住んでいるだけのまちにもコインパーキングの需要はあったのです。
まちづくりを考える時、必要な施設というものがあるものです。近隣住区の考えのもと、1km四方のまちの中に、小学校1校、大きな公園1箇所、小規模な公園4ヶ所、集会所、最寄り品の商店などが配置されるべきとされています。
住宅地の場合、このリストに共同駐車場が語られることはありません。
駐車場は、商業・業務地等では、積極的に設置という発想になりますが、住宅地にわざわざという認識です。事実、住宅地では、時間貸し駐車場を見かけません。
需要が少ないのは当然でしょうが必要性はあります。
例えば友人宅に車で訪問する場合、相手に余分な駐車場はありません。まれにマンションで来客用が設けられている事もありますが、大抵は路上駐車となるでしょう。よほど閑散とした所でなければ、道路の邪魔者ですから、ちょっとは気がとがめます。一泊お邪魔させてもらうとなると、青空駐車でおまわりさんにチェックされてしまいますからなおさら気をもむというものです。
自宅でも、仕事で使用する車を一晩自宅にて預かるというとき、1泊だけ駐車場を借りたいと思うのです。
住宅地の共同駐車場といえば、月極の駐車場となります。料金は1ヶ月5千円から1万円程度ですから、1日あたり200〜300円程度となります。しかし料金を徴収する仕組み(例えば係員を配置する)や安定しない集客のことを考えると、これでは不安でしょうし、それどころか面倒だからやらないという事になってしまうのでしょう。
月 極 | 時間貸し | |
---|---|---|
高い | ○有る | ○有る |
安い | ○有る | ×無い |
ロングテールというのがネット業界で注目されています。多数派を取り込み、少数派を切り捨てることが効率的な経営とされてきたところが、少数派も集めると結構なマーケットになるというものです。テール部分が意外に長かったというのが語源です。少数派を集めるのに必要なのが、初期投資のコスト減。ネットによる技術革新が後押ししているようです。
テール部分も需要のうち
駐車場も技術革新が進みコインパーキングとなりました。時間貸し駐車場に必要だった徴収員は、自動徴収機に取って代わりました。これで初期投資のコスト減が実現し、「需要が少ない」エリア進出への下地が整いました。
今まで月極駐車場しか無かった郊外の駅前にもコインパーキングが進出してきました。道路交通法の改正で駐車違反の取り締まりが強化されるのが影響しているのでしょう。一日とめても500円とか1000円とか。月極に比べて多少割高ですが、事業者の投資やリスクを考えると妥当なのかもしれません。なにより丸一日の駐車にも対応した上限金額の設定は、路上駐車は避けたいというニーズをつかむことでしょう。このニーズは住宅地であれ同じようにあるわけですから、徒歩圏に必ずあるようにと整備されるとありがたいところです。
上限の設定がありがたい
路上駐車を避けるという、役割の他にパークアンドライドとしての利用に期待するところがあるのです。
一部実験的に実現にこぎ着けることがあっても、全国的には普及していないパークアンドライドです。制度としては普及していなくても、最寄り駅まで車で出勤するという人は結構見られます。駅前の月極駐車場を借りているわけです。毎日利用する人にとっては、月極で良いのですが、たまの利用のために時間貸し駐車場が欲しいのです。駅まで公共交通機関や自転車を使う方が環境にも優しいわけですが、電車に乗り継ぐということを評価して欲しいものです。
中心市街地に1日滞在しようとすると駐車料金はばかになりません。商業施設の割引を活用するのも手ですが、何か買わなければなりませんし、1日滞在という訳にはいきません。こんな中心市街地でも電車でひと駅はなれると、月極駐車場が1ヶ月5000円〜という安い地域になるわけです。こんな駅前に時間貸し駐車場があり、1日1000円定額という風になれば、ここに駐車して電車でひと駅乗り継いで中心市街地に向かうという選択肢もあるでしょう。中心市街地の混雑も緩和されて一石二鳥です。
(06.05.08)
サンデードライバーや観光客といった「気まぐれドライバー」なら、パークアンドライド(P&R)の良さは大歓迎だと思うのです。
バスや電車など公共交通機関を使うと道路の混雑は解消され、燃料の節約になる。駅やバス停の前の駐車場を利用して、できるだけ公共交通機関を使おうというのがパークアンドライド(P&R)です。
政府の施策としては先ず、「朝の通勤渋滞を解消する」ことに専念しているようです。いくつかの社会実験の結果報告を見ているとそのように感じられます。朝の通勤渋滞は目立つし、効果があればすぐに実感できることから、優先的に取り組むべきだと判断したのでしょう。
地方都市ではちょっと郊外に住んでいれば車通勤が基本となります。職場の駐車場は無料で駐車できるとあれば、あとはガソリン代だけ。仮に通勤途中に駅があったとしても、わざわざP&Rに切り替えるひとが少なくてもうなずけます。
本当は車自体の経費がかかっているのですが、どちらにしても一人に一台購入しなければならないのであれば、たくさん使った方がお得だという事なのでしょう。
大都市圏(たとえば東京に近郊から勤務する場合)では状況は違います。勤務先に駐車場はありませんし、公共交通機関は頻繁に走っています。
それでも自宅から駅まで不便だという人はいます。そんな人の中には駅前に月極駐車場を借り、毎朝車で駅までやってくる人がいます。空き地や住宅地が広がっているようなこぢんまりとした駅前が費用が安くて狙い目です。
地方都市にしても大都市圏にしても、簡単にP&Rに切り替えてくれるような人は残っていないのだと思うのです。メリットを感じる人はすでにやっているのです。
「メリットを感じる人はすでにやっている」のは通勤利用の話。サンデードライバーや観光客など気まぐれドライバーだと話は違ってきます。
毎日通勤する人にとっては良く知る道ですが、気まぐれドライバーにとって都心に乗り込むのは結構勇気がいる話です。郊外のどこかで電車やバスに乗り換えてもいいと思っているのです。
一日滞在しようとすると駐車場代が結構かさみます。
商業施設に付属の駐車場だと何時間か無料になるからといって、わざわざ何か購入したり、無料の時間が過ぎない内に次の商業施設に移動したりするのは面倒です。
こんな時、電車で数駅の郊外に1日中安くでとめられる駐車場があるといいのです。電車代+駐車代が都心の駐車場を下回れば言うことなしです。ただ、複数人で行くと電車代が結構かかりますから要注意です。
(初出06.10.23)(再編集11.02.21)編集前(log/1071.html)
1日だけの「気まぐれパークアンドライド」を実行しようにも、旅先の駅前にも安い日貸し駐車場があるのか不安なのです。
気まぐれパークアンドライドは私ひとりだけの希望ではありません。商業施設の駐車場を空いている平日に限りパークアンドライド通勤用として確保したところ、平日の通勤だけでなく、土曜・休日、日貸しの要望があったとの実証実験でのアンケート結果があります。
また「東京都心部に向かう自動車交通を区部外周区等で鉄道へ転換するため、長時間駐車をしやすい駐車料金の導入やキャンペーンの実施」を行い、「東京都板橋四ッ又駐車場、錦糸町パークタワー駐車場」等の整備が行われているとの国土交通省の報告もあります。
さいたま市では「浦和美園駅ホリデーパークアンドライド実証実験」が行われていたとのことですから、潜在的な需要があると見込んでのことでしょう。
ホリデーパークアンドライドの実証実験の現場を見ながら、気まぐれパークアンドライドの適地というものを考えてみました。
駅の西側には月極駐車場がいくつも、実証実験でも利用された駐車場です。このうちの一つはパークアンドライドのために日貸しも行われていましたが今はすべて管理の手間がかからない月極駐車場です。駅前の駐車場が月極駐車場ばかりなのは、商業集積のない郊外の駅前で良くある光景でしょう。こういう駅では気まぐれパークアンドライドは利用できません。
月極駐車場
このショッピングモールの休日は大混雑。駅前にある大駐車場として、パークアンドライド駐車場としての活用に期待がありますが、休日は困難であることがわかります。ショッピングモールの利用客でも臨時駐車場に追いやられる状態なのに、パークアンドライドだけの利用客は歓迎されません。
休日の駐車場は混雑
臨時駐車場も混雑
駅前の広大な土地に将来を期待してみます。しかし、商業地域としてすでに高い価値をもった土地です。一時活用として料金の安いコインパーキングが展開されるかもしれませんが、いずれビルが林立することになるでしょう。そうやって土地の価値が上がれば自ずと駐車料金も上昇していき、パークアンドライド駐車場としての利用は難しくなるでしょう。
これからのまち
実証実験の現場を見てきました。この駅は、都心直結の新線の駅ということで、実証実験の適地として選ばれたのだと思います。利用客を集めるという意味で、新駅開業で駐車場をはじめる土地所有者の協力を得やすかったでしょうし、鉄道事業者も協力的で、社有地を駐車場として開放しています。
都心へのアクセスは良好ですから、月極駐車場を利用してやショッピングモールの平日のみの月極契約でのパークアンドライドは定着するでしょうが、たまの休日に利用するという「気まぐれパークアンドライド」の駐車場として、手頃な料金での提供は難しいでしょう。
安い日貸し駐車場を求めていると、駅前のにぎやかさはかえって邪魔な気がします。[まちの必需品]徒歩圏にコインパーキング(1070.html)で取り上げた1日500円は好例です。この都市の中心からは多方面に鉄道路線が延びており、その隣駅を比較してみますと、他の駅が1日1000円以上する中で、この駅は500円なのです。この違いは駅前のにぎやかさの違いで、さらにこの駐車場は駅の裏口にあたり、駅前の商店街を利用するのも不便。
しかし、目的地は市の中心ですから、パークアンドライドの最寄り駅が少々寂しい駅でも問題はありません。
上限500円
かつてはこんなところは月極駐車場のみだったのですが、コインパーキングなど無人で料金徴収が出来るようになり、ちょっとした利用者もどん欲に取り込もうというのです。
旅先などでこういった地味な駐車場の所在がわかればいいと思うのです。
よく調べてみると気まぐれパーキングの情報は、静かに集められています。まだ物量的に不足があるようですが、方向性としては、このまま情報が集積してくればいいと思うのです。
(初出06.11.06)(再編集11.02.21)編集前(log/1072.html)
パークアンドライドを普及させるにはグリーン車による「らくらく着席」の後押しが不可欠なのです。
前々回(1071.html)、前回(1072.html)で、パークアンドライドの普及を考えてきました。渋滞緩和とか公共交通の利用促進などと大上段に構えなくとも、条件にあう人は始めています。駅前に予算に見合う月極駐車場があればいいだけのことです。始めない人というのはそれ相応の理由があって、簡単にはパークアンドライドに切り替えてはくれないでしょう。
それでも中には電車であっても座れれば、切り替えようと言う人もいるかも知れません。
前回紹介した、実証実験の現場である浦和美園駅は始発駅で着席通勤可能ですが、帰りはそうもいきません。他の地下鉄も同様、[信頼できる乗車待ち行列]始発駅が減っていく(1054.html)で取り上げましたが、並べば座れる始発駅が減っているのです。混雑は仕方ないとしても、着席の可能性がまったく絶たれてしまっては電車通勤への切り替える気持ちが遠のいてしまいます。
地域によって事情に差はあるでしょうが、大都市周辺においてパークアンドライドの利用者となる人は比較的お金に余裕のある人だと思うのです。自分専用の車を持ち、ガソリン代を払うことが出来る。その上、都心側での駐車料金の支払いが可能となれば、グリーン料金に置き換えることは難しくないでしょう。
電車で座れるならば、混雑した道路を運転したくないという人を呼び込めることになります。
地下鉄(千代田線)に、通勤ライナーがお目見えです。グリーン車の需要はあるということです。相互乗り入れが活発になり、地下鉄イコール短時間乗車という図式は成り立ちません。地下鉄の車両にもグリーン車が必要だと思うのです。1編成あたり1両とか。
指定席でないグリーン車は、座れない場合があります。これはちょっとした不安要素です。お金を出しても結局座れないなんてことになったら、またマイカー通勤に逆戻りになりかねません。
しかし指定席にしたら、予約合戦が激しくなるので、わざと踏み込んでいないのかもしれません。言い出せば切りがない問題なのでしょう。
私はグリーン料金を払って通勤というわけにいきません。グリーン車が増えた代わりに普通車の混雑が増すという事になってしまったら迷惑を感じるでしょうし、グリーン車で座っている人を見てやっかんでみたりもしてしまいます。
たとえグリーン車の導入で、車を利用していた人が電車を利用するようになっても「地球に優しい」とは素直に喜べない複雑な心境なのです。
(06.11.20)