「さいたま」市誕生の陰に、見捨てられた市名公募第1位の「埼玉市」。委員会はなぜ退けたのだろう。
浦和市、大宮市、与野市3市合併の「新名称募集」が始まりました(2000.2.18まで)。これは市民以外でもインターネット、はがき等で募集できます。気軽に出来る市民参加ということで私も応募しました。私が推したのは「埼玉市」です。
※募集は終了しました(このコンテンツの初出は00.01.14です。)
駅名とは違い市名は2+2のような安易な名前は見られませんが、無難なものが多いことにかわりありません。「北九州」という地名はとても壮大な印象です。福岡県どころが、長崎県、佐賀県、大分県をとりまとめる北九州という州の州庁がある都市をめざすというイメージがあり、そのまちのがんばりを応援したくなります。しかし、最近よくあるひらがな市名(あきる野市とかひたちなか市)は、どうも頼りなく思うのです。
3市の市民をはじめとする関係者が持つ自分たちのまちに対する思いは強いものがあるでしょう。名称を決める委員会では様々な団体の代表者が一堂に会し、それぞれの思い入れを主張することになると思います。たとえば、この周辺のシンボルは見沼なので「みぬま市」だとか、市の花がいずれもさくら(浦和市はさくら草)だから「さくら市」とか。
しかし、名前はそれ自体に意味があることのほかに、他のものと差別化を図る単なる「記号」という面も持っていることを忘れて欲しくないのです。極端なたとえですが、とある国の県庁の所在地の名前を「A」市、「B」市、「C」市・・・とアルファベットの順でつけるというルールがあるとしましょう。「L」市は突然に「私たちはカタカナに愛着がある」といって「ウ」市と全然違う体系で名前を付けてしまっては、他の県民は混乱してしまいます。ルールには従わないといけないわけです。
そう考えると3市合併後の市名は3市の市民だけでなく、全国レベルの見方で考えたいところです。あの壮大な名前の100万都市北九州市でも県庁の所在地ではありませんでしたが、遠く関東にいる人間にとってもそのわかりやすさは伝わります。ここだと「北関東市」とか「北東京市」となるのでしょう。本当に位置情報だけで、素っ気がない印象です。
だから「埼玉」という愛着のある名前に落ちつくのです。「埼玉」という名称は「幸魂(さきみたま)」から来ており、その「魂」は古代人が装飾品として大切にしていた「まが玉」から由来しているというのです。県民にとっては意味のある名前なのです。ただ、由来とする地域は、この3市にはなく、もっと西北の行田辺りにあるそうで、市を表す名前としては不適格であるようです。
だからといって、その折衷案として、ひらがなの「さいたま市」にしてしまうと、「意味」が無いような気がするのです。
「県庁の所在地=県の名称」。将来、息子が小学校の地理の時間で、「群馬県−前橋市」 「栃木県−宇都宮市」・・・と苦労している中で「埼玉県」は覚えやすいと言ってもらいたいというのも理由のひとつです。「埼玉(の県庁の所在地の)市」略して「埼玉市」でいいと思うのです。
日本経済新聞の記事で集計の中間発表がありました。(0.3.10) 88.7%の集計分について、「埼玉市」が「さいたま市」を2倍以上の得票数を得てダントツの1位だということです。私の感想としては「さいたま市」が健闘すると見ていたので、みなさんの冷静な判断にほっとしています。5位と6位にそれぞれ「大宮市」と「浦和市」が入っているのは地元の愛着でしょう。いずれにしろまだ小委員会というハードルがあります。
4月20日国立競技場前までの延伸を機に都営地下鉄12号線に「大江戸線」の愛称名がつきます。昨年11月の選考委員会では「東京環状線(ゆめもぐら)」が最優秀候補であったところ、「環状運転でないのに利用者に誤解を与える」との都知事の意見で変わったそうです(日経0.4.2)。「東京環状線」の方が的確な表現だと思うのですが、何のための公募だったのでしょう。
一方、埼玉県の3市合併の名称も公募でトップであった「埼玉市」を押しのけて、「さいたま市」(浦和市、与野市の案)と「大宮市」(大宮市の案)の2本建てとなっています。公募を無視した「さいたま市」は不思議です。
4月17日、とうとう「さいたま市」に決まりました。公募の集計は「埼玉市」が7117票、「さいたま市」が3821票でした。与野市長は「これしかない」と話していますが、なぜなのか理解に苦しみます。
さいたま新都心駅は、周辺で行われた市街地開発事業の地区名から由来することで一応納得です。しかしさいたま農協の名称変更は市名決定以前のこと。はじめから公募する以前から「さいたま」に決まっていたのではないかとうがった見方をしてしまいます。
(初出00.01.14)(再編集03.01.12)(再編集07.04.09)編集前
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