3.04 何かすっきりしない郵便番号

3.04.0 郵便番号の使用率はたった1.4パーセント

1000万通りもある7けたの郵便番号。実際に使われているのはたった14万通り。7けたも必要だったのか疑問です。

別ページに郵便番号の研究(資料集)(ref/3040a.html)があります。

郵便番号は7けた必要か

電話番号を覚えるくらい大変

 かつてアメリカで、私が記入した日本の郵便番号をみて「たった3けた?」と、一笑されてしまいました。アメリカの郵便番号(ZIP)は5けた+4けたでしたから、日本はちっぽけな国だと思われたに違いありません。郵便番号が7けたになって、すこし近づいたというところです。

 メールにてOさんよりアメリカの郵便番号は5けた+4けたの9けたであるとの指摘をいただきました。ありがとうございます。このページを書いた当初は5けたという前提で書いていましたので、誤解を招いたことをおわびします。訂正前の文を読んで日本は郵便番号の長さでアメリカを上回ったと誇らしく思われた方、残年ながらアメリカは10億通りを表現できる郵便番号をすでに持っていたのです。
 赤ちゃんを含む全国民に交付してもまだあまるという組み合わせの多さです。郵便番号さえ書けば各戸に届くくらいに役立つ番号になっていればすばらしいのですが、そんな事は無いでしょう。

 7けたともなると、覚えるのが大変です。電話番号を覚えるくらいのやる気と心構えが必要です。電話番号を覚えることについては、それさえ覚えれば各家庭の回線が特定できるのですから覚えがいがあるというものです。しかし郵便番号は、さらに番地を書かないと郵便物は着きません。あまり役に立たない番号では覚える気になりません。

 郵便局での仕事が楽になるものの、利用者にとってのメリットがあまり見えてきません。
 しかもこの郵便番号、6けたでも足りたのではという疑問がわいてきます。「3けた+00+2けた」というパターンの郵便番号があまりにも多いのです。真ん中の「00」部分に変化が無ければ、これは実質5けたということです。もともと5けたであった地域を含めても6けたでも、足りるのではないかと思うわけです。

郵便番号のリストをダウンロードしてみた

 そんな疑問を解消すべく、「郵便ホームページ」の「郵便番号検索」にて配布されている郵便番号のリストをダウンロードしてみました。まず分かったことは、郵便番号は12万個(その他事業所が2万個)あること。これが意味することは、詰め込めば6けたでも足りたということです。000000から999999まで100万通りのうち、7分の1に割り当てればいいわけですから、それほど苦労しなくても割りふれそうです。実際には7けたですから、1000万通りも確保できるわけです。たくさんある組み合わせのうち70分の69は使用しない事になります。

 今までの郵便番号との互換性を重視し、郵便局毎の分類も意識して、番号に多くの機能を持たせるという意図は分かりますが、欲張った命名は、いたずらにけた数を増やすばかりか、予想外の番号の増加に対応できなくなってしまいます。「帯に長したすきに短し」のごとく中途半端になってしまいます。

郵便番号の数トップ10は愛知県と北海道が健闘

郵便番号は14万個

 郵便番号リストを分析してみました。
 データ数は郵便番号が121,146個。別に大口事業所用21,129個。合計14万個。これだけあると、エクセルに読み込むことが出来ず(行数が足りない)、Perlでスクリプトを組んでデータを取り出しました。

郵便番号数が多いのは広大な面積を持つ北海道

 まず郵便番号(大口事業所を除く)を県別に集計しました。

TOP10

 1位が北海道なのは、「面積が広いから」だと変に納得するのですが、2位の愛知、3位の京都はどうも説明がつきません。郵便番号は町域単位(○○市××1丁目の××が町域)でつけられているので、町域の多い府県だということだけは分かります。

順位 県名 番号の数
合計 121,146
1 北海道 8,237
2 愛知 6,822
3 京都 6,648
4 新潟 5,309
5 兵庫 5,196
6 福島 3,787
7 大阪 3,696
8 千葉 3,536
9 岐阜 3,513
10 富山 3,224

その他 71,178

大口事業所が多いのは東京

 次に、大口事業所も県別に集計してみました。

TOP10

 予想通り東京が第1位です。
 しかし、日本でナンバー2の大都市であると思っていた大阪が、6位であることは意外でした。もちろん、「個別の郵便番号を設けた」事業所の数が都市の活力と関連があるわけではありませんし、京都や兵庫を併せて関西圏が成立しているわけですから、単純な比較は出来ませんが、「関西の地位低下」も関連するのではないかと考えます。
 愛知、北海道、福岡は、通信・物流の拠点としての機能が高まっているのでしょうか。0120ではじまるフリーダイヤルのコールセンターが福岡県や北海道に立地するのを見かけます。
 また、先日文具の宅配を頼んだら、愛知の物流センターからわざわざ配送されてきました。
 全国一律料金の郵便なら、どこに物流センターを設置しても料金は変わりません。どこでもいいのであれば、土地や人材の確保など地方の方が有利であるという判断をする事業所が多いということでしょう。

順位 県名 番号の数
合計 21,129
1 東京 4,514
2 愛知 1,534
3 北海道 1,274
4 福岡 845
5 静岡 762
6 大阪 703
7 神奈川 631
8 埼玉 549
9 新潟 530
10 広島 515

その他 9,272

県別の集計結果は、郵便番号の研究(資料集)(ref/3040a.html)に全県分掲載しています。

(初出02.12.14)
(再編集03.11.17)
(修正04.06.14)

http://hint-eng.jp/jdy07317/

3.04.1 郵便番号の4-5けた目は有効に使われていない

郵便番号7けたのうち、すっきりしないのが4けた目と5けた目。あまり役に立っていないように見えます。

旧郵便番号では、4千個/10万通りしかなかった5けた番号

 かつて3けただった旧郵便番号にとって、4けた目、5けた目はおまけみたいなものでした。どのくらいおまけだったのか、前回に紹介した郵便番号データから、旧郵便番号を分析してみました。

 3けたの番号は1000通り(000〜999)のうち954個が使用されていました。95%以上ということは、かなり有効に使われていたと言えるでしょう。
 一方5けたの郵便番号は10万通り(000-00〜999-99)のうち4058個(3けたの郵便番号は除く)にすぎませんでした。たった4%しか使用していないことになります。どうやら4けた目、5けた目はあまり有効に使われていなかったようです。

新郵便番号でも、4-5けた目は相変わらず補助的な役割

 同様に7けたの新郵便番号でも4-5けた目について調べてみました。

 3けたの時代もたいして使われなかった4-5けた目ですが、7けたになっても相変わらず活用されていません。7けた化の理由として「町域毎に番号を割り当てる」ことがあるようですが、このことは6-7けた目で実現されていますから、4-5けた目の役割はありません。

ということで4-5けた目は

と、いうように補助的な役割に甘んじているようです。

 7けたの郵便番号における「4-5桁目の使用率」を調べてみました。「4-5桁目の使用率」とは、4-5けたの数字100種類(00〜99)に対してそれぞれ該当する郵便番号はどのくらいあるかというものです。

 例えば下表の様な状況の場合

1-3けた目4-5けた目6-7けた目有無
6180000
6180001
6180002
6180003
6180004
6180005
6180006
6180007
6180008
6180009

 10個の内、5個使用されているので使用率50%となります。

 郵便番号データを分析した結果は次のグラフの通りです。 組み合わせは、4-5けたの組み合わせは00〜99までの100組ありますが、そのうち使用率の高いベスト10を取り上げグラフにしました。7けたは全部で1000万通りですから、それぞれの数値は10万通りに対する割合になります。

4-5けた目の使用率

4-5けた目は限られた番号に集中する

 グラフを少し分析してみます。7けた化の原則通り、「00」の使用率は高いです。大口事業所用の「85」「86」も高い使用率を誇っています。

 しかし考えてみれば、上位でこれだけの割合で使用してしまっては、下位グループでは、ほとんど使われない状況になることが心配されます。平均すると1.4%(1000万通りのうち14万通り)となるはずなのに、上位グループで30%とか10%とか占めてしまっているのです。

 郵便番号の研究(資料集)(ref/3040a.html)に、全ての4-5けた目の使用率を掲載しておきました。せっかく枠があるのに有効に使われていないことがわかると思います。4-5けた目の有効な使い道は今後のお楽しみということなのでしょう。

(初出02.12.14)
(再編集03.12.01)

http://hint-eng.jp/jdy07317/

3.04.2 9で始まる郵便番号は、なぜか本州の真ん中に分布する

裏日本が後回しなんていうのは、解せないところです。

 引き続き、郵便番号を分析しています。今度は郵便番号の下4けたは有効に使われているのか、郵便番号上3けた「000」〜「999」に対して、何通りの下4けたが割り当てられているかを調べてみました。全部で1000通りもあるので、とりあえずそのベスト10を並べてみたところ、ちょっと気になる特徴が見えました。

番号の上3けた 所在県 合計 割合
939 富山県 1392 13.9%
501 岐阜県 1216 12.2%
959 新潟県 1157 11.6%
969 福島県 1031 10.3%
669 兵庫県 873 8.7%
300 茨城県 841 8.4%
989 宮城県 824 8.2%
930 富山県 808 8.1%
949 長野県 804 8.0%
039 青森県 788 7.9%

9で始まる郵便番号の分布は9県に及ぶ

(04.07.12追加)

 郵便番号の最後は099番台の様です。以下のコンテンツは999番台が最後である前提で書かれていますので、推理は間違っていたと言うことになります。

 郵便番号は1〜0の順で振られているとの情報をUさんよりMAILにていただきましたので引用させていただきます。

 これって実は何の不思議なことでもなかったりします。
 結論から言うと、郵便番号は0〜9の順ではなく、1〜0の順に振られているのです。
 つまり、大まかには以下の順番で振られており、強引にジャンプしているのは1箇所(沖縄⇒北陸)だけ、また、南東北と北東北はきちんと続いているということになります。
 関東甲信→東海→近畿→中国→四国→九州→沖縄⇒北陸→東北→北海道
記憶があやふやなのですが、10年くらい前に観た番組でこのことについて放送していました。
確か、山形県の視聴者からの依頼で
 「北海道や沖縄が999なら分かりますが、何で山形が最後なんでしょう?バカにされてるようで納得いかないので調べて下さい!」
というようなものがあって、郵政省かどこかでちゃんと裏づけを取っていた覚えがあるので間違いないはずです。
 その視聴者の方も、隣の秋田県が意味的には1000番台と知って納得していたようでした。

 なるほど、そうだったのですね。私の仮説はもろくも崩れ去りました。ちょっとした手直し程度では解消しないので、当分の間コンテンツはこのまま置いておきます。ですから読まれる際、混乱の無いようお願いします。

 さて、気になったのはベスト10のうち6個が900番台という事。おそらく、郵便番号を000、100、200、とつけていって、900番台になってもまだ沢山残っていたので、無理矢理押し込んだのに違いありません。
 そこで、900番台はどんな県が該当するのか、他の都道府県と共に、一覧にしてみました。

最初の1けた 対応する県名 郵便番号数
0 岩手県、秋田県、青森県、北海道 15997
1 神奈川県、東京都 7280
2 神奈川県、千葉県、東京都 7057
3 茨城県、群馬県、埼玉県、長野県、栃木県 12403
4 愛知県、三重県、山梨県、静岡県 13201
5 岐阜県、京都府、三重県、滋賀県、大阪府、兵庫県、和歌山県 13058
6 京都府、大阪府、鳥取県、島根県、奈良県、兵庫県、和歌山県 19148
7 愛媛県、岡山県、広島県、香川県、高知県、山口県、徳島県 14271
8 宮崎県、熊本県、佐賀県、鹿児島県、大分県、長崎県、福岡県 14163
9 沖縄県、宮城県、山形県、新潟県、石川県、長野県、富山県、福井県、福島県 25697
合計 142275

 まず、北海道、北東北から始まって、北から順と思いきや、関東に飛んで、東海、近畿、中国、四国、九州と続き、最後に沖縄。しかし、沖縄と並んで、南東北、北陸が最後に登場。一体なぜなのでしょうか?
 いずれにしても、900番台がたくさん残っていたというのは本当で、含まれる県の数は9県と最も多いですし、郵便番号の数も25,697個と他に比べて多いのです。100番台などは東京都と神奈川県のみで郵便番号の数は3分の1以下です。

例えば939で始まる番号は1400通り/1万通り

 最も「下4けたが有効につかわれている」939を取り上げてみました。

 939で始まる郵便番号は、富山市とその周辺地域です。下表で分かるように郵便番号が3けたの時代から、939-01、939-02、939-03...と4-5けた目をフルにつかってきた様です。

3けた 7のうち5 市郡
939 93900 富山市 1
93935 富山市 1
93980 富山市 70
93981 富山市 61
93982 富山市 39
93901 93901 羽咋郡 1
西礪波郡 53
93902 93902 射水郡 33
93903 93903 射水郡 95
93904 93904 射水郡 16
93905 93905 富山市 60
93935 富山市 43
93906 93906 下新川郡 53
93907 93907 下新川郡 39
93911 93911 高岡市 28
93912 93912 高岡市 18
93913 93913 砺波市 73
93914 93914 砺波市 33
93915 93915 東礪波郡 61
93916 93916 西礪波郡 52
93917 西礪波郡 37
93917 93917 西礪波郡 4
93918 93918 東礪波郡 63
93919 93919 東礪波郡 41
93921 93921 上新川郡 12
婦負郡 10
93922 93922 上新川郡 55
93923 93923 婦負郡 60
93924 婦負郡 86
93925 93925 東礪波郡 19
93926 93926 婦負郡 45
93927 93927 婦負郡 53
93935 93935 富山市 1
合  計 1316

 後回しにされた広大な9県にたった100通りの900番台を割り当てる。その結果、大量の枝番で処理せざるを得なかったようです。
 7けたをフルに役立てている地域というわけですが、裏を返せば後回しにされたのが原因です。そしてこれらの地域が「裏日本」と呼ばれる地域だというのが偶然の一致とは思えないのです。

(06.03.13追加)

かばさんよりゲストブックに郵便番号の由来について情報をいただきました。

確信の持てない噂話ではありますが、郵便番号導入時は鉄道による郵便輸送が主流だったため、全国時刻表の掲載ページで決まった、という話を聞いたことがあります。
確かに、全国の時刻表は東海道本線から始まり、支線を含めながら西下、四国、九州まで行くと上信越から東北、北海道・・・という順なので、あながち嘘ではないのかも。

未確認情報とのことですが、納得するところがあります。

(初出02.12.14)
(再編集03.12.15)
(追加04.07.12)

http://hint-eng.jp/jdy07317/

3.04.3 大口事業所の番号枠は足りなくなるのか

7けた化により1000万通りの組み合わせが可能なのに対し、たった14万通りしか使われていないのに「番号の余裕がない」というのは変な話です。

ベスト10のうち、6を占める東京

 前回と同じ集計方法で、今度は大口事業所の多い順に並べてみました。

番号の上3けた 県名 事業所を除く郵便番号数 事業所数 合計 割合
104 東京都 135 263 398 4.0%
101 東京都 35 236 271 2.7%
100 東京都 194 228 422 4.2%
103 東京都 23 210 233 2.3%
105 東京都 133 203 336 3.4%
102 東京都 15 202 217 2.2%
460 愛知県 25 174 199 2.0%
920 石川県 550 160 710 7.1%
060 北海道 59 147 206 2.1%
812 福岡県 56 147 203 2.0%

 予想通り1位から6位までを東京都が独占。次いで愛知県、石川県、北海道、福岡県と続きます。

104で始まる東京都中央区の大半は3棟の高層ビル

 大口事業所数第1位の104は、東京都中央区です。京橋、銀座、築地、八重洲といった、町域が並び、日本を代表する企業の本社機能が集中しています。
 事業所を除く郵便番号は135個と、たくさんあるように見えますが、このうち町域を表す番号はたった16で、(いずれも4-5けた目が「00」)、その他は、晴海オフィスタワーという3〜40階建ての高層ビル3棟の階毎にひとつずつ付与されています。
 4-5けた目に着目して分類すると、「00」が町域、「60」〜「62」が晴海オフィスタワー、「80」〜「86」が大口事業所ということで、基本ルール通りに整然と整理されています。

4-5けた目 全郵便番号 事業所
00 16
60 45
61 40
62 35 1
80 11 11
81 67 67
82 36 36
83 41 41
84 57 57
85 38 38
86 12 12
総計 398 263

 番号割り当ての基本的な方針では「85」〜「87」が、まず大口事業所に割り当てられますが、ここ、104では大口事業所が多いため、「80」〜「84」も割り当てられています。まだまだ、空き番号がありますから、番号の枯渇はまだまだないとおもうのですが、新郵便番号のマニュアルには気になる記載があります。

大口事業所向けの番号が枯渇する?

ウ.大口事業所の個別番号の設定基準
(ア)一般の個別番号
第一種郵便物(定形郵便物)及び第二種郵便物の1日平均配達物数が、原則として50通以上の事業所とします。ただし、大口事業所の数が多い地域又は個別番号の余裕のない地域においては、50通を超える基準を定めている場合があります。

 事業所の所在地によって、恩恵が受けられない場合がある様です。個別番号の取得を、ビジネスチャンスとしてとらえている事業所にとって、たまたま自分の所在地の基準が厳しいとなれば、残念に思うでしょう。
 7けた化により1000万通りの組み合わせが可能なのに対し、たった14万通りしか使われていないのに「番号の余裕がない」というのは、郵便番号の仕組みが硬直化しているという事でしょう。
 大口事業所用の個別番号が不足する地域などそれほど多くないでしょうから、とりあえず特別枠を設けるなどをして全国同一基準での割り当てを維持すべきです。「原則として50通以上の事業所」だけれど「お上の裁量」で玉虫色になるなんていうのでは、民営化はまだまだという感じです。

(初出02.12.14)
(再編集03.12.29)