高速料金が鉄道運賃と同じように初乗り料金と長距離割引で構成されているのはおかしいと考えるのです。
東名高速道路の料金算出は
の3本の柱で成り立っているとのこと。その特徴をわかりやすく極端なグラフにすると、携帯通信料の料金体系のグラフの様になります。仮にだぶる定額と名付けましょう。
だぶる定額
左側の定額部分がターミナルチャージ、右側の定額部分が長距離割引ということです。
ターミナルチャージは、鉄道では初乗り料金にあたります。2つとなりの駅に直接行くときには150円で済むのに、となり駅で途中下車すると130円+130円の260円が必要となるからくりです。
東名高速道路では1回あたり150円徴収されているそうです。鉄道の初乗り料金に慣れているので特に不思議に思わなかったのですが、途中下車すると150円多く支払うことなっていたわけです。
料金所の手数料という意味合いがある様ですが、ETCの普及で、料金所の運営コストを下げることになるわけですから、本線の料金と一本化しても良いと思うのです。ETCは利用者に負担を強いて普及してきた経緯もありますし。
長距離になるほど通行料金は逓減されていきます。鉄道と同様のことで、不思議に思わなかったのですが、途中下車すると割高になってしまいます。鉄道であれば、有効期限内に何回でも途中下車可能なのにです。
ただでさえ不思議なのに、更に長距離割引を充実しようという社会実験もおこなわれていた様です。現行では200km以上は同一の割引率であったものを、900km以上は60%割引という利用距離帯を設けるという実験です。
これは運転者の身体能力を無視した、数字の遊びのように思えてなりません。東京・大阪間など大都市は500kmほど離れています。7時間くらいの道のりですから、1日の就業時間です。一休みというかこれで今日の仕事は終わるべきでしょう。2倍の距離を走る東京・福岡間の高速バスなどは、お客を乗せていますので、交替の乗務員が控えています。
この高速バスの乗務員の様に、きちんと交替要員が控えているとは限りません。個人のトラックドライバー、行楽に行くドライバーが割安だという理由で、途中下車せずに長時間一気に運転しようと考えるのは不思議ではありません。500kmを超える距離で値引きすることは、無理な運転を助長するような方策としか思えません。
トラック業界などが、コスト削減のために高速道路料金の値下げを求めることがあるのかも知れません。その対応策として、インパクトがあり、減収の影響が少ない(利用実態の少ない)値下げ方法考えたのかも知れません。試算では、東京・鹿児島間で6,250円(普通車)も得になるとアピールしています。得する数字を作ることが目的の料金制度の様に思えて仕方ないのです。
コスト削減の現場では、荷主との約束時間に間に合う限り一般道を利用することで高速料金を節約する対策をおこなっているようです。もちろん時間はかかります。こういう節約方策に対して、長距離割引は力にもなっていないことを理解するべきでしょう。
だぶる定額料金体系のおかげで、利用者は高速道路を途中下車しにくい状態になっています。単に休憩するならサービスエリアが整備されていますが、途中で一泊宿泊したい時やせっかく休憩するなら途中の町をぶらぶらしたいときも通行料金のことを気にしないでおきたいわけです。
料金体系の改善を語るとき、注意しなければならないのは、高速道路会社の料金収入とは無関係であることです。首都高速が均一料金から距離別料金に切り替えるからといって、トータルでは値下げも値上げも関係ないということです。施設の償還など必要となる収入を別途算出し、それを満たす料金体系を逆算で算出しているだけです。結果の距離別料金表を見て儲けすぎだと批判してもはじまりません。
途中下車可能な料金体系は距離別が基本です。そしてターミナルチャージも、長距離割引もありません。各区間の料金の合計が全区間の料金になるわけです。
これでは半端なので
足したりひいたりが不公平だというなら、ETC料金は1円単位のままで、現金の場合50円単位の切り上げて、ETC有利をアピールしましょう。現金料金はこうなります。
そうすると、途中下車が高くつく。・・・・・・・・・・・・・・。どうでもいいです。おそらく料金を決めるときはこういう不毛な議論も一緒くたにしてやっているのでしょう。ご苦労様です。
ここで突然出てきた「区間料金方式」としたのは、私の造語です。単なる距離別で無いということで、区間毎に戦略的な料金設定という意味です。
上記に長距離割引について批判的なことを書きましたが、収益の構造として有利な点があることは認めるのです。大都市周辺はあまり交通量が増えても、補修や車線増などに対応しなければなりません。一方、地方部ではせっかく作った道路ですから多少値引きしてもたくさん利用してもらった方がいい。長距離客は地方部のいいお客であるとも言えるからです。
東名・名神高速道路を見てみると、東京・静岡間、静岡・名古屋間、名古屋・京阪神間が200km程度。200kmの間に地方部が含まれるわけで、200km以上の利用客は、地方部の利用客として優遇されてしかるべきでしょう。これ以上利用距離が増えても、都市部−地方部−都市部−地方部−都市部の連続です。都市部と地方部の走行距離の割合はそれほど変わらないということでしょう。200km以上の長距離割引率が一律であるのは、妥当な判断だと思います。
都市部では料金を高めに、地方部では料金を低めに設定しておけば、大都市間を通しで乗る場合には、長距離割引が適用されたのと同じ効果となるでしょう。地方の短距離の利用も期待できます。
のところを、
とするわけです。
こうやって極端に比較すると、地方部の利用客がうらやましく見えますが、地方部から都市部に向かう利用も多いでしょうから、地方部内だけの利用者はかなり少ないでしょう。だからこそ優遇するわけで、利用者増となれば、まわりまわって、全体的な料金の値引きにつながります(ただし、高速道路会社の内部留保に回らなければ)。
需要の掘り起こしを目的とした夜間割引はすでに始まっていますから、需要の掘り起こしを目的とした地方割引に抵抗はないはずです。
区間によって差を付けるのは新しい発想では無く、「特別区間」(橋トンネル)や「大都市近郊区間」として「特別料金」が存在するのです。大都市近郊区間の料金を基本として、地方の料金を割引とした方がお得な感じがして、利用者にもアピールすると思うのです。
区間料金方式(私の造語です)は、それほど目新しいものではありません。複数の有料道路が連続する区間などは、それぞれでターミナルチャージを支払うことになりますが、それぞれで割引いた料金を設定し、総額で割高にならないことよう配慮されていることがあるようです。
例えば、東名阪自動車道の均一区間(名古屋ICから名古屋西JCTまで)の料金は500円。この区間を距離単価で試算すると850円になるとのことです。
首都高速の均一料金もそういう意味では納得です。東名高速道路から東北自動車道に乗り継ぐ場合、用賀から新井宿間41km(実際にはもう少し距離がありますが途中下車出来る最長区間として)で、(31円×41km+210円)×1.05=1,481円。約1,500円のところ、700円で済んでいるのですから、大変お得です。通しなら計算なら本来不要な、首都高と東北自動車道のターミナルチャージ210+150円=360円は、元が取れそうです。
各種割引も「区間料金」も一部で実現されている高速料金。複雑な算出方法はやめ、「インターチェンジ間の料金○○円」というシンプルな料金体系で、維持費の捻出や需要の創出を図るのが良いと思うのです。もちろん途中下車しても料金は変わりませんから、利用客が気軽にそのまちを訪問することが可能となり、地方の活性化に一役買うことになります。
途中下車で地方の活性化を図るということは[インターチェンジをまちの顔に]気軽に途中下車で地元に恩恵をでも語ってきました。ETCの普及でなにかいいことが起こるかと期待しましたが、何も起こらずじまいです。
慣れ親しんだ料金体系を変えられないという事情よりも、積極的にだぶる定額を採用したい理由があるのにちがいありません。
公共の事業であれば、地方活性化の大義名分のため、サービスエリアの収益を見捨てる可能性もありました。でも民営化により、利用者をみすみすインターチェンジで途中下車させることは、サービスエリアの利用客を減らす背任行為になってしまいます。高速道路会社は地方の活性化とは関係ありません。ハイウェイオアシスという地方の活性化策は、パーキングエリアの新たな収益源という捉え方です。
利用客は遊園地や温泉旅館のお客と同じで囲い込んでお金を落とすことが求められています。施設の中で飲み食いしてもらうのが当然です。超長距離割引が実現して、1,000kmを途中下車しないで利用するのが得だということになれば、宿泊施設をもっと増やして、更に囲い込んでいくのに違いありません。
首都高速は、距離別への料金体系の変更を実施しようとしています。あれだけの広い範囲で近くても遠くても同じというのは違和感があります。上記で算出した用賀から新井宿間は約1,500円のところ、700円で済んでいるのですから、大変お得です。適正料金という観点からは是正是正やむなしです。しかし、いままで安さを享受していた人にとっては大打撃でしょう。
突然2倍になったら大変ということで、上限を1,200円にするということです。長距離の利用者は全利用者に対してわずか(距離別料金のPRによれば1割程度)なので、料金収入としてはそれほど影響は無いのでしょう。その見返りに「上限を設定しました」という格好のアピール材料を手に入れたわけです。「東京・鹿児島間で6,250円(普通車)も得になる」という社会実験のアピールと同じ理屈です。しかし、よく考えてみると、運営主体が違うという理由で、通しの利用客は首都高と東北自動車道のターミナルチャージ210+150円=360円を余分に払っているという計算にもなります。私の試算をもとにすれば、1,200円でもようやく、適正料金ということになります。
短距離利用の人は安くなり、長距離利用の人は高くなるだけで、高速道路会社の収入は別に変わるわけではありません(便乗値上げが無ければ)。距離別料金のPRを見てみますと、今までよりも安い人が過半数になるような料金設定に工夫している様です。ただ単に距離×単価+ターミナルチャージだと、割高になる利用者が増えるということで、700円になる距離帯を増やし、割高になることを防いでいるようです。700円の部分が定額になっていますので、トリプル定額という名がふさわしいグラフになっています。このトリプル定額マジックにより多数決をとれば、賛成する利用者が多いということになるわけです。なるほど。
トリプル定額
このようにサービスエリアの囲い込みと上限料金の引き下げアピールという2つの作戦から、今後も途中下車すると割高になってしまう料金体系は変わらないと悲観するのです。
上記のコンテンツを書いていたころは、政府も高速道路会社も、料金をどうすべきかまじめに検討していたのです
ところが、前政権の末期に、なぜか税金を投入して、休日千円という、電話会社の人気合戦のようなことを始めたのです。
そのため
となるとのこと。税金を投入して、大渋滞を生じ、公共交通網に打撃を与えるというのは意味がわかりません。
首都高速に中央環状線迂回利用割引というのがあるのです。
都心に向かう放射道路の混雑避けて、環状道路に車両が迂回するのが本来の姿なのです。中央環状線も混雑しているため、都心に向かう車両が一向に減らないということなのでしょう。
車両が中央環状線を経由していることを確認するため、道路上にETCアンテナを設置し無線通信を行っているようです。この無線通信はETC料金所ほど完全というわけにはいかないようです。
中央環状線の混雑の一部は本来外環に流れるはずの交通量が混入していることも関係しているでしょう。外環の千葉区間、東京区間が出来たとしてもJHの別料金では、割高になって、中央環状線の混雑緩和が期待できないでしょう。
やはりJHや首都高の違いを意識する必要の無い区間料金は必要だと思うのです。
高速料金が従量制に向けて、一歩前進なのです。せっかく圏央道が繋がっても、そちらに迂回すれば料金が高くなるということであれば、都心の混雑が解消されないのです。そこのところを含めていろいろ考えているようです。
社会資本整備審議会道路分科会国土幹線道路部会 の高速道路を中心とした「道路を賢く使う取組」の基本方針によれば3つの提言があるのです。
(国土幹線道路部会基本方針のポイント(その1)の2ページより抜粋)
<実現に向けた取組>
- 1.料金体系の整理・統一
- ・料金水準や車種区分について、対距離制を基本として統一
- ・具体の料金水準については、大都市近郊区間の水準を参考に検討
「対距離制」の徹底ということで、だぶる定額の首都高速はダメだと言うことです。
- 2.起終点を基本とした継ぎ目のない料金の実現
- 発着地が同一ならば、経路間の差異によらず料金を同一とする
- 管理主体を跨ぐ際のターミナルチャージを1回の利用に対して1回分のみ課す
ターミナルチャージに言及しているのは評価できるのです。ただし、1回分はターミナルチャージ残るので、一度降りたら損ということには変わりありません。供食は引き続きサービスエリアに頼ることになってしまいます
- 3.政策的な料金の導入
- ・混雑状況に応じた料金施策
- (都心経由と環状道路経由の料金に差 ⇒ 混雑状況に応じた機動的な料金)
- ・災害・事故発生時等における柔軟な料金施策(代替路の走行、路外での休憩等)
- ・大型車の効果的・効率的な利用を促すための料金施策
「代替路の走行、路外での休憩等」を実現する料金施策については、ターミナルチャージを廃止すれば解決する話なのです。
たとえば圏央道を迂回路として活用する方策が提案されています。電車の近郊区間の様にどのような経路をたどっても、「起終点」が同じなら同一料金とするものです。
圏央道を迂回路として使う
『基本方針 参考資料』(社会資本整備審議会道路分科会国土幹線道路部会、平成27年1月27日)より引用
(07.11.05)
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