[まちの道路]
道は曲がる

新しい街を計画するときも、道路が変に曲がることがあるのです。

Contents
>幹線道路は曲がる
>>地形上の制約>>経済性上の制約>>運転上の制約
>区画道路はまっすぐ
>>敷地は長方形が基本>>制約がなければ都市は長方形
>敷地の最適化
>>敷地は広がろうとする>>経済的効果に換算される形状

幹線道路は曲がる

 とりあえず自然発生的な道路を幹線道路と呼びましょう。昔の「けもの道」も、今では町同士を結ぶ重要な幹線なのです。

地形上の制約

 町同士を結ぶような道路でまっすぐなものはあまり見かけません。目的地までを最短距離で結ぶのが道路の理想でしょうが、次の様な要因で右往左往するのが普通でしょう。

■集落
 集落をひとつひとつ立ち寄っていく。
■山・川・湖
 トンネルや橋は技術的に大変だったでしょう。
■傾斜
 道路が平坦になるように、傾斜に対し垂直方向に道がつけられることが多いのです。つまり曲がりくねった等高線(コンタ)に沿って道路ができるということです。

経済性上の制約

 経済性は重要な要素です。大まかに用地費、建設費、補償費の3つに分けて考えると良いでしょう。

■用地費
 既成市街地を避けて安い「用地費」のルートを選択することがあります。
■建設費
 技術的にトンネルや橋梁が可能でも、莫大な「建設費」をかけられない場合には山や川を迂回するルートを選択することがあります。
■補償費
 支障となる建物などがあれば、それを避けて「補償費」を軽減することも選択肢のひとつです。極端な例では、
・右のルート案は、地元の有力者の屋敷で、母屋のみならず庭にも莫大な補償費が必要。
・左のルート案は、建て替え寸前の古い家屋数棟。もちろん、代替えの住居分の補償は必要。
 検討の結果左のルート案が採用されたとします。世間では「有力者の権力でねじ曲げられた」という目で見がちでしょうが、補償費の軽減を図ったということかも知れません。一方古い家屋に住んでいた人が、「移転を強要される悲劇の人」と言う見方もあるでしょうが、同じように生活できるという補償はあるわけで、むしろ歓迎されているかも知れません。

運転上の制約

 自動車主体の道路では、曲線が主体の計画となりがちです。

■直線は単調
 直線はスピード超過に気づきにくいため、曲線により運転者に適度な緊張感を与えます。
■直線と直線は曲線でつなぐ
 自動車の場合、右左折の連続では通行に時間がかかりますし、渋滞の原因となります。

直線と直線は曲線でつなぐ
説明図a

 このような制約の積み重ねで、幹線道路は曲線が主体となるわけです。

区画道路はまっすぐ

 敷地に接する一番身近な道を区画道路と呼びましょう。例として人口が集中している場合で、住宅団地を想像してください。

敷地は長方形が基本

 敷地(家を建てる私有地など)は長方形が基本です。建物を配置してみるとよくわかるでしょう。長方形が基本の建物、駐車場をむだなく配置するには、敷地の形状を長方形とするのが理想となります。

制約がなければ都市は長方形

 長方形の「敷地」がいくつか集まり、長方形の「街区」を形成しています。それを囲む道路は、定規で引いた様に直線主体となります。

敷地と街区
説明図b

 住宅団地の基本形はこのような街区の集まりですし、大都市の例では京都とか札幌など、例はたくさんあります。計画する時に手抜きをしたのではなく、敷地を長方形にするための合理的な形なのです。

敷地の最適化

 住宅団地の街区は長方形の集合体が理想にも関わらず、微妙にひしゃげた形になっている場合が多く見られます。これはすべての敷地が良い形になろうとする結果でもあるのです。これを「敷地の最適化」と呼んでおきましょう。

敷地は広がろうとする

 敷地には広がろうという性質があります。「自分の土地は減らされたくない」と考えれば想像が付くでしょう。隣接者とのトラブルも、この敷地の性質から来ているわけです。お互い合意した位置で杭を打って、広がろうという力を押さえ込まねばなりません。

 道路に対しても同じ様な性質はあります。家の前の道が狭くても、そう簡単に道は広がりません。家を建て替えるときに、道路の中心から2mの所まで道として確保しろといわれて、ようやく道の拡幅が実現します。

経済的効果に換算される形状

 住宅団地を計画する場合、1戸あたりの面積は販売価格を抑えるため、小さい方が良いわけです。建物に必要な面積がありますから、無駄な隙間を作らないことが重要になります。

 計画の最初には目標となる面積の長方形を並べてみるわけです。すると幹線道路付近で無理が生じる箇所が出てくるのです。

 上記に3つの制約として書いたとおり、幹線道路は基本的に曲線が主体なのです。この曲線主体の幹線道路と長方形の街区の間に不整形な敷地が生じてしまうのは自然の成り行きでしょう。

不整形な敷地
説明c

 全く価値を生まないこの不整形な土地を放置するわけにはいきません。例えば以下の様な方法で、少しずつ整形な土地に無理を押しつけていくのです。

■幅を広げてみる
 各敷地は同じ面積という条件付ですから、幅を変えると言うことは、間口を変えるということにもなります。使い勝手が若干悪くなるわけですが、細長い不整形な土地を残しておくわけにはいきません。
■道路を曲げてみる
 角が鋭角になるような箇所では、道路を曲げてでも敷地の形にこだわります。
■三角公園にしてみる
 全国に「三角」公園が多いのは、デザイン上優れているわけではありません。残った土地が三角形だっただけなのです。一定規模の公園面積の確保は必要ですが、販売可能な住宅地か無償で提供する公園かを比較すれば、公園の形状を犠牲にしてしまうのは企業の論理で仕方ない事でしょう。

無理を少しずつ分散
説明d

 このように少しずつ無理を分散し、商品としての敷地数も増えることがあれば、全体としてはプラスになるわけです。「一部に影響をまとめる」か、「全体にまんべんなくしわ寄せする」か、この辺りは開発業者の腕の見せ所ということでしょう。

(07.12.31)

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