居心地の良さの指標としてお弁当を広げることを考えてみると良いのです
集客が途絶えた観光地や商店街は、「目玉」「イベント」を打ち出すと同時に、居心地の良さを再点検してみると良いでしょう。他地域との差別化は大切ですが、その効果を持続的にするためにも必要です。
利益をもたらす回転効率の改善は熱心でも、居心地の改善は消極的かもしれません。むしろ居心地を悪くして、回転効率を上げるという発想すらあるかもしれません。しかし集客が途絶えた商店街で、回転効率は意味の無い議論でしょう。
アンケート調査をして、「何を希望しますか」と尋ねてみても、本音が出ないことは良くあることでしょう。「お金を使わず快適に過ごしたい」という本音は、客として勝手すぎると回答を差し控えるわけです。ですから、最低何を押さえればよいのか、人物像を想定してシミュレーションしてみることは必要でしょう。
以下に取り上げるのは、お金を落とさず、回転効率が悪い例です。これらは極端とはいえ、誰もが感じることのある居心地の悪さでもあると思うのです。これらの要望をかなえる努力の過程で、居心地の悪さを改善できれば、リピーターにつながるわけです。
ショッピングモールの話題でも取り上げたのですが、アメリカの地方の町のショッピングモールには、たくさんのテーブルが用意されていて、老人たちが集っています。
1日中のんびり過ごすというのは、居心地の良さの指標として大切な存在でしょう。テーブルが置かれていても、数が少なかったり、寒い屋外だったりして、いつも閑散としているというのは、居心地の悪い証拠です。長居が歓迎されていないことを客に感じさせるようでは、居心地の良さを感じることができません。
昨今なぜか病院が高齢者が集まる場として機能しています。人が集まってほしい商店街には人が集まらず、混雑を緩和したい病院が混雑するというのは皮肉な話です。
何も無いところに人は集まりませんから、イベントは必要です。継続的なイベントとして、病院の支援を受けて、毎日健康診断をやっていれば常に高齢者が集まる場ができてよいかも知れません。
「社会人からの学習」で、コーヒーショップが勉強利用の人であふれ、大都市では「有料の自習室」が活況を得ているように、自宅以外で勉強したいというニーズは強いものがあります。社会人は仕事の合間の短時間であることが多く、コーヒー一杯に相当する場所代として何とか成り立つでしょうが、受験生の勉強は長時間となることから営利目的のコーヒーショップ1軒の経営努力では対応できません。商店街は受験生の親になったつもりで気分転換の場を提供してはどうかと思うのです。
コーヒーショップが中心となるでしょうが、場所の提供は商店街前提の問題とし、コーヒーショップが赤字にならないようにしないとなりません。どうせ行政から地域の活性化支援を受けるのであれば、公共図書館の自習室の機能を持つということで支援してもらうのも良いでしょう。
受験生の親は大変です。
公園はお弁当を食べる場としてよく見られる光景ですが、お弁当を商店街で食べることは想定されてないでしょう。
お弁当持参の理由はその商店街に好みの食堂がないこともあるでしょうし、健康や持病のことを考え、食堂に入れない場合もあるでしょう。そういった人たちの受け皿があると良いと思うのです。
ディズニーランドでは、お弁当持込禁止ですが、外にピクニックエリアを設けています。「お弁当持込禁止」だけを見ると「排除」ですが、ちゃんとお弁当持参客も受け入れてくれているのだと安心できるともいえます。
排除では無く、対応を明記するところまで持ってくると、利用者の安心は増すことでしょう。どこでお弁当を食べてもらうかを考えてみれば、殺伐とした商店街のどこにもくつろぎのスペースが無いことに気づくでしょう。
受験生対応はコーヒーショップの延長で考えましたが、お弁当はコンビニの延長で考えると良いでしょう。コンビニ弁当を食べられるスペースですと、自前のお弁当を広げやすくなります。コンビニの店頭に「お弁当に味噌汁はいかがですか」と、掲げてあれば、なおさらで、副菜をひとつ買っていこうという気にもなるかもしれません。
つまりカフェなのです。商店街単位でひとつのカフェを開設できれば理想です。運営はプロのコーヒーショップとコンビニにのんびりしても良い場ということです。
道路管理者が規制して、路上にオープンカフェができないという嘆きもありますが、公共空間は立ち入りの規制ができないことから、私有地内で運営するのが良いと思うのです。また一人で利用するときの快適性から言うとちょっと奥まったところのほうが良いので、建物内の方が良いでしょう。
ショッピングモールは、施設の配置を運営者が自由にできるので、こういった仕掛けを作ることは簡単ですし、フードコートやコーヒーショップ等の組み合わせで、「ほどほど」に実現させています。
この「ほどほど」というのが曲者で、上記のニーズに近づけてはいるけれど、そこまで居心地を良くしてはいないのです。損益分岐点をわきまえているのでしょう。
ですから、商店街にも居心地の良さをアピールする余地は、残されていると考えてよいわけです。最小の構成としてまず、居心地の良さを押さえることなのです。
(10.11.29)
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