2.10 なめらかな歩道の段差

2.10.1 わずかな段差が唯一の目印

私にとっては邪魔な段差も、必要な人がいるわけです。

 ちなみに基準によれば、自転車走行可の「歩行者自転車道」は少なくとも3mの歩道幅が必要です。歩行者を避けて車道に降りなければならないような狭い幅ではありません。つまり幅2m足らずの歩道は「歩道」であって、自転車は通ってはいけないはずなのです。でも車が頻繁に走る車道は通りたくないのでつい、歩道を利用させてもらっています。

歩道と車道の段差は5センチメートル

 車道と歩道との相互の出入りは、どこでもというわけではありません。沿道利用のために設けられる「車両乗り入れ部」を利用して、出入りするわけです。この「車両乗り入れ部」はその名の通り、車両が歩道に乗り入れるために設けられていますが、自転車や歩行者の事は考慮されていません。車道と歩道の段差は約5センチメートル。簡単に歩道と車道の行き来をしてもらっては困るという意図もありそうです。自動車にとってはタイヤの感触から、歩道であることを伝える大切な段差でしょう。たとえそんなことをお構いなしに歩道に乗り上げて駐車してしまう人がいたとしてもです。しかし、自転車にとってはスリップの危険ととなりあわせの段差です。

こわごわ乗り越える段差
こわごわ乗り越える段差

 この写真は、改良前には段差2cmの縁石があったのだと思われますが、撤去されています。

 ずっと歩道なしの道路が続き、ここから歩道が始まります。車道の端を肩身の狭い思いで走ってきた自転車が、歩道に逃げ込むの利用される切り下げ部となります。現に事故があったのかも知れません。

撤去された段差

横断する箇所では2センチメートル

 歩道と車道を隔てる部分の段差は何か理由があるようだというのはわかります。しかしわからないのが、歩道が車道を横断する部分の段差。例えば横断歩道に接する部分など人が歩くことを前提としている部分についても、わずかながら段差があることです。自転車に乗っていて、かなり速度を落としても「ガタン」と衝撃があります。自転車は歩道を大手振って走れないのでなにも言えませんが、車椅子にとっても乗り心地が悪いどころか乗り越えることが困難なのではないでしょうか。

 ところが、この微妙な段差は、視覚障害を持った人にとっては、車道と歩道を区分する大切な目印だというのです。交通バリアフリー法が施行され、その具体的な方策としての「道路の移動円滑化整備ガイドライン」(基礎編)にそんなことが書かれていました。横断部分においても2センチメートルの段差で区切るとのこと。視覚に障害がある人にとっては、安全に関わる重大なことですから、私が自転車で乗り心地が悪いくらいは我慢すべきなのでしょう。しかし双方にとって良い解決策があるように思えるのですが。

(初出02.05.17)(再編集04.05.17)(再編集11.03.21)

http://hint-eng.jp/jdy07317/

2.10.2 けずられた縁石

基準は変わらなくとも、工夫は続くのです。

けずられた縁石

 前回お伝えしたように、歩道と車道の間には段差が必要なのです。視覚に障害がある人にとっては大問題というのでは何も言えません。

 最近おもしろい歩道の縁石を見つけました。東京の大田区なのですが、表面がきらきらしているのです。どうやら表面がけずられて、コンクリート製品に含まれる砂利の切断面がきらきらしているようです。何のためかとよく見てみると車道との段差をなくすために削っているようなのです。

けずられてキラキラする縁石
けずられてキラキラする縁石

 歩道と車道の間には2センチメートルの段差が必要だと思っていただけに、いつの間にか世の中は移り変わったのかと目を疑ったところです。

横から見ると三角形

 ネットを調べてみますと私の浅学さが浮き彫りになった状態です。そもそも「道路の移動円滑化整備ガイドライン」に記載があった、2センチメートルという段差の規定は、かなり以前から決められていたようです。そして車椅子の利用者にとってはやっかいな段差として長年の課題だったとのこと。

 車椅子利用者が段差なしを望み、視覚に障害がある人が2センチメートルの段差を望むという狭間で自治体によっては独自に工夫を施してきました。そのひとつの解決策が横から見ると三角形の縁石です。これなら車輪はスムーズに乗り上げることができますし、きつい傾斜を利用して視覚に障害がある人にもなんとか認識できるようです。

横から見ると三角形
横から見ると三角形

 写真は埼玉県戸田市で見た事例です。ギザギザの突起が段差を認識させる工夫ということでしょう。

段差ゼロの縁石
段差ゼロの縁石

 板橋型BFブロックというのもあります。

BFブロック
BFブロック

 材質が自然石みたいなのもしゃれてますが、歩車道境界ブロックは、厚さを薄くしながらも、切り下げ部分(横断歩道部分)はゆったりとした勾配が確保できるように幅広になっています。

しゃれたデザインも
切り下げ部は広く

切り開き型

 「横から見ると三角形」方式では不十分と見たのか、切り開き型(UDブロック)というのも、いくつかの自治体にて考案されています。車椅子の車輪が通れるように縁石の一部を切り欠くというものです。

 2センチメートルの段差はこちらの方式の方がより実感できるでしょう。

 小平市の事例を見ることが出来ましたのでちょっと撮影。

 横断歩道の真ん中にありました。

遠景

 ちょうど車椅子の車輪が通れる幅のようです。

拡大

 別の場所では色が付いていました。

色つき

 ここは狭い歩道。ブロックがひとつしか設置されていません。自転車には便利ですが・・・。

ひとつ

 設置箇所は歩道の巻き込み部分(曲線部分)が多いようです。進行方向に対して斜めに乗り入れる事になるので、ぎこちないのでは?

(初出04.05.31)(再編集11.03.21)編集前(log/2102.html)