[格子状の道]
成長の流れが欠かせない

格子状の道路網は均質に見えるために、整備の優先順位を見失う心配があるのです。

Contents
>マスタープランとのつきあい
>>格子状道路はマスタープラン>>市街化を抑制すべき地域
>分散投下される財源
>>中心市街地>>周辺部(市街化区域内)>>郊外部
>成長の流れ
>>「格子状」の計画は流れが見えにくい>>渦巻き状に成長した江戸

マスタープランとのつきあい

格子状道路はマスタープラン

 平安京は千年かけて立派な市街地になりましたが、藤原京、平城京、長岡京等の歴代の都は遺跡として跡形を残しているのみです。都市は縮小したり、消滅したりするものなのです。

 平安京も最初は人口がまばらでした。政治の拠点や市(いち)のまわりに住んだ程度で、その他は荒廃した土地が広がっていたということです。格子状の道路がすべて必要になるのは後世になってのことです。

 最初は必要なくとも、格子状の道路計画があったことで、長い年月にわたり、格子を意識した道づくりが行われてきたというわけです。格子状の道路はマスタープラン的な役割が強いと思えるのです。機能や人口の観点からみて現在不要であれば、整備をしないという決断もあるわけです。

市街化を抑制すべき地域

 「現在不要」という考え方は、「市街化調整区域」の指定に現れています。都市計画区域を「市街化区域」と「市街化調整区域」に分け、「市街化調整区域」は市街化を抑制するのです。

 一方の「市街化区域」ではおおむね10年以内に都市計画道路網を完成させるということですが、うまく実現したという話は聞いたことがありません。全国各地の「市街化区域」は都市の財政力から勘案してまだ広すぎるというのが実感です。

市街化区域と市街化調整区域
区域の図

 市街化区域は、どうしても現状追認型で決められている傾向があります。集落と農地が混在している地域もまとめて市街化区域に含めてしまい、面積が過大になる傾向があります。

 道路網を一気に整備するのは困難というのなら、緊急性の低い箇所は後回しにすればいいと思うわけです。

分散投下される財源

 ところが都市計画道路として決定されていれば、できるならば整備するという姿勢でここまでやってきたようです。ジグソーパズルを解くようにできるところは手当たり次第、整備を進めてきた結果、無秩序に未整備箇所が散在する結果となっています。

中心市街地

 中心市街地では、狭い道路の解消にむけて、幹線道路の整備が望まれているのですが、用地費や建物補償費が高くつくのが難点です。特に必要性の高い交差点の改良箇所は、土地の利用価値が高く、買収に応じてもらえないというジレンマがあります。投入する金額に対して整備効果が低いというところです。このようなジレンマは「[まちにはまちの道がある]バイパス建設の誘惑」のページにおいて考えていますのでご参考まで。

周辺部(市街化区域内)

 都市計画の理念を考えると幹線道路の整備するだけでなく、その地域全体の細街路も同時に整備する必要があるのです。幹線道路だけの整備だと、沿道だけ商業施設が立地するものの、道路の無い奥の部分は利用できなかったり、虫食い状態に乱開発が進んだりします。そのため、一定の区域を決めて、市街地の開発事業を行うわけです。

 この開発事業、経済波及効果を考えると財政的にはメリットが大きいのですが、関係する土地所有者が格段に増え、事業に時間がかかるのが欠点です。

 合意形成が整ったところから事業をはじめますので、開発事業は連続的に実施できるとは限らず、せっかく作った道路も全線開通まではまだ先という状況です。

連続しない道路
道路の図

郊外部

 国道や県道のバイパス等は、広域的な要請から必要となりますので、市街化調整区域であっても先行して整備されます。そもそも市街化を抑制する地域ですから、周囲の土地と一体で市街地の開発事業を行う必要はありません。また用地費は郊外のため安くあがります。よって整備効率は良いのが特徴です。市町村が発表する都市計画道路の進捗率が良い数字である印象なのは、こういった郊外の道路整備が含まれていることも要因だと思うのです。

成長の流れ

「格子状」の計画は流れが見えにくい

 都市計画道路網の整備が進まないのは、「格子状」という構造的な欠点があるように思うのです。「格子状」は交通をうまく分散する利点がありますが、裏を返せばどの道路も同じ様な役割を持つということです。役割が同じであれば、優先順位も決められない。だから手当たり次第にできるところからやっていくという風になるのです。

 格子状でなければ案外簡単かもしれません。たとえば細長い都市。まずは1本幹線道路を通したら、近いところから順に整備する必要があるのだという感じがします。

細長い都市の成長
細長い都市

渦巻き状に成長した江戸

 たとえば江戸。江戸は都市の成長が右回りに渦巻き状となっているのです。最初は江戸城の天守閣を中心にしたこぢんまりとした江戸でしたが、人口の流入に伴い、拡大していきました。単に同心円に広がるのではなく、渦巻き状に成長したことで、都市基盤の整備がある程度集中して行えて、秩序ある成長が可能となったようです。

江戸の成長
江戸の成長

 直線、渦巻きに比べると、格子状は流れが見えにくいのだと思うのです。だからといって現実の都市では、格子状だから中心不在ということはありませんし、道路が分断されたままということも極力さけられています。しかし、「格子状の道路網を並べればいい」という成長の流れ不在の都市計画は、現在行き詰まりを見せています。それがどんなことなのか、別の機会に書こうと思います。

(06.02.27)

この話題に関する情報、ご意見などがありましたら是非お寄せください。

文責:kita jdy07317@yahoo.co.jpまたは流れのヒントの日記
リンクはご自由に © 2003-2017 kita