[流れから見た「点」]
テーマパークを歩く

長い距離を歩かされる程、満足感が大きいのがテーマパークの特徴。その流れから見るとアトラクションは、単なる通過「点」にすぎません。

Contents
>各ゾーンは1本の流れで結ばれている
>>ゾーンを結ぶ1本の流れ>>蛇行した流れで多くを出会いを演出
>流れは物語に例えられる
>>物語は駅から>>入口はひとつ>>各ゾーンは袋小路>>各アトラクションでも流れが
>流れを楽しむ

各ゾーンは1本の流れで結ばれている

ゾーンを結ぶ1本の流れ

 前回、「兼六園をゾーニングの手法でつくるとつまらない」「渓流の流れでまとめるのがいい」と書きましたが、それはテーマパークの雄、ディズニーランドにもいえることです。渓流こそありませんが、流れはあります。ゾーン同士を結ぶ流れ。アトラクション同士を結ぶ流れ。これらの流れがパーク内を一体化しています。

蛇行した流れで多くを出会いを演出

 ディズニーランドの流れはひとつです。これは「ショッピングモールの掟」でお話しした理屈と同様にゲスト(訪問者)が頭を悩ますことなくひとつの流れを辿れば、多くのアトラクションに出会えるという工夫です。四方八方に通路が巡らされたばかりに、右往左往した挙げ句にせっかくのアトラクションを見落とすということでは困ります。出来るだけ多くの各店舗が目に止まるようにするというショッピングモールの発想に通じるところです。
 しかしショッピングモールとは異なる点があります。それは歩く距離が長くても構わないという点です。ショッピングモールでは歩行距離600mの鉄則から、あまり長い流れを設定しても歩いてもらえないことを覚悟しなければなりませんが、ディズニーランドでは長い距離を歩いてもらおうというわけです。兼六園で渓流を下ったときも、蛇行する流れで随分ながい距離を歩くことになりました。

流れは物語に例えられる

 流れは物語を演出しているようです。

物語は駅から

 物語はディズニーランドの最寄り駅から始まっているのです。駅名は「ディズニーランド前」ではだめなのです。駅を降りてから初めてディズニーが始まるというディズニー側の主張でした。
 そして、その駅から入口まではずいぶん歩かされるのですが、これはこの場所がシンデレラ城がよく見えていいという主張なのだそうです。JR側はもっと近いところに設置しようと考えていたようですが。
 物語は最初が肝心というところでしょう。

駅から歩く
駅から歩く

入口はひとつ

 入り口から入った客はワールドワールドバザールという極めて太い流れで導かれてシンデレラ城に向かうことになります。ディズニーランドではシンデレラ城を中心にいくつかのゾーンに分かれており、ここから四方八方に好みのゾーンに向かっていくことになります。これはシンデレラ城を中心に配置されている各ゾーンを一望できる中心へいち早く誘導したいのに違いありません。
 ここを出発点に目的のゾーンだけを楽しんだり、迷子になったら目次を確認するように戻ったり、物語で言うと目次にあたるのがシンデレラ城ということになります。

シンデレラ城への道
シンデレラ城への道

 この流れを演出するのに不可欠なのがパークへの入口を現在の正面玄関ひとつに限定することです。好ましくない例として、南側に「臨海口」を設けることが挙げられます。ホテル群の利用客にとっては大変便利ですが、表紙から目次に誘導するという物語が成り立ちません。立派な正面入口からワールドバザールを経由するから良いのであって、立派さに欠ける「臨海口」では、印象もそれなりです。常に一番良い物語を提供するために、動線をベストなものひとつに絞ることは大切でしょう。

各ゾーンは袋小路

 シンデレラ城から各ゾーンへ向かうわけですが、特にお目当てのアトラクションがなければ、端のゾーンから順に巡るというのが一般的な初心者コースでしょう。1日かけてパークを一周するわけです。

 それぞれのゾーンは袋小路のように独立しています。一旦各ゾーンに入ったら、隣のゾーンとの行き来はあまり出来ません。これはひとつの物語に集中できるようにとの配慮でしょう。アドベンチャーランドから、ウェスタンランドが丸見えだと興ざめです。

袋小路
袋小路

各アトラクションでも流れが

 各アトラクションでも流れがあります。待ち行列です。これはディズニーランドにとっては、アトラクションの価値を高める重要な流れです。行列をつくることで、1日に回ることのできるアトラクション数を限定し、ひとつひとつのアトラクションをありがたく思わせる演出でしょう。
 人は行列にいらいらするものですから、行列の流れを出来るだけ快適に過ごせるように、巧みに制御しています。例えばじっとしていればいらいらするものを緩和するため、少しずつ流れる様にすることで、いらいらを緩和しています。

流れを楽しむ

 こうしてみると、ディズニーの楽しみは、ほとんどが「流れ」に尽きると言っていいのでしょう。時間的にもアトラクションを楽しむ時間より流れに身を任せる時間の方が圧倒的に長いでしょう。
 極端な話。アトラクションは「流れを楽しむための単なる小道具に過ぎない」のかもしれません。カップルにとってはアトラクションなどそっちのけ。それでも楽しい時間を持てるというのが人気の秘密なのでしょう。

(初出00.06.13)
(再編集03.10.20)

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