[1点豪華主義が好まれる]
短絡路が優先される

「費用」対「効果」を突き詰めていくと、ちょっとした遠回り路線も、無駄な投資といわれかねません。

Contents
>図で表現しやすい利点
>図で表現しにくい利点
>>環状道路の方が距離が長い時>>環状道路の内側から迂回する場合
>分割して見えなくなる環状としての利点

図で表現しやすい利点

 道路は都市から放射状に延びる路線が優先的に整備されるのが常です。都心に集中する交通で渋滞に悩まされ、環状道路の整備が期待されるのです。東京であれば、首都高速道路の中央環状線や東京外郭環状道路(外環)などの完成が待たれています。

 外環は埼玉県区間が3つの高速道路(常磐自動車道、東北自動車道、関越自動車道)を連絡し、都心に流れ込む交通量が減ったという効果があったとのこと。この環状道路の利点を一般的な図に表現すれば、このようになるでしょう。

図で表現しやすい環状道路の利点
環状道路の利点

 破線の流れよりも実線の流れの方が短い距離だから良いだろうということは一目瞭然です。

図で表現しにくい利点

 ところが図で表現しにくい利点もあるわけです。

環状道路の方が距離が長い時

環状道路利用の方が距離が長い場合もある
表現しにくい利点

 例えば常磐自動車道と東名高速道の関係のように都心を通る方が「距離」が短いという場合です。都心は渋滞だらけで、「時間」がかかることを経験的に知る人は多いでしょう。しかし、車を運転しない人の中には、迂回する事の利点が今ひとつわからないという人もいるでしょう。まして、「振動による施設の老朽化を抑える」とか、「騒音や排気ガス汚染を低減させる」などは、ドライバー自身でも気づかない「利点」です。

環状道路の内側から迂回する場合

環状道路の内側からも迂回する
内側からの迂回

 市内ごちゃごちゃした道路より、遠まわりでも快適な道路を利用するものです。でも走行距離が増えればガソリンの消費量が増えますし、時間的にも遠回りの方が時間がかかるとなれば、「なぜそんな迂回路を作るのか」とか「現道の拡幅を優先すべき」といった意見もでてくるかもしれません。

分割して見えなくなる環状としての利点

 道路整備はいくつかの区間にわけ、少しずつ進めることになります。分割すると環状の利点が見えにくくなるのです。深刻な渋滞路線があったら、そちらの解決が先行することになるでしょう。

 優先順位の付け方を図に示すと実感できるかもしれません。

目前の問題解決が優先される
目前の問題解決

  • 路線Aは、重要な位置づけのある環状道路の一環を担う道路ですが、他の区間は未だ整備されていません。しかし、これを整備することで、路線Cの渋滞を軽減することができます。
  • 路線Bは、あまり重要な位置づけではありませんが、渋滞がひどい路線Cに近接しています。もちろん路線Cの渋滞を軽減することができます。

 この場合、おそらく路線Bが優先的となるでしょうし、路線Cの拡幅も有力です。逆に路線Aは難しいところです。たとえ、環状道路網の整備に寄与するとしてもです。

 だからといって路線Aが無視されていたという訳ではなく、優先度とは別の理由で路線Aは整備されています。郊外に整備される環状道路は土地代を含めて建設費が安いため、少ない投資でたくさんの整備が可能となるわけです。市民への説明でも、たくさんの道路整備をしましたと説明できるわけです。

 しかし、近年、道路整備に対する市民の目は厳しいものがあります。ほとんど利用されない道路を整備することは、無駄遣いだと判断されるのです。環状道路の整備も、当面は無駄遣いのように見えかねません。自動車は迂回をして利用する機会が増えるのでガソリンの無駄です。交通量を誘導していくというものなので、市内の交通網が完成するまでは交通量は少ないでしょう。

 費用対効果を考えたとき、長期的なスパンで考えなければ収支が合わないのが環状道路です。これからますます「費用対効果」が求められるにつれ、渋滞に対して局所療法的な対応が優先されることになるかもしれません。理詰めで考えれば考えるほど、必要性が主張しづらい矛盾を抱えているのが環状道路だと言えるのです。

(初出05.04.25)(再編集11.02.21)編集前

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