平坦すぎると水の流れが止まってしまうのです。
かつて江戸の町の水を供給していたのは玉川上水でした。これは谷部に流れていた多摩川の流れを武蔵野台地の尾根部に流すというもので、江戸付近においても標高の高い位置に水が流していたのです。
多摩川上流の羽村堰(標高126m)から江戸の四谷大木戸(標高34m)までの距離は約43kmですから、計算すると平均勾配は0.2%(92m÷43000m)のゆったりした流れです。
計算上のみならず、勾配はおおむね一定であり、決して水が上っていくという珍現象はなかったはずです。よって途中の山あり谷ありの地形を、常に0.2パーセント程度の勾配を維持するために、深く掘ってみたり、水道橋で空中に流したりの苦労があったわけです。
水が下に流れるのは極めて当たり前の光景ですが、目的地の標高を決めてしまうと、自然に流すのにも苦労が伴うのです。
昨今ではポンプを活用することで、地形的な困難を克服していますが、ポンプアップは最後の手段です。24時間365日、常に稼働させる管理体制を維持することは大変です。浄水場から配水池に送り込むときや、最終処理場から川に戻す時などに限定すべきでしょう。
土地の造成を計画する場合も自然流下が第一条件となります。雨が降り、各宅地から道路の排水施設に水を流し、道路は少しずつ勾配を持ち、最終的には川に戻すというわけです。
排水は道路に沿って
土地が比較的平坦な場合、造成工事は不要に見えますが、排水を流すルートを確保するために、造成工事が必要になってくるのです。すべての地点から、最下流に向かって、一貫して下る必要があるのです。途中、上り勾配があれば、そこで水が溜まってしまうからです。
普段歩いていて道路に上り下りがあると感じるのは排水の流れを横断する方向ということであり、常に川に向かう方向があるはずです。
造成の計画をするとき、最下流の高さが決まっているわけですから、そこから順に少しずつ道路に勾配をつけて最上流までの道路高さを決定します。
道路の高さが決まれば、その高さにあわせて土地の高さを計画することになります。土地の高さが道路の高さより高ければ、問題ありませんが低い場合、土地ごとかさ上げしなければなりません。
従来はもっと低い位置で水路がちゃんと流れていたのに、水路が廃止されたという場合などは、新しくできた道路に排水しなければならなくなります。そんなときもかさ上げが必要となります。
従来は左に水を流していた
新しい流末は右側になった
写真はそんなかさ上げの事例です。駅前広場に隣接する時間貸しのパーキングです。入り口付近では広場の地盤面と同一面なのですが、奥に行くに従って高くなっています。
入り口付近はつらいち
奥はかさあげ
このパーキングでは排水できるのが入り口付近に限られているのでしょう。奥の方の排水も入口に集めなければならないので無理に奥を高くする必要が生じたのです。
奥の裏側に空き地があり、ここに排水できれば一番なのですが、おそらくここは鉄道会社の用地なのでしょう。道路の側溝や雨水管に排水すべきところを、鉄道会社の土地に勝手に排水してはいけないのです。
(05.10.10)
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