空港ビルは旅客増に見合った、増築ができる構造が望ましいのです。施設が一杯になったら第2ターミナル建設とか、一旦閉鎖をして大改造というのでは大げさすぎます。
羽を広げている姿なので「ビッグバード」と、優雅に命名されるほどに、最新鋭の空港ビルのデザインは非の付け所がありません。増築する際にどこから手をつけていいものやら。完成されすぎにも一考というわけです。
ただし、多くの地方空港はこの点では悩まなくても良いようです。小規模ですから横方向に拡張すればいいわけです。
横方向に増築
日本の空港は、あまり増築のことが考えられていないようです。
拡張性の無い例としては、成田空港の第1ターミナルは顕著な例でしょう。機能の維持をしながらの増築ができず、第2ターミナルの供用にともない、ようやく機能のすべてを一旦閉鎖しての大改造です。
一方最新鋭の羽田空港や関西空港も増築は困難だと思うのです。これ以上横方向に伸ばすと不便きわまりないからです。これらの空港は、最初から地上交通を挟んだ反対側に第2ターミナルを建設することが前提となっていますから、その点では増築は最初から考えていないのでしょう。
反対側に第2ターミナル
新千歳空港は、完全に独立したターミナルを建設するのではなく、既存のターミナルの至近に建設するように選んだ様です。
新千歳空港の国内線ターミナルは完成されすぎたデザインで、拡張の余地がありません。どこか手をつけると今の利便性が損なわれてしまいます。
国際線のターミナルが必要となり、本来なら、南側に隣接した敷地に建設されるだろうと思っていたわけです。現ターミナルビルと同じような半月の形をした敷地が、並んで用意されていたからです。
既存のターミナルに並んでいるといっても、駐機スペースなどを考慮すると、十分な間隔が必要で、ちょっと歩くという距離ではありません。独立したターミナルとして、名店街を始めとする附帯施設は、第1ターミナルと同機能なものを独立して作らなければなりません。中途半端な規模だと、附帯施設も中途半端にならざるを得ず、投資効果は半減です。
大混雑の羽田や成田とは事情が違い、既存ターミナルと同じ規模のものを新たに整備するのは、過大だったのでしょう。結局マスタープランを無視した形で、西側に国際線ターミナルが整備されました。国内線ターミナルに比べ規模は小さいことから、あまり使われない附帯施設は国内線のものを利用することになるでしょうが、ターミナルが向き合った形になっていることから、一体的に利用することに抵抗は少なそうです。
向かい合った国際線ターミナル
ちなみに新千歳空港ターミナルのお手本と考えられるダラス空港では、半月状の敷地が8箇所あり(1箇所は四角ですが)、現在のところ5つにターミナルが整備されています。5箇所が6箇所に増えようと、2割増えただけです。交通機関などの附帯施設の考え方が大きく変わることはなく、増築の感覚といえるでしょう。
ダラスのターミナル配置
機能拡大の切り札である、別ターミナル構想にはデメリットは多いと思うのです。
増築に備えて、ターミナルをわざと未完成にしておくのが良いでしょう。目先の需要に合わせて小規模なものを計画するのではなく。大規模な全体計画想定したうえで、どこか欠けた状態で建設したらいいと思うのです。例えば、羽を広げた形の片方の翼をない状態とするのです。そうすれば、需要が増えたときも、全体の利便性を損なわずに増築出来ることが出来るわけです。羽田空港の第2ターミナルは、そんな例でした。増築の余地を残して、多少の利用者増加に対応できるように考えられていたわけでしょう。
わざと欠けたビルをつくる
しかし、発着枠の増加も影響あってか、あっという間に全体が完成し、第3(国際線)ターミナルが必要になった時には、モノレールを使って乗り継ぐような離れた場所に建設することとなってしまいました。
2つのターミナルに分かれていた成田空港ですが、それらを連結するように第3ターミナルを建設する計画があるとのこと。これが実現するとつぎはぎだらけでありますが、ひとつの大きなターミナルになります。上記で示したデメリットを緩和できることに期待したいところです。
第3ターミナル
(初出03.02.24)(再編集08.10.06)(再編集11.02.21)編集前
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