなわけで、人口密度の低い都市への反省があるわけです。

公共交通軸に沿ってコンパクトな都市

 低密度な都市への反省は今に始まったことではありません。「都市計画区域」を「市街化区域」と「市街化調整区域」に分けて、後者は開発を抑制するという施策をとってきました。しかしながら、住宅地の開発はだめだけど、大きなショッピングセンターはどんどん立地するといった制度上の矛盾もみられ、このほどまちづくり3法の改正の一環として都市計画法が一部改正されたところです。

 単に郊外の市街化を抑制するというだけでなく、「どこを重点的に市街化するのか」という観点が必要だったわけです。「公共交通軸」に沿った核から徒歩圏が、公共交通のサービスが保証される市街地、その外側では公共交通は利用できないという色分けです。

求めるべき市街地像
平面図

 都市計画に公共交通の概念が入ってきたの省庁再編により国土交通省が誕生した成果といえるでしょう。

公共交通軸の主力はバス

 しかし公共交通軸を形成する要素を考えるとき、日本の多くの都市には「公共交通軸」が存在していないと思えるのです。

大量・中量輸送機関がある都市はこれ以上強化することもない

 資料の挿し絵(上記の求めるべき市街地像参考)をみると、公共交通軸は鉄道路線のように見えます。しかし一つの都市にいくつもの駅がある都市といえば、政令指定都市級の大都市でしょう。路面電車やモノレールといった中量輸送機関を含めても、県庁の所在地レベルの比較的大きな都市ということになるでしょう。

 これら鉄道のある都市では、公共交通軸が明確ですから心配することはありません。せいぜい路面電車を悪者にして廃止してしまうことをしなければ、公共交通軸は維持できます。

バスしかない小規模な都市に必要な「公共交通軸」

 問題はそれ以下の小規模な都市です。市域にひとつかふたつの駅があったとしても、たまたまそこにあるだけという自然発生的なものです。市街地のどこからでも徒歩でその駅に行けるほど小さな市街地でなければ、市街地には別の公共交通軸が必要となるでしょう。その主役はバスとなるわけです。

 現状で、バス路線網が公共交通軸になっているかといえば疑問です。「網」という表現が適切なように、全域をカバーするように網の目の様にバス路線は張り巡らされています。どれが軸かというような重み付けは見あたらないでしょう。結果本数が少なくなり、自家用車を利用できる人が利用したい交通機関とは言えないでしょう。

 一部の路線は運行本数が多く、軸状になっているかも知れません。しかし、これは鉄道駅同士を最短距離で結ぶ路線であったり、いくつかの路線が集約している路線であったり、自然発生的なものが多いのです。

 単に自然発生的にバスの運行本数が多いだけでは、「公共交通軸」とはいえないでしょう。「公共」と名乗るからには、計画的に配置され、維持されるものだと思うのです。バスの利用状況によっては、撤退するようなバス路線は、公共交通軸失格です。

都市計画道路網はバス路線の概念がない

バイパス

 都市の郊外では国道や県道レベルの道路がバス通りとなり、中心市街地への唯一の動線となることが多いでしょう。これらの国道や県道はたいていが歩道も無い貧弱な道路で、交通渋滞も激しい。そんな状況から、バイパスが計画されます。

 バイパスというのは、同じ路線を拡幅するよりも、ちょっと離れたところに平行してつくられることが多いのです。商店などの建物が張り付いている旧道を拡幅するよりも用地費や建物補償費が少なくて済むことや、急カーブなどを少なくした理想的な道路線形の実現など多くのメリットがあります。

 しかし、このバイパスはとんでもなく違った方向につくられることも少なくありません。例えば、長距離を結ぶ国道なら、中心市街地を避けてバイパスを計画することが多いのです。結局利用者の多い旧道にバス路線は残りますが、バイパスの方にも運行が振り分けられるのは需要次第ということになるでしょう。

 旧道かバイパスかという二者択一を考えてみても、公共交通軸という概念が無かったのだと改めて気づくのです。

グリッドパターン

 バイパスに限らず、都市計画道路網は、交通渋滞を緩和するように計画されています。格子状のパターン(グリッドパターン)で、「1箇所が渋滞しても他の部分でカバーする」、「特定の便利な道路をつくらない」といった特性があります。

どれが軸かわからない
平面図2

 これは、自動車の交通という視点から見るともっともなのですが、バイパスの場合と同様に、「公共交通軸」がどれなのかという視点からみると、どこでも「軸」となり得る可能性があるとしか言えないのです。

 まさに建設省時代にやってきた都市計画道路の整備は、どこでもバスを走らせられるという基盤整備であったのですが、どこを重点に走らせるかは運輸行政任せだったのでしょう。

 このように公共交通軸は強化されるどころか、弱められてきたのが現実だと思うのです。

(07.02.26)

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