席取り合戦がし烈になったのは単に座席数が少なくなったのみが原因ではないような気がします。
近所の電車がどんどん新型車両に置き換わっています。通勤地獄から解放してくれると言うふれこみです。1両あたりのドア数が増えて乗り降りがスムーズになると同時に、定員が増えて1編成あたり世界最大の輸送量になるのだとか。ドア数が増えたら座席が減り、座席数が減ったら立ち席が増えるというだけのことですが、ものは言い様です。
もっとも朝夕の殺人的なラッシュを緩和するという観点からはむげに批判はできないのですが、ひとつ大幅に変わったと思うことがあるのです。
それは、始発駅での乗車待ち行列でのこと。座れない確率が高くなった気がするのです。座席数が減っているのですから確率が低くなるのは当然なのですが、乗車待ち行列で人数を数えて「ここなら座れるだろう」でと思っても、期待はずれなことが多いと言うことなのです。よほど行列の前の方に並ばないとダメという感じなのです。
古いタイプの電車の場合は、「これは無理だろう」となかばあきらめていたにも関わらず、座れたりする経験が多かっただけに不思議な感じです。
座れると思って並んでいたのに座れなかったという仕組みを考えてみました。名付けて行列の信頼度を考えてみるです。
乗車待ちの行列を見て、電車の座席数と並んでいる人数を比較すれば座れるかどうか推測がつくものです。行列の信頼度が高いというのは比較的予想通りにいくという場合、行列の信頼度が低いというのは予想通りにいかないことが多いという場合です。なお行列の信頼度とは私が考えた造語で数学とは何も関係ありません。
行列が信頼できるとかできないとか、雲をつかむような話をしてみても始まりません。なにか数値で表せる指標を示さねばなりません。そこで考えたのが「安心ゾーン率」という私のオリジナル指標です。用意されている座席数に対して、乗車待ちの行列の何人目までが確実に着席できるかどうかを示す指標です。分母は着席できる座席数です。ひとつの扉から着席できる座席数が16席あったとして、行列の前から8人目までは確実に席を確保できるとすると、8/16で50%ということになります。
安心ゾーンの説明
対象エリアはひとつの扉に対して提供される座席数です。となりの扉からの乗客にとっても同様に対象エリアがありますから、その境界線は重要です。しかしながら、どちらにも属するあいまいなゾーンがあるのが現実で、はっきりとした数が把握できないと言うのが悩みの種です。
対象エリアとの境界線、つまりとなりの扉からの乗客と出会う場所では、激しい席取り合戦が展開されます。このような不確実な座席はレッドゾーンと名付け、行列に並ぶときには最初から座席数から除外すべきです。
となりの扉からの乗客のみならず、自分の行列にも不確実な要素はあります。例えば、行列の左に並んでいる人が車内の右の方に行ってしまう場合です。行列の右に並んでいたあなたはその人のために座れなくなってしまうのです。前方に家族連れとか友人同士がいたら要注意です。その人達は必ず行列を乱します。
このような不確実な座席をイエローゾーンと名付け、これも座席数から除外した方がいいのです。
ちなみにイエローゾーンにおける席取り合戦は暗黙の秩序があり、それほど激しいものではありません。並んだ順が明白ですから、後からの乗客が身を引くという事になります。むやみに先に席をとろうなんて大人げない人は「こども」くらいです。ですからこどもが後ろにいたら要注意です。
以上のような不確実な座席除いた座が安心ゾーンです。そして対象エリアの座席数に対する割合が安心ゾーン率です。新しい電車ではこの率が下がるというのには、座席数と座席の構造が大きく関連してきます。車両のタイプ別に比較すればその理由がわかることでしょう。
近所を走っている古き良き時代の近郊型電車。1両に扉が3つあり、座席は少々座り心地の悪い2人がけの席が向かい合わせになっています。そのボックス席は扉と扉の間に4つあります。こちらの扉の乗客が2つ、となりの扉の乗客が2つということで、対象エリアの境界線は明確です。ですからこの車両にはうれしいことにレッドゾーンがありません。
3扉ボックスシートの場合
図に示したとおり、この車両の場合ひとつの扉からは24座席が用意されています。かなり乱暴な決め込みですが、不確実な要素として各ボックスに1席づつ、合計4席がイエローゾーンと判断します。イエローゾーンを除いたが20席が安心ゾーンです。安心ゾーン率は20/24=83%と言うことになります。
これがロングシートになると様子が変わってきます。ひとつの扉から着席できる座席数は2席少なくなりますが、それ自体は大きな問題ではありません。それ以上に安心ゾーン率の低下が問題です。ロングシートの場合、席取り合戦の戦場「レッドゾーン」が存在し、これが2席。その両隣の4席が「イエローゾーン」で、残る安心ゾーンは16席。安心ゾーン率は16/22=73%という事になります。
これを見る限り、ボックスシートに較べると行列の信頼性が低下したという事がわかります。
3扉ロングシートの場合
新しく導入された4扉車は、座席数が減ったのは当然のこととして、安心ゾーン率も低下しています。まずは主流のロングシート車。ひとつの扉あたりの座席数が減って、14席になっています。ドアの数が増えたので、1両あたりではそんなに激減でもないのですが、行列の信頼性は更に下がった感じです。
4扉ロングシートの場合
境界の2席が「レッドゾーン」、そしてそのとなり4席が「イエローゾーン」となるでしょう。これだけだと3扉と同じなのですが、残る安心ゾーンはたった8席。結果として安心ゾーン率は8/14=57%に低下するわけです。どおりで予想が外れることが多いはずです。
さて4扉車にも数少ないながらボックスシートがあります。定員はロングシートに較べてわずかに多く、ひとつの扉に対して16席というところです。だからといって単純に着席の可能性が高まったわけではありません。逆に安心ゾーン率は低下しているのです。しかもレッドゾーンが拡大しているため、席取り合戦が激化するのです。
4扉ボックスシートの場合
3扉の場合、ボックス席は扉と扉の間に4つ並んでいましたから、2つずつ分け合うという秩序がありました。しかし、4扉の場合ボックス2つは両方の扉から同じ距離にあるわけです。お互いに「自分の席」だと信じて乗車してきますから、席取り合戦が激しくなってしまうのです。相手の扉からボックス席をねらう4人連れでもいれば、大変です。俊足のひとりがすかさず入ってきて、4席確保して「こっちこっち」と仲間を呼ぶようなことになれば、こちらの扉からの乗車組は惨敗です。安心ゾーン率は8/16=50%ということになります。安心ゾーンに入っていない50%がすべてが「レッドゾーン」ということは、穏やかではありません。
想定の決め込み方はかなり乱暴ですが、それぞれ同じような尺度で決めているわけですから、相対的な比較をする上では充分に理解していただけるのではないでしょうか。
単に座席数とか混雑度とかいった、統計的な数字だけでは表せないのが気持ちの尺度。今回は気持ちを表現する指標を考えてみました。
(04.08.16)
列が1列増えるということは席取り合戦のライバルがひとり増えるという事なのです。
東京ドームでの観戦を終えたファンでごった返すJR水道橋駅。行儀良く電車待ちの行列を作ろうとする乗客に対し、駅員さんは「当駅では整列乗車を行っておりません」とばらばらになることを促しています。
整列乗車と聞くと無批判に「良いこと」のように錯覚しがちですが、狭いプラットホームの利用効率を更に下げる、邪魔な存在でもあるのです。
混雑するラッシュ時には狭いプラットホームを有効に使うため、横3列や横4列に並ぶように誘導しています。しかしこれは席取り合戦を激化する元凶となっていると思えるのです。横2列に並んだときに比べて列の数が増えるほど行列に対する信頼度が低下するのではないでしょうか。
前回と同様に安心ゾーン率を算出してみます。なお組み合わせが際限なく増えてしまうので、今回は4扉ロングシート車のみを対象にします。前回は横2列の行列での想定での比較でしたが、今回は行列の列数を増やしてみて安全ゾーン率の変化を調べてみます。なお、図の見方は前回のコンテンツ「安心ゾーン率でわかる不安の増加(1050.html)」に説明がありますから、忘れた方はご参照ください。
これは前回と同じです。
横2列の場合
横2列の場合、ひとつの扉に割り当てられる座席が14席。そのうち前から8人目は安心して席を確保できるということで、安心ゾーン率は8/14で57%ということになります。
横3列になると同じ並びに違うゾーンの人が入り乱れてきます。例えば前から3列目には、安心ゾーン2人とイエローゾーン1人が居合わせます。これはおかしいことです。3人のうち誰がイエローゾーンになるのかわからない限り、3人共イエローゾーンと覚悟すべきでしょう。
横3列の場合
前から3列目はイエローゾーンの扱いにするため、前から2列目までの6人のみが安心ゾーンということになってしまいます。
同様に最後の並びである、前から5列目の人はすべてレッドゾーンとなります。分母は15人となります。分母は増えますが、単に不確定な要素が増えたということで、座席が増えたことではありません。
その結果、安心ゾーン率は6/15で40%と低い率になってしまいます。これは次に取り上げる横4列の場合よりも低く、今までで最悪の結果です。
横2列の行列を2倍にしたのが横4列ということになります。安心ゾーンは前から8人ということですから前から2列目までが安心ゾーンとなります。
横4列の場合
それからイエローゾーンは次の4人ですから、前から3列目ということになります。
レッドゾーンは本来2人ですが、同じ並びに4人いるわけで、この場合4人ともレッドゾーンとして扱う必要があります。
もともとし烈な席取り合戦が展開されるレッドゾーンですが、4人が並んでいることで更にし烈になること間違いなしです。
しかしながら安心ゾーン率は8/16で50%と横3列の場合よりも高い率を示しています。
数字は横4列の方が良い結果となっています。
横4列のメリットを強いて挙げると、右左の区分がはっきりしているということです。横3列の場合、中央に並んだ人は右に行くのか左に行くのかはっきりしません。中央の後方に並んだ人は前の人の様子をよく観察し、前の人が行っていない方を選ぶ工夫が必要になります。横4列の場合は、右の2人は右に行き、左の2人は左に行くということが暗黙の内に理解できます。
しかし、実感として横4列よりも横3列の方が混乱の度合いが低い様に思えます。
その理由としては
という感じで、うまく数字に表現できないこともあるということなのです。
いずれにしても、行列は細く長くがいいと思うのです。横4列の行列でドアが開くのを待っている時などは、かなりのライバル意識を持って、となりの人達を見てしまうのです。そしてよーいドンを待っている気の抜けない状態というのはわざわざ味わいたくない一瞬なのです。
(04.08.30)
電車を待つなら車両の中央部の扉に限ります。でもまだ電車が来ないプラットホームで、その位置を知るのにはコツがいるのです。
始発駅での電車待ち行列のことです。折り返し電車が到着するまでには時間がありますが、すでに行列ができています。長い行列もありましたが、確実に座れるように短い行列に並んでみます。
折り返し電車がやってきました。電車が停止した時、同じ列に並んでいる人からため息が聞こえます。これでは座れないという絶望感です。私が並んでいたのは、運転台のすぐ後ろだったのです。
運転台付近は特に座席が少ない
ご存じのとおり、運転台付近の扉から入ったところの座席数は少なくなっています。車両の中央の扉では、14座席用意されているのに対し、先頭車のこの扉はたった4席しか用意されていないのです。注意しなければならないのは、運転台が編成の真ん中にあることです。5両編成+5両編成で10両編成にする場合など、ホームの中央でも先頭車がお目見えすることになるのです。
行列の長さが棒グラフの様
慣れている人は、このような運転台に近い扉を避けて並ぶために、妙に短い行列を見かけることになるのです。この微妙な差をしっかり観察しなければ、後で後悔することになるのです。行列の長さが安心ゾーン率に比例しているというわけです。
運転台付近での席取り合戦はし烈です。用意されている座席はたった4席。隣の扉からの乗客も攻めてきます。こうなるといす取りゲームの感覚で、同じ席に2人のお尻が同時に突撃するのは、ここでは良くあることです。安心ゾーン率の用語で表現すれば、すべてがイエローゾーンかレッドゾーンの座席ばかりです。
最新の電車では運転台がゆったりとした設計になっており、運転台が広くなった分、扉が中央に寄せられているのです。昔の電車なら運転台付近にもたくさんの座席が設置されていたのですが、中途半端な座席は設置しないとばかりに、何もありません。
運転台付近の扉がずれている
ところで座席が少なくなっている箇所は運転台付近に限りません。同じ車両の反対側においては、トイレが設置されていることがあります。これも最新の電車ではとても広い場所が確保されており、提供される座席は極端に少なくなっています。
またトイレが無い電車であっても、車椅子スペースのために座席が設置されていない場合があります。これも車両の端である「車端」に見られます。
車椅子のスペース
乗り慣れない電車を待つときは「車端」を避けるべきということなのです。そうしなければ、運転台、トイレ、車椅子スペースが目の前に来てしまうのです。
とにかく車端に並ぶとろくな事がありません。座席がない箇所を多いのは前述の通りですが、その他にもいろいろ問題があります。
こんな悲惨な車端を避けるため、ホームに残されたわずかな手がかりをもとに、どの行列が車端なのか調べるのです。
車端を避けるために、扉の番号は重要な目印になります。例えば、扉ごとに連番が付けられている場合、4扉車なら4の倍数と1を加えた数。つまり1、4、5、8...が車端にあたり、先頭車とかトイレとか車椅子スペースがあるところです。3扉車なら3の倍数と1を加えた数です。ただし混雑したホームで、計算をしながら行列を探すのは骨が折れる作業です。
優先席も車端にあります。譲る側も譲られる側も気まずい思いをしがちな優先席を避ける傾向があります。整列乗車をしていても、左右に分かれる整然とした流れが乱されます。優先席を避ける流れのために列が乱れてしまうのです。そんな混乱に巻き込まれないためにも、優先席のある扉は避けた方がいいでしょう。整列乗車の案内に添えられた優先席のマークは、それを必要としない人にとって不可欠な目印となるのです。
優先席のマーク
そして優先席のマーク以外にもいろんな施設の場所を示すマークをどんどん掲示して欲しいのです。まだ来ない電車のトイレの位置を「利用するため」に必要とする人はいませんが、「避けたくて」必要とする人がいるのです。
(05.01.16追加)
もう実現しています。もっと広まれ。
(06.09.11追加)
こおりさんよりゲストブックに書き込みをいただきました。
昔は地下鉄では標準的だった号車入りのホームの乗車位置表示がJRでも普及してきましたね。
それでも、車両による違いが思わぬ不評になる場合があります。
それは一時期ドアを広くした車両が登場したために、同じ運用なのに、ロングシートで7人掛けじゃない電車が来る場合です。小田急はまだあるのかな?東京メトロ東西線には、まだあると思います。
小田急も、東京メトロ東西線もまだありますよ。始発駅ではちゃんと案内しているんでしょうか?座れるかどうか大変な分かれ目なのに。
ちなみに京浜東北線の6両目は通常6ドアですが、数編成(私の記憶では試作編成3編成と新編成3編成)は、朝の通勤時間でも座席が使用できる4ドアになるのです。座席が利用できることの案内は到着の直前ですが、ラッキーな案内ですから遅くても許せます。
(04.09.13)
テーマパークでは当たり前の細長い行列を、乗車待ち行列で実現して欲しいのです。
安心ゾーン率を算出しながら乗車待ち行列を考えてきました。
※いままでの話を読んでいない方は「[信頼できる乗車待ち行列]安心ゾーン率でわかる不安の増加(1050.html)」を先ずご覧ください。
以上の不安を解消するためには、使用する扉を少なくして細長い行列を作ればいいのです。つまり特急列車の待ち行列(自由席)が理想的です。特急車両は1車両に扉が多くて2箇所。狭い扉からはひとりずつしか入れませんから、行列は細長いものになります。
細長い行列といえば「[流れから見た「点」]テーマパークを歩く(2062.html)」で取り上げた行列を思い出します。テーマパークは客の満足が最大の売りであり、そこでの「快適な行列」が「細長い行列」であるということは心強い限りです。
通勤電車で特急並びを実現しようとすると、各車両の真ん中の扉を閉め切る(例えば3扉車なら中央の1箇所、4扉車なら中央の2箇所など)という方法があります。こうやって実現した特急並びはいろんなメリットがあります。
3扉車の乗車目標と4扉車の乗車目標が乱立して、どこに並べばいいのか迷うことがあるのです。しかし中央の扉を閉め切ると、いつでも並ぶ場所は同じになります。つまり車両の両端の扉のみを使用することになるのです。行列をつくる場所が固定され、迷わなくて大助かりです。
乗車する扉を2扉に限定すると行列の作り方にも蛇行させたりする様なバリエーションが増えます。3扉車とか4扉車だとすぐとなりに隣の扉があるので、まっすぐ以外に行列の作りようがありませんが、2扉だと可能になるのです。
写真は、東海道新幹線の行列案内表示です。階段やエレベータ等を避けて、なんとか整然とした並びを実現しています。
蛇行並び
安心ゾーン率の例を出すまでもなく、みんな細い行列を作りたくなるものなのです。隣の人との順序関係を明確にしておきたいというのが本音の気持ちでしょう。「詰めて3列に並んでください」といわれて、ようやく、しぶしぶ従うことになるのです。蛇行並びが可能になることで、自然な、細い行列が可能になるのです。
扉を一部閉めきりにすることで、乗降に時間がかかるという不安があります。
しかし、たくさんの扉が活躍するのは、途中駅であったり、降車と乗車が同時に行われる時です。一旦降車をすませ、車内清掃を行う場合は、関係ありません。車内清掃後、ものの1分で乗車は完了してしまいます。
改造にはお金がかかることです。しかし、冷暖房の効果を向上させるために各車両の1扉のみ開閉する機能をもつ車両は複数の鉄道会社に存在しています。ホームライナーや特急の改札のために一部の扉のみ使用することも多くの列車に見かけます。技術的には実用化済みというわけです。
ハイテク化が進んだ今の電車では、使用する扉を選択するというのは織り込み済みの機能のような気がします。ちょっとプログラムを変えるだけで利用が可能になるのではないでしょうか。
「たかが通勤電車にそこまでしなくても」と、言われそうですが、コストや手間を勘案が見合うのであれば、是非実現してもらいたい事なのです。これも習慣になれば、みんなに受け入れられると思うのです。
(04.09.27)
不安が高まれば、「われ先に」となってしまうものです。
大都市の鉄道事業者は直通運転には熱心です。「こんなに遠くへも電車一本でいけますよ。」と便利さをアピール。その通り、便利だと思います。
もともと、
のように、3本の電車だったものが、直通になるのです。
直通運転
しかし便利さとは裏腹に長い時間立ちっぱなしになったら最悪です。
少々混んだ時間帯の空席状況はこのようなものでしょう。
「どの駅なら座れるのか」という視点で見てみると。
となってしまい、乗客に選択の余地はありません。
直通化で失ったものは、「時間」か「着席」かという選択肢だったといるでしょう。
もし直通運転されていなければ、北のターミナル駅で、二つの選択肢があるのです。
私の場合、15分程度の乗車なら「ちょっと立っていこう」と思えても、30分の乗車なら何とか座ろうと考えます。ましてこれから1時間となると、元気な若者だってつらいと思うのは当然でしょう。
南のターミナルから座ってきた若者。南のターミナルでは席は空いてますから当然座っています。この電車、徐々に混んでいき、北のターミナルに到着するまでにいっぱいになるわけです。
北のターミナルから乗ってきた老人は、若者に「席を譲れ」というのも気が引けます。若者の方は席に執着する気もありませんが、声をかける勇気も出ずに、気まずくなることもあるでしょう。
また、若者だって1時間の長旅に座っていきたいと思うことだってあります。若いから席を譲れというのは納得いかないところもあるでしょう。
始発駅での「時間」か「着席」かの選択があれば、それぞれ納得できるわけです。
そもそも、鉄道事業者にとって始発駅は効率の悪いものなのです。始発駅の無い山手線が高収益をあげていることからも想像がつくでしょう。
始発駅は、折り返す電車を次々と処理するためにたくさんのホームが必要になります。それが直通運転すれば、上下各2線、プラットホームは1本で済むわけです。東急東横線の渋谷駅はあれだけホームがたくさんあるのに、東急田園都市線は島式ホーム1本で済むわけです。
駅がシンプルに
横浜から千葉方面行きの総武横須賀線に夕方乗るのです。がらがらです。品川に着くとほとんどの席が埋まり、東京駅ではほとんど座れないのです。
品川からの乗客はずいぶん優遇されていると思うところなのですが、鉄道事業者もそのあたりの不公平感に配慮して、東京始発の千葉方面行きという設定もあるのです。「時間」か「着席」かの選択が可能としてあるわけです。
これというのも、東京駅には4線2ホームあり、折り返し列車を設定しても大丈夫な余裕があるので、できる技です。地下鉄の場合、2線1ホームしかないので、難しいかも知れませんが、かなりの遠方にいくわけですから、始発の設定も欲しいところです。
(06.06.19)
大都市のターミナルを出発した急行や快速は、大きな中間駅から各停になることが多いのです。各停なのに急行や快速を名乗るのも変な話ですが、要するにこれも一種の直通運転と考えればいいのでしょう。
快速の末端が各停
前回の「[信頼できる乗車待ち行列]始発駅が減っていく(1054.html)」では、地下鉄と郊外電車が直通化すると座れなくなってしまうと嘆きました。始発駅が無くなって、行列しても座れないのです。快速と各停の直通化も、座れないという問題が生じるというわけです。
地下鉄と郊外電車の直通化は鉄道事業者の合理化の面が強くあったのですが、快速と各停の直通化は利用客のメリットが大きいのも確かです。
家路に向かう場合、都心のターミナルで乗車して、そのまま乗り換えなしで最寄り駅に着くというのは大きなメリットです。
都心に向かう場合は、途中駅から座るのは席取りの争奪戦に巻き込まれてしまいますが、中間駅では始発の各停が都心に向けて発車しますから、並べば確実に座れます。早さと着席のどちらかを選択できるというのですから、それはそれでいいと思うのです。
そんなわけで、快速と各停は直通運転しても、そんなにサービスダウンにならないというのが、考え方なのでしょう。
直通運転していた快速をあえて、快速と各停に分離することもあるのです。輸送力に大きな違いがあり、編成長が異なる場合です。付属編成の増解結で対応も可能ですが、面倒ですし、すべての編成に対応させなければなりません。
しかし、競合路線の乗客に乗り換えを促す場合に効果的だと思うのです。つまり快速の始発駅を設定して、その魅力で競合路線からの乗り換え客を呼び込むわけです。
各停と快速が分離
競合路線の乗換駅のこの駅。去年までは島式ホームが1本あるだけ。都心に向かう電車は、郊外からの乗客で混雑した快速電車のみでした。わざわざ乗り換えようという気にはなりません。
しかし、このたびホームが増設されて、立派になりました。そして実施されたのが快速の分割。ここより都心側は長い10両編成の快速、ここより郊外側では、短い8両編成の各停に分離したのです。郊外からの利用客は必ず、この駅で乗り換える必要がありますが、快速もこの駅が始発電車になっているのです。
ホームが立派に
始発電車は魅力的です。並んでいれば必ず座れるのです。競合路線からの乗り換えは、時間がうまく合わないことも多いのですが、どうせ待たされるなら座っていきたいと思うのは当然です。始発電車は、発車時刻より早めに入線するのが常ですから、待たされる時間も少なくて済みます。
この快速は、「運賃が安く、地下鉄と相互乗り入れているので、どこにいくにも便利」と競合路線の利用客に宣伝しています。
乗り換えは面倒だ
とばっちりを食ったのは、郊外側の利用客なのかも知れません。必ず乗り換えなければなりません。しかし、今回の改正は、もともと6両や8両編成だった快速を10両編成にするということも、目玉です。乗換駅での着席機会は増えたということも隠れた効果だと思うのです。
(06.07.03)
出勤時の始発駅だけでなく、帰宅時の始発駅も要チェックです。
何度か住まいを探す経験をしていますが、家賃の動向というのは客の希望に対して実に敏感に反応しているものだと感心します。良い物件は予算オーバーで、予算内に収まったと思ったら希望条件とあわない。
意外なのが外観が古くても新しくてもはあまり影響がないことです。実際、部屋の中はリフォームされるということで、住む上であまり違いがないのでしょう。当時は貸し手市場であまり贅沢をいえなかったのかもしれません。
一方、通勤の利便性は敏感に家賃差に反映されています。駅から徒歩圏の物件とバスの便の物件では大きく家賃が違った記憶があります。車で通勤する人も多いわけですから、駅からの距離は関係ないと思うのですが。
ここ十年、住まい探しをしていないので、家賃に対する感性はずいぶん鈍くなってしまいました。現在は状況が変わっていることもあるでしょうが、傾向は似たり寄ったりでしょう。
都心から放射状に伸びる鉄道路線毎に人気・不人気があります。沿線イメージ、街の成熟度の影響もあるでしょうが、帰宅時における始発駅の存在も一つの理由だと考えます。
そんなことに気づいたのは「特優賃」の募集でした。「特優賃」は収入に応じて補助金がでて、家賃に地域差が生じないというのが特徴です。また募集が公募ということで空室状況もわかります。
通常十二万円以上する3LDKマンションが半額程度から借りられるということで、抽選になるほどの人気です。ところが定員割れで空室が生じる地域があったのです。これが東武伊勢崎線の春日部市付近。
春日部は東京を環状に結ぶ国道16号が通っています。国道16号が通る他の都市としては東より千葉市、柏市、大宮市、川越市、所沢市、八王子市、相模原市、横浜市があり、だいたい東京から同じ様な距離にあるといえます。しかし住まいを探すそのころの私の目には、春日部は遠く感じられました。
よくよく思い出してみれば、座って通勤が出来ないということが理由でした。帰宅時に始発駅として利用できる浅草は、利用するターミナルとしては東によりすぎている。日比谷線経由だと確実に座れる始発駅がない。定期券のルートを確定しないといけないので、どちらか一方しか選べない。帰りが大変だというのが実感でした。
かつて、情報源が雑誌に限られていたころは、始発駅の有無の特集なんてお目にかかれませんでした。貴重な紙面は、特定の街の紹介や沿線の紹介がせいぜいです。もっとも、「始発駅のとなりが狙い目」ということは、ちらほら紙面や広告に見かけましたから、特別マイナーな話題でもないわけです。
ネットの情報が増えて行くにつれ、始発駅(始発電車のある駅)の情報もちらほら見られるようになりました。この情報を参考に住まいを考えるのは快適な通勤のために必須でしょう。
始発駅の物件は高いことが多いので「始発駅のとなり」が狙い目となります。となりの駅といっても、都心側のとなり駅は、始発駅の恩恵にあずかれないばかりか、急行や快速が通過する事になるので所要時間の点でも、遠い方のとなり駅と対してかわらないので要注意です。
いずれにせよ、出勤時の始発駅は住まい選びの目安として認められつつあるのでしょう。
住まい選びに帰宅時の始発駅は重要だと思うのですが、あまり注目されていないようです。
先に書いた東武伊勢崎線の他にもあります。
こんな感じで、都心側の始発駅を考えるとなかなか難しいところがあるわけですが、世の中それほど注目されていないのでしょう。以下なぜか理由を挙げてみました。
この意見、私自身もどこまで言い切れるのかは、自信がありません。前回[信頼できる乗車待ち行列] 始発駅をつくる(1055.html)で取り上げた始発駅の話を考えたきっかけをちょっと書いてみました。
現実問題、始発駅の有無だけで住まいが決まることはないでしょうが、家への帰り道に始発駅だったらなあと思うことはあるのではないでしょうか。
(06.09.11追加)
万年寝太郎さんよりゲストブックに書き込みをいただきました。ちょっと違った分析をしていただいてます。
帰りも疲れていれば座っていきたいという人は多いと思います。
書かれていたこと以外に個人的に思いつく原因としては、
(1)出勤時の始発駅は車庫のある駅や折り返しのある駅のように、時刻表をよくみる鉄道ファンでなければわかりにくいが、帰宅時は都心のターミナルなので、始発のある駅は直感的にわかりやすい。
(2)朝と違い時間に余裕があるので、各停とかに乗ればいい。
(3)電車はだんだん空いてくる。急行なんかなら各停との接続駅がねらい目。出勤時は終点に向かって混む一方・・・。
(4)朝よりダイヤに余裕があるので路線によってはホームライナーや特急が多い。どうしても座りたければお金を払えばいい。
というようなことがあるんじゃないだろうかと思います。
(06.08.28)
電車の扉が開く瞬間、中央なら一歩先んじることができるのです。
[信頼できる乗車待ち行列]安心ゾーン率でわかる不安の増加(1050.html)から、もっぱら座席の確保について語ってきましたが、列車待ち行列の先頭で起こる「(ロングシート)端の争奪戦」も見逃せません。扉の横に位置する、居眠りに最適の場所です。
今回取り上げるのは、乗車待ち行列が横3列の場合。[信頼できる乗車待ち行列]短い行列ほど混乱する(1051.html)では、横3列は混乱が少ないと書きましたが、中央と両側という対立にちょっとした混乱の元があるようです。
ちなみにこれは始発駅で、一旦ドアを閉めて車内清掃(あるいは一旦ドア閉め)を待つという場合の話です。途中駅であれば、乗車する人が扉の中央に立っているということは降りる人の邪魔になってしまいます。
また通勤電車の典型的な両開き扉の場合のことです。1枚扉だと、端に並ぶ方が有利になってしまいます。
乗車待ち行列が横3列の場合、左右の2人は手前のシートを選ぶことが多いでしょう。暗黙のルールでそんな風になっています。すると残る奥の2箇所のどちらも中央に並んだ人は選ぶ事ができます。確率でいうと4分の2の選択肢があるわけで、中央に並ぶ価値が垣間見えます。
中央なら右も左も選べる
また扉が開く瞬間、最初の一歩は中央に並んだ人の特権です。素早く開くように見える扉も、コンマ1秒の世界では左右の人より1歩先んじるということです。ほんのちょっとの差ですが、目的地の座席まではあまりにも短い距離です。左右の人は遅れを取り戻すことはまず無理でしょう。こういった点でも中央有利です。
中央が有利
奥の席は日差しが強いので、「手前の席を確保」したい場合、中央に並んでも確保可能です。本来は左右に並ぶのが暗黙の了解でしょうが、すでに並んでしまっている場合です。乗り慣れている人にとって、奥に行くと日差しで暑いということは承知のことで、乗車待ち行列は両側が先に埋まるということです。天候にも左右されるということです。
別に特別な方法をとるわけでもなく、一歩足を踏み出して、くるりと急旋回して、右(または左)の人の前に、さっと割り込むという感じです。最初の一歩の先に出すということは無敵ということですが、割り込まれた方は、不意を突かれてむっとしていることでしょう。
不意を突く
これは掟破りということでつつしむべきですが、これくらい中央に並ぶことはこれくらい強力というわけです。
前から2列目でも中央は有利です。最前列は、確実に端をとることができますから、心に余裕があります。本当の争奪戦は前から2列目からと言って良いでしょう。あとに残るのは1席のみで、これを2列目の3人が争奪するわけです。
4人目になれる可能性
図でわかるとおり、最前列の赤の人につられ、2列目の青の人も一歩前に先んじています。この図の通りに行けば、希望の端の確保は確実というわけです。
このように3人並んでいたら、中央に並んでおこうという話です。当たり前の様ですが、私はこのことを同僚に聞くまでは、気づかなかったのです。ということで、今回は人に聞いた話でした。人それぞれ、独自の行列哲学を持っていることを痛感したのでした。
(07.12.03)