外からみるとちっぽけな穴ですが、大切な役割を担っていると思うのです。
もともと高さ30mのビルしか建てられない京都において、高層ビルとして計画されたJR京都駅の駅ビル。景観論争はありましたが、結局、巨大な壁の様な駅ビルが誕生しました。
その駅ビルは、京都駅の北側にあります。もともと京都の市街地といえば、京都駅より北側の地域を指していますから、駅ビルは市街地に向かっている事になります。
京都駅よりまっすぐに伸びる通りが、烏丸(からすま)通りです。京都駅を南の終点とし、市街地を南北にまっすぐに縦断するメインストリートです。かつては市電やバス今では、地下鉄が京都駅を終点として烏丸通りを一直線に走ってきました。市街地が終わるということを意味していました。
烏丸通り
一直線に伸びる烏丸通りの勢いは南に向けられました。南の広大な土地に新都市をつくるという構想は、京都財界の夢であったようです。地下鉄は京都駅より南に延伸され、勢い余って近鉄奈良駅まで乗り入れています。もともと狭い路地だった烏丸通り(駅より南側)は拡幅され、立派な幹線道路に生まれ変わりつつあり、「任天堂」「オムロン」など、世界に羽ばたく地場産業が沿道に次々に立地しています。烏丸通りを軸に新都市が展開されるというストーリーが展開されようとしていました。
そんな矢先、烏丸通りを分断する「巨大な壁」をつくるというのですから、大問題です。烏丸通りの勢いが、遮えぎられてしまいます。これは、「風水」に代表される目に見えない発想ですが、風水を信じなくても「巨大な壁」が閉塞感を生むということは賛同してもらえるでしょう。
勢いを遮断されるという危惧に対応してくれたのか、ビルには小さな風穴が開いています。10m角くらいですから、「巨大な壁」に対しては、ちっぽけなものですが、勢いはそこを通って行けと言わんばかりです。
風穴より北側を望む
風穴より南側を望む
この風穴、駅ビルの東側。つまり巨大階段と反対側のエスカレータを登っていくとあります。結構広い空間。一体何の空間かと首を傾げる人も多いと思います。尚、「烏丸通りの勢いを通す穴」というのは私の勝手な推測で、本当は何のためにあるのかは知りません。
(初出02.05.17)
(再編集04.06.14)
理屈抜きに、空が見えるとほっとするのです。
前回のJR京都駅ビルの風穴(2110.html)に限らず、建物のすきまに空が見えるとほっとするものなのです。
周辺は商業ビルだらけで空とは無縁のとある駅前。まっすぐにのびる道路の先に空がみえるのです。
坂道の先の空
道路に勾配がついてあり、坂道を上りきった方向より先は空があるというからくりです。
視線の先 その1
理由はどうであれ、道の行く先に空が見えるというのは、ほっとするものです。
空がみえるとほっとすることを、まちを計画するときには忘れがちになります。
例えば、この駅前。橋上駅舎から駅前広場を望んでいます。ペデストリアンズデッキがあるわけですから、見晴らしは良いと思いきや、ビルが真ん前を塞いでいたりするのです。
威圧的な壁
普通、駅前広場からは、まっすぐに道路が延びていて、自然と建物のない空間が生まれるものなのです。駅前の視線上にはビルがそびえ立っているのです。道路が無ければビルは建ちますし、建物に囲まれた空間は落ち着くという考えもありますが、空が全く見えない威圧的な壁が立ちはだかっているというのは考えものです。道路が必要でなければ、視線の先に歩行者用の通路でもいいから設定してやれば良かったのですが、そんな配慮はありません。
視線の先 その2
こんな時はビルに穴が開けてやるしか無いでしょう。例えば京都駅の様に、小さな風穴をあけてやるとか、3階部分まで吹き抜けにしてやるとか、東京都庁の様に、真ん中に切り欠きを入れてやるとか。
すきまをつくる
上記で東京都庁の話をしました。この都庁の第一庁舎は、周囲の高層ビルより背の高いビルとなっています。この施設は社会的に強い影響を持ちますが、その上建物まで巨大では見る人に強い威圧感を与えてしまいます。そこで基本は周囲と同じ高さのビルで、加えて2本の塔をくっつけた様な形態にしてあるようです。
社会的な影響から威圧感を感じるという点ではこのビルもそうでしょう。
どっしり動かない
道路上の延長にこの建物あるのです。この先の交差点がT字状ならこんなことはあるかもしれません。
視線の先 その3
しかし、道路はこの先十字路で、無理矢理東方向にねじ曲げられているのです。まるでこのビルを避けているかのようにです。実はこのビルは、この一帯の開発地の土地所有者で、付近の開発を計画する時点で、このビルはすでに建てられていた様です。ですから、仕方なくこの位置にあるというわけですが、なにやら妙な威圧感を感じるものなのです。
(06.05.22)
歩かせるという仕組みは、人を引き付ける力になると思うのです。
先日、テレビの「街ネタ」なんとかというコーナーで、八王子と立川の比較をやっていたのです。正確な放送内容はうろ覚えでウェブ上にバックナンバーが無いのであいまいな情報ですが、どうやら八王子駅ビルのデパートが撤退する一方で、立川駅への集客が多くなっているとのこと。
立川駅については「結節「点」といっても点ではない(http://hint-eng.jp/jdy07317/1031.html)」でも語った通り、JRとモノレールの乗り継ぎ客が長い連絡歩道橋を歩くことになるため、商業施設への集客に適した構造であると考えていました。
今回は休日の立川駅での人の流れを観察してみたというわけです。駅前に降り立ったときの第一印象は大切で、「何かがある」という期待感は集客に結びつくと思うのです。
略図
前述の通り、モノレールは立川北駅と立川南駅の2駅があって、いずれもJR立川駅から結構歩くのです。駅ナカ商業施設なのにエキュートの多くの店舗が改札外にあり、モノレール乗り継ぎ客を見込んでいると思われます。
まずJR南口からモノレール立川南駅方向を望みます。モノレールが到着すると歩道橋の幅いっぱいになるほど乗り継ぎ客の列が広がります。ちょっと寄り道をする人が存在するのは確実なのです。
立川南駅を望む
北側に廻って、立川南駅方向を望むと、JR立川駅の幅は大きいことに気づかされます。JRの北側にひと駅、南側にひと駅というのも自然の成り行きと思えます。
立川北駅より立川南駅方向を望む
駅前広場の端にモノレール駅があるので、モノレール立川北駅もJR立川駅から、少し離れているのです。
立川北駅
駅前広場が広々としていて、乗り継ぎのために毎日ここを歩くのは大変です。
立川駅を望む
ちょっと左を向くと真新しいデパートが見えていて、ちょっと立ち寄ろうという気になるかも知れません。
北口のデパートその1
駅前にデパートがありましたが、JR立川駅を降りた人はこれ以外にも行き先があるのです。その人の流れは、歩道橋いっぱいにまで広がっています。
デパート東の通路を行く1
その歩道橋は、駅前のデパートの東側に沿っています。道を隔てて雑居ビル街があり、ここを境にデパート側が土地区画整理事業(完了)の事業区域となっています。
デパート東の通路を行く2
土地区画整理事業の事業区域にそってジグザグしています。
デパート東の通路を行く3
にぎやかな景色です。手前の空き地は土地区画整理事業の事業区域内で、敷地の整備は終わりましたので、今後ビルが建つのでしょう。
デパート東の通路を行く4
コーヒーショップなど店舗が並ぶと思ったらこの区間はデパートではなく雑居ビルでした。
デパート東の通路を行く5
歩道橋の奥にはデパートその2があったのです。
北口のデパートその2
デパートその2とホテルの間は無機質な未来都市のような感じです。
未来都市のよう
道路が整然と整備されています。歩行者は2階の歩道橋を歩くので、地上は無人でジオラマのようなクリーンな印象がある反面、さびしい感じもあります。
ジオラマのような光景
更に北に向かうと、この先は都市軸沿道地域と呼ばれるゾーンですが、まだ開発途上のようです。大規模な公園のほか、シンボル的な施設も立地するとかで、まだまだ「何かありそう」という期待感があります。
都市軸沿道地域へ
従来からの大通りもあります。先に家電量販店が店舗を構えていますから、人通りはにぎやかです。
大通り
店じまいセールをやっていました。再開発の計画があるところなので、進出したデパートに客を奪われたのかは定かではありません。
店じまい
この様に見てきますと
こんな風に人の流れが生み出される仕組み見られます。北口西側や南口はまだ再開発等の計画があるようですから、これからも立川駅に行けば「何かがある」という期待感で、人を寄せ集める続けると思うのです。
(12.05.14)
「奥にもデパート」の立川に対し、「樹の陰に商店街」が八王子を象徴しているように思えるのです。
前回の奥にもデパート(2112.html)では、立川には人を集める第一印象があると語りました。「通り道だから」のみならず「何かありそうだ」も重要な要素だと思うのです。
そもそも、テレビで特集されていた八王子対立川がどんなものなのか、見に行ったのが前回の奥にもデパート(2112.html)の報告だったわけです。今回は八王子の第一印象を感じてみます。
まず駅に降りたったときの八王子駅はこじんまりした印象です。立川駅が8番線まであるのに対して、八王子駅は6番線までという規模の違いもあるでしょう。
乗車数は立川駅が15万人あるのに対し八王子は8万人程度で、ここにも差があります。
細かい数字を列挙するのも大変なので、列車の本数(昼間のパターンダイヤ)で比較してみます。
北方向は立川駅の方が潜在的な顧客が多そうです。
八王子駅 | 立川駅 |
---|---|
八高線 2本/1時間×4両編成 | 青梅線 5本/1時間×10両編成 |
八王子の八高線、立川駅の青梅線を比べると列車本数がそもそも違います。青梅方面の乗客は、直通で行ける立川を選ぶことになるのだと思うのです。
南方向はいずれの駅からも「首都圏の環状線」が出ています。
八王子駅 | 立川駅 |
---|---|
横浜線 6本/1時間×8両編成 | 南武線 6本/1時間×6両編成 |
こちらは、列車の本数は同じ、横浜線の方が編成数が多いようです。
ただし、横浜線の途中駅には町田駅があり、デパートに用がある場合、流れていきそうな気がします。あくまで、第一印象ですが。
数値で比較してみましたが、ここでは駅前の第一印象を感じてみるのです。
南口はのどかな感じです。そもそも大型商業施設は北口に集積していたので、そんなものなのです。
南口はのどか
立派なビルが南口に出来ました。低層部にスーパーを備えたマンションです。立派だけれど基本的に地元のための店ということです。
南口の立派なビル
北口を眺めてみます。南口とは異なり、にぎやかな様子が伺えます。
左側(西)を眺めるとにぎやかな看板のペンシルビルが立ち並びます。
北口の西方向
正面(北)を見ると立派なビルがあります。
北口の北方向
右側(東)を眺めるとオフィスビルが並びます。
北口の東方向
駅ビルはデパートが撤退したのです。引き続きJRが経営するとのことですから、心配無用です。
駅ビル
八王子の特色は古くからの商店街にありますが、駅前からは印象に残りません。
駅前から印象に残らない理由のひとつが大きな樹です。上記、北口の西方向の写真で右端に大きな樹が見えます。この先に商店街があるのです。シンボル的な樹ではあるのですが、商店街を望むためにはじゃまになるのです。
樹がじゃま
少し進むと見えるのです。気づいた場所は駅前広場の真ん中の歩道橋の上で、商店街方向には道が無いので戻るか進むか大きく迂回しなければならないのです。
商店街が見えた
駅前から見た商店街はこじんまりしていたのですが、正面に立つと立派なゲートなのです。
商店街の正面
中は歩行者専用の立派なショッピングモールです。大切なインフラといえるでしょう。是非大切にしていただきたいものです。
歩行者専用
地元ならではの店舗もたくさんあります。
まんじゅう店
このように見てきますと、立川VS八王子の図式はあまり意味がないような気がします。
大規模店舗の強力な集客とと個人商店街の個性が一緒になって相乗効果が期待できるのですが、八王子では商店街が孤立する結果となっているのです。古くからの商店街で力を持っていたことで、駅からの第一印象などは眼中に無かったのだと思われます。
心配すべきことは、八王子におけるパイの取り合いであると思うのです。今後JRによる駅ビルのリニューアルが完了すれば、人の流れは駅でストップしてしまうでしょう。今でも、商店街の前には大きな「樹」があって、商店街の存在を隠そうとしているのですから。
(12.06.11)