出会い頭の事故が少ない「安全」な十字路の条件は、進入時することが「安心」な十字路でしょう。「危ない!危ない!」と、警告する前に安心の工夫を。
私の実家の近くにある交差点なのですが、そこは
十字路の標識(1の道路)
2の道路
の2本の道路が交差しているのですが、ドライバーはその種別などお構いなしです。1.の道路の車は、我が物顔に通過していき、2.の道路の車は、優先道路なのに徐行しています。私が幼少の頃からずっと一発触発の状態ですがなぜか放置されています。地元の人はあきらめ顔で、注意深く走行している次第です。なぜ停止線に加えて止まれのサインが設置されないのか不思議です。
(10.08.16追加)
久しぶりに現地を見ると改良されていました。
1の道路が優先道路でした。だれがみてもわかるように、センターラインとドットラインを交差点内に明示しています。
どうやら私は間違った解釈をしていたようです。見る人によって解釈が異なる危険な交差点だったと言えるでしょう。
十字路には必ず「信号」か「止まれ」を設置することを最低限のルールとした上で、更に配慮したいことがあります。それは、交差する相手の道路に「止まれ」が設置されているかどうか、こちらでも表示することです。
車を運転中、「止まれ」の標識に従い停止したところ、右(左)からも車に近づいてきたとしましょう。その車の側に「止まれ」の標識があるのかないのかで、こちらの行動は大きく変わってきます。
もし、交差する道路も「止まれ」の標識が設置されているなら、交差点に進入する順番は自分が一番です。
しかし、相手が優先道路ならば、やり過ごさなければなりません。この判断は、裏を向いている標識の内容を知らなければ判断できません。地元の車はそのようなことは知っているので問題にならないでしょうが、初めて交差点を通過する車にとっては、はらはらさせられる問題です。
ここからはアメリカの受け売りですが、「止まれ」の標識に交差点の状態を表示するのです。「この交差点の片方は優先道路で止まらない」とか、「4方向ともに止まれです」とかの情報です。アメリカなら「2way」とか「4way」ですが、日本なら「2方向」「4方向」という表現でしょう。
ここまで書いて、ようやく知ったのですが、「前方優先道路(329の2)」という規制標識がありました。規制標識「徐行(329)」に補助標識「前方優先道路(509)」を上下に並べたものです。「一時停止(330)」にも「前方優先道路(509)」をつければ、私の希望通りの標識になります。
ところがそれができるか疑問なのです。以前は「前方優先道路・一時停止(330の2)」という規制標識があったのです。見た目は規制標識「一時停止(330)」の下に補助標識「前方優先道路(509)」をつけたものでした。ところが廃止になってしまったのです。一時停止するのだから、相手が優先道路かどうかは関係ないと考えたのかもしれません。
北海道には、「十勝型事故」と、呼ばれる事故があるそうです。十勝は地域の名前で北海道の中央部の広々としたイメージのあるところですが、広々とした田園風景とは裏腹に交通事情は危険きわまりないようです。スピードの出しすぎと「止まれ」標識の見落としで、出会い頭での事故が発生するというのです。
田園地帯の先進国アメリカでは何かいい手はないかと飛行機の下をのぞいているとおもしろい風景に出会いました。その田園地帯の道路は基本的に格子状になっているのですが、交差点ごとに十字交差をなくすよう形状が食い違い交差点になっているのです。片方の道路はまっすぐいけるのですが、もう片方は必ずT字型交差になっているので、とまらざるを得ないのです。これぐらい徹底しないと事故は減りません。都市部では用地の確保が大変ですが、地方部では現実的でしょう。
出会い頭の事故が少ない「安全」な十字路の条件はは、進入時することが「安心」な十字路でしょう。「危ない!危ない!」と、警告する前に安心の工夫を。
ここまでアメリカでの事例と比較して来たのですが、もうひとつ忘れていたことに気づきました。「YIELD」標識です。たとえば、高速道路の合流部で、側道の側にあったりします。止まる必要はないけれど、向こうが優先だよという感じです。そんなことで調べてみたら、「YIELD」に該当する標識が日本に無いということに問題視する意見がありました。
優先道路に関してどんな標識があるのかおさらいしてみます。
「とまれ」「徐行」「優先道路」と遠まわしな表現をしていますが、「譲れ」とひとことで言えば一気に解決する問題なのです。「譲れ」といわれたからには、目的を達成させるためにあらゆる手段を考えるのがドライバーに与えられた使命なわけです。必ず止まらなくてもいいけれど、必要ならば止まらなければなりません。相手の車の邪魔をしてはいけないのです。運転中は優先道路かどうか関係なく、譲るか譲られるの2つに1つしかないわけです。
不必要な「とまれ」が「譲れ」に置き換われば、理不尽な取締りも減ってくれるでしょう。先日、自転車で充分に減速をし、周囲を注意したにもかかわらず、停止線の前で足をついて停止していないという理由で、お巡りさんに注意を受けてしまいました。足をつかなくても停止しているのですが、だめなようです。
(初出00.05.04)(再編集03.08.11)(再編集09.10.05)編集前(log/2050.html)
「面」という安全地帯では無いのです。
横断歩道の基本は幅を持った線だと考えるわけです。線と面の違いをパソコンのイラスト機能でたとえるとこうなります。
グラフィックソフトで見られる、線と面の違い
見た目は同じ様ですが、考え方がしっかりしていないと、安全に疑問が残る横断歩道ができてしまうのです。
横断歩道は、
というのが理想です。
あまり箇所を減らすと歩行者が不便になってしまいますが、横断歩道の幅を不必要に広げないということは実践可能でしょう。
歩道の幅が広いと斜めに横断することで余計に時間がかかってしまいます。
斜め横断は時間がかかる
幅広なのに歩行者がまばらだと、ひとりに注意してもまた次の歩行者が現われ、運転者は注意が散漫になるわけです。
ひとり去ったらまたひとり
同様ですが、右左折車は、どうしても死角ができやすい環境で通行します。死角を少なくするためにも歩道の幅は狭いほうが良いのです。
曲がり角の死角
実例を挙げながら、考えをまとめてみましょう。
この写真は高架駅の改札口前です。駅の出口は開口部が広く、その幅に合わせて横断歩道の幅が決まっています。狭くすると歩行者が横断歩道以外で道路を横断することが予想されます。そこでこの横断歩道の場合は2つの理由から、安全上問題ないと考えるのです。
駅前の事例
歩行者信号が斜めを向く
しかしながらこちらの事例は、交差点に近いので右左折車が生じます。これは好ましくはありません。
ふたつをひとつの横断歩道に
テレビで紹介されていたのですが、そもそも2箇所だった横断歩道を1箇所につなげたというのです。大きくすれば目立つというのはなるほどですが、広くなっただけ歩行者が自由に動き回れるということを意味します。横断歩道は狭いほうが良い理由を考えると、危険な横断歩道だと考えるわけです。
特に小学生たちが広い横断歩道上を右往左往自由に行き来する中に車両が進入する様子を思い浮かべるとヒヤヒヤします。
車両と共存する歩行者の心構えとしては、道路と直角方向にまっすぐ歩いていくというのが運転者に親切な歩行者というものです。横断歩道が線であることを意識させるのがエスコートゾーン(視覚障害者用道路横断帯)です。見た目は点字ブロックです。そういえば、歩道にはあっても横断歩道にはありませんでした。
視覚に障害がある場合に役立つ施設ですが、それだけでなく、皆がこれを中心に歩くのだと意識することで、車両と歩行者が共存できる良い関係となるわけです。
エスコートゾーン
(初出09.04.20)(再編集11.03.21)編集前(log/2051.html)
主従関係がわかることが安心な十字路なのです
道路交通法に「優先道路」という用語があります。センターラインがあるものが優先道路のひとつと思って良いのだと思うのですが、定義が曖昧なので今回はこの用語を使いません。「優先道路」らしい道路同士、そうでない細い道路同士でも、主従関係を明確にするのが今回の話ですので、別の用語を使うことにします。
この主従関係をまちづくりの用語で「主道路」「従道路」と呼びます。これらは、各交差点ごとに決まるもので、細い道路と交差するときはこちらが「主道路」で、ちょっと進んだところで太い道路と交差するときはこちらが「従道路」となるわけです。
主道路・従道路
なお「主道路」「従道路」の用語は、他の意味にも使われることがありますから、毎回定義を確認されたほうが良いでしょう。
「主道路」「従道路」を区別するための「ドットライン」という標示が見られるようになりました。
ドットライン
ドットラインが無い道路では、走行中の道路が主道路なのか従道路なのかわかりづらいものです。従道路であれば、「とまれ」標識や「停止線」標示等があるのでわかりますが、主道路側には目印がありません。道路が交差する度に「どちらに停止線やとまれ標識があるのか」と、状況をみて判断するしかありません。
積雪地では区画線・道路標示は見えなくなります。ここでは雪が積らない地域の話とします。
[安心な十字路]安心な十字路(http://www.geocities.jp/jdy07317/2050.html)で取り上げた、十勝型事故ですが、「どちらが譲ればよいか迷う」という点では都市内の事故においても考え方は同じでしょう。近所のY型交差点で、主道路側の車両(青色)が停止して、従道路側の車両(緑色)を譲っていることになっていました。また、赤い車のように、右折しているつもりも無く、突っ切っていく車があります。とにかく主道路側の道路がはっきりしていないのは危険です。
Y字交差点で迷う
不思議なことに、こういう危険な箇所には、ドットラインが無いように思えるのです。どうやら道路整備をするたびにドットラインは整備するようで、それまでは自治会などで「事故多発地帯」とか立て札を立ててしのいでいるようです。ドットラインは万能ではありませんが、停止線のほかにも、道路幅いっぱいにドットラインが引かれていれば、ヒントになることに間違いはないでしょう。
たて看板よりドットラインの方が効果があると思う
なお、この写真の奥の方にドットラインが見えます。実はこの交差点は五差路なのです。5本目のこの道路は比較的新しく舗装しなおされた道路のため、ドットラインがあるのです。肝心なわかりにくいY字路は手付かずというので、整備方針に疑問を持ったというわけです。
道路の危険度を3種類に分けてみます。
まず「事故発生」については、標識や標示の設置に携わる警察も把握しているわけですから、何らかの対策を講じることになるでしょう。「苦情あり」についても同様に道路管理者が把握しており、警察に相談するのは時間の問題でしょう。
しかし、「ヒヤリ」と「問題なし」については、改善の優先順位をつけるのは大変だと思います。すべてを点検する必要があるわけです。その結果、「ヒヤリ」と「問題なし」の分類をあきらめて、舗装のやり変えをする際についでに、標示を改善するというのんびりとした方法となっているのに違いありません。「ヒヤリ」とするところを先行して改善してもらいたいものです。
主道路網図は、私が考えた造語です。この図により「ヒヤリ」の箇所が見つけやすくなると思うわけです。
主道路網図を作成すると各交差点の主従関係を必ず表現することになります。決して交差せず、どちらかの道路が分断されて、起点(終点)となります。起点(終点)が従道路、その他が主道路となるわけです。
現地の道路の主従関係が明確に、図面どおりとなっているのであれば大丈夫です。主従関係が曖昧なら、「ヒヤリ」の可能性が大です。
主道路網図
新市街地を整備する際に、道路の段階構成を考慮します。
このような感じで、太い道路から細い道路に車が流れていくというイメージです。主道路網図においても、幹線道路、国道といった太い道路から順に書き入れていくとうまく主従関係が表現できます。
段階構成の概念
たとえば、その地域で古くからある細い旧道に住宅地の開発等で取り付け道路を設けられた場合どちらが優先なのかわかりづらくなります。はっきりと旧道側にドットラインをいれてやらなければなりません。
細い旧道に開発道路が取り付く
Y字交差点で、片方の角度の開きが少ないときでも、それがメインでない(つまり従道路)であることは良くあることです。図面上でもそのように表示し、道路の標識、標示で迷うことなく誘導されるのか点検が必要です。
Y字交差点は注意
優先道路同士が交差する?場合があっても、信号制御が無いのであれば、片方は優先道路失格ですから、従道路ということをはっきりと明示する必要があります。
優先道路もここでは従道路
主道路に対して、両側から1本づつの従道路が取り付きます。片側から一度に2本取り付くことは、それぞれの主従関係がはっきりしていないということで、ありません。どちらかに合流させてから、主道路に接続させる必要があります。現実にこれだけ丁寧に誘導されていませんから、現地は混乱しているわけです。
一気に交差させない
(09.11.02)
日本にもちゃんとあります
[安心な十字路] 主道路網図(2052.html)では、六差路での安全を考え、「主道路」と「従道路」の1対1の関係で、交差を表現してみたわけです。複雑に見えるということは、六差路は安全の確保が難しいということを示しているわけです。
一気に交差させない六差路
混乱を解消するひとつの解決策が「ラウンドアバウト」です。これですと、中央の還流部を主道路として6本の従道路が接続する形になります。
還流部が主道路
ラウンドアバウトについては、ゲストブック(http://asp.atomicweb.co.jp/id/nagare/bbs/)にポピィさんよりいただきました。海外に多く見られるこのタイプの交差点が「ラウンドアバウト」と呼ばれるとは知りませんでした。
北海道には「ロータリー」と称して、似たようなものがあるようです。
旭川の常盤ロータリーは、形状がラウンドアバウトに近いものです(写真は下記のリンクを参照)。
旭川のロータリーの案内標識
出典:Wikipedia(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Asahikawa_rotary.jpg)
ところが、これが魔の交差点といわれているらしいのです。
本来、ラウンドアバウトは還流部が主道路、接続する道路が従道路となって、主従関係がはっきりするものなのです。ところが、ここを貫く国道を走る車両に、一旦止まるという意識は無いというのです。還流部の交通が従道路だと勘違いすることが既成事実化し、慣れが必要な交差点となっている様です。
旭川と同様の車の流れであったものを、視覚化したものが釧路のロータリーと言えそうです。車線がひかれています。
車線をひいてわかったのは、かなり複雑だということ。上記で紹介したラウンドアバウトの計画と設計(http://www.genv.nagoya-u.ac.jp/ge1/nakamura/research/roundabout/)で、ラウンドアバウトで無い例として挙げられています。
正しいラウンドアバウトといえる交差点が千葉市内京成みどり台駅前にありましたのでご紹介します。
駅前の案内板です。新しく造成されたまちのシンボル的な存在の様で、駅前からの目抜き通りの終点にあります。接続する道路は5本ということがわかります。
案内板
ロータリーを示す道路標識もあります。
道路標識
「中央島」と呼ばれる部分は、
といった効果があるといえるでしょう。
2番目の効果(減速を促す)を確実とするためには、交通島は道路幅員より幅広であり、植栽などの遮へい物で向かい側を隠す必要があるでしょう。
中央島
車はスムーズに流れます。極端にスピードを出せず、極端に待つこともありません。すべての車が平均的に流れているというイメージです。
ドットライン
還流部が明確になるように、ドットラインが見られます。還流部が主道路である証です。
みどり台駅前の例で見るように、接続する道路が片側1車線で、還流部も1車線の時にうまくいく様です。「交通量の少ない交差点での適用に限ります」(ラウンドアバウトの計画と設計 : interchange(http://www.genv.nagoya-u.ac.jp/ge1/nakamura/research/roundabout/))ということなのでしょう。
還流部は幅広めに作られており、
などの機能があります。
仮に交通量が多いからといって、これを2車線にするわけにいかないのです。
いったん内側の車線に入っても、交差点を出るときは外側に戻らないといけないわけです。結局、外側の1車線のみの交通容量が、交差点の交通容量になってしまうのです。
還流部が2車線だったら
旭川や釧路の様に多車線の国道が、ラウンドアバウトに接続するのは無理がありそうです。2車線ともに左折車線で左折した後は1車線になるのですから、混乱の元です。
接続道路が2車線だったら
大きなラウンドアバウトへの挑戦が、ラウンドアバウトの発祥の地、イギリスで行われている様です。
その名はマジックラウンドアバウトです。標識を見ただけで、運転に不安を感じます。
マジックラウンドアバウトの標識
出典:Wikipedia(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Magic_Roundabout_Schild_db.jpg)
広大で複雑な交差点は、対岸にたどり着くのか不安になりそうです。
マジックラウンドアバウトの様子
出典:Wikipedia(http://en.wikipedia.org/wiki/File:Magic_RoundaboutP_db.jpg)
初心者は、ラウンドアバウトの基本どおり、外側をぐるっと走ってゆけば、各道路にたどり着くようです(その記述が書かれたリンクを見失いました)。
いよいよ日本でもラウンドアバウトの動きがありました。
既存の交差点をラウンドアバウトに改良するのは初の試み。市は五差路の交差点処理には有効な手法として全国にアピールしていくようです。
イメージ図(下記リンク参考)によれば、接続する道路はいずれも2車線道路であることから、還流部が1車線で済み、混乱は少ないと思われます。
ラウンドアバウト(環状交差点)については道路交通法の改正も視野に入っているようです。平成25年2月(14日)には、改正案とともにパブリックコメントの募集を行っています。
意見の結果では、環状交差点へ進入する場合に「一時停止」を求めるか否かで意見が分かれているようです。
飯田では整備が完了しています。横断歩道前はしっかりと「とまれ」で停止、環状路の手前はドットラインで優先道路との主従関係が示されています。進入車両は1段階目で歩行者、2段階目で環状交通に注意することになります。
また軽井沢でも事業が進行中です。こちらは実験中なのですが、自転車の扱いを取り入れている点が飯田と異なります。
いよいよラウンドアバウトが「環状交差点」として正式に認められました。
新しいことを導入するときには心配する声が出るのは常ですが、ラウンドアバウトにも懐疑的な意見があるわけです。
渋滞が発生するという報告があるのです。
ラウンドアバウトは交通量が多い交差点には不向きです。観光地といういうことで人出が集中する日があるということなのでしょう。
動画を見ていると、なかなか環状道路に合流できない車が見られます。今回の改正で、「止まれ」標識に代わり、「ゆずれ」標識が適用されたということです。高速道路の合流部の様に、「入れてください」といった感じの合流が求められるのでしょう。
危険だという投稿もあります。
動画を見てみると、かなり乱暴な運転であったり、安全対策の準備不足だったり、ラウンドアバウトに限らないことだと思うのですよ。慣れない利用者に対する手厚い対策は必要なのでしょう。
(09.11.30)