地中に埋まっているだけに、問題が先送りされやすいものなのです。
前回の「土地には傾斜がつきものです」は、地表の水の流れの話でした。土地のかさ上げ等で地表に勾配をつけて水を流すという工夫を紹介しました。
「管渠」を使って坂道を逆に進むことも工夫のひとつです。管渠は水を通すパイプの事ですが、地中に埋めるので地表の勾配は関係ありません。
道路の端にある側溝(狭い水路)だと雨水を流したい方向に道路が傾いていなければなりませんが、管渠でなら少々の坂道なら道路の勾配の逆方向に進めることが出来るのです。
道路の勾配と逆
地形を無視するのにも限界があります。道路よりどんどん深くなっていくわけですから、工事が出来ないくらい深くなってしまっては困ります。5メートルくらいの深さが安全で経済的に工事ができる限界でしょう。
管渠の勾配を道路勾配と同じすれば良いというわけでもありません。管渠の勾配は「管径」と「流速」の相関関係と複雑に絡み合っており、深くしたくないからといって、勾配を緩やかにすることは出来ません。緩やかにすると水の流れが遅くなり土砂が溜まってしまい、つまりの原因になるのです。
勾配・関係・流速
こういった理屈は難しいものでもなく、当然専門家もわかっているものなのですが、案外見過ごされがちなものなのです。
大きな敷地で集合住宅やビルを建てるとき、下水道に接続できないことがしばしば起こるのです。
下水道は、市役所などが建設管理しており、道路の下に埋設されています。一方大規模な敷地では、敷地内に通路を設けて、そこに排水管を埋設し、最後に公共の下水道に接続します。この通路は見た目は道路なのですが、あくまで私道ですから市役所は関知しません。
一方建築する設計者は、その通路に排水すれば終わりと思っていたりすると、通路内の排水管渠の勾配に気を配る人がいなくなってしまうわけです。
盲点な部分
両者の間の隔たりがある領域、「外構」という部分なのですが、「外構設計」というのは様々な設計の最後にまわされることが多いのです。実際の工事では、建物が出来上がった後に外構の工事をすることになるためでしょう。
「外構設計」時には、既に通路の位置が決まり、下水道のある道路までの排水管のルートも決まっています。後は外構の設計者が高さを決めてやるだけです。ところが高さが取り付かないのです。理想は1箇所に集約する事なのですが、迂回することにより公共下水道管より深くなってしまう場合があるのです。
迂回を余儀なくされる
下水道は既にあるものですし、建築の設計も大枠は完了しており、今更大幅な変更は出来ません。小手先の修正で対応するしかないのです。
通路の位置を変更したり、下水道管理者にショートカットのルートで接続することをお願いしたり、下手するとポンプを設置して未来永劫自分たちで管理したりと大変です。
(05.11.21)
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