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付加追越車線は高速道路だけでなく一般の道路でも有効だと思うのです。
登坂車線という車線があります。遅いトラックなどが邪魔にならないようによける車線です。これは道路交通法にものっているれっきとした車線。これに似たものでゆずり車線(避譲車線)というのもあります。どういう根拠の車線なのか良くわからないのですが、坂道でなくても遅い車はよけなさいというのが主旨です。
図中、赤い車は譲っていますが、他の車は譲っていません。結果、急いでいる青い車は灰色の車に追随するしかありません。おそらくいらいらしながら「ゆずれ」と迫っている事でしょう。急がない車、急ぐ車いずれにとっても、ストレスのたまるものです。
ゆずり車線
ゆずり車線を設ける目的は「危険防止」とのことです。反対車線を越えてまで無理して追い越す車が後を絶たないということで設置されているようです。
「遅い車はゆずりましょう」なんて、言われても困ってしまうのです。制限速度で走っているのに「遅い」という認識はないのです。後の車に道を譲ってみたところで、その車も急いでおらず、追い抜いてくれないなんてこともあるでしょう。
最初からゆずり車線すぐに入るという手もあります。しかし左側(ゆずり車線)が追い越しに使われているような地域の暗黙の了解があったりしたら、かえって邪魔になってしまいます。ゆずり車線が終わって、本線に戻るときに車の列に割り込むという形になるのも気が引けます。いずれにしてもストレスがたまる仕組みです。
「ゆずり車線」というキーワードでサイトを探すと、掲示板には「アンチゆずり車線派」が大勢いることがわかります。自分はどちらを走ればいいのかわからないという困惑の声です。
ある国道事務所の一般利用者の声のコーナーでは、そんな事情が掲載されていました。
<レポート>
南部町山内の登坂車線のある場所です。ここはカーブになっています。御坊市名田町(お首地蔵付近)にも登坂車線がありますが、ここは下り坂です。本来なら、速度の遅い車が左に寄り道を譲るところですが、先を急ぐドライバーがどんどん左からスピードを出し、追い越しをかけるので危険です。ドライバーに安全運転を促すような標識等あれば…と思います。
というモニターレポーターの声に対して、事務所の返事はこうでした。
<返事>
この3箇所は、「登坂車線」「ゆずりレーン」として速度の遅い車が左のレーンに寄って後続車に前を譲って、全体として円滑な走行を確保できるよう上り坂の区間を整備しました。
道路交通法では、追い越す車両の右側の車両通行帯を通行しなければならないと追越しの方法を定めています。追い越しするときは、交通ルールを守って安全運転に努めていただきたいものです。
わかったようで答えになっていません。
上記のレポーターさんは、「注意をうながす」という実効性の低そうな提案をされていますが、本当に言いたいことはこうでしょう。
「追い越したい人が追い越せばよい」
つまり遅いと思ったら左車線に行くのではなく、追い越したい人だけが右車線に行く様にすればいいということです。それを実現させた車線が平成15年の道路構造令の改正で登場しました。「付加追越車線」です。
付加追越車線
赤い車のみならず他の車も左側の車線に誘導されるので、青い車のように追い越したい車だけが右側の追い越し車線を利用するというわけです。赤い車は、後ろを気にすることなく、のんびり走っていればいいのです。
道路構造令の改正に向けパブリックコメントを募集していました。集まった意見に対する見解を読んでみると、付加追越車線の方が好ましいとのことです。
<意見>
避譲車線(ゆずり車線)の整備も道路構造令に位置付けて欲しい。
<見解>
避譲車線(ゆずり車線)は、低速車を高速車から分離して通行させることから、交通の安全性と円滑性確保の観点から付加追越車線の方が望ましいと考え、付加追越車線を道路構造令に規定することとしています。
さて、せっかく決められた付加追越車線なのですが、高速道路(第1種)にしか適用されないというのです。上記のパブリックコメントの他の意見にこんなものもありました。
<意見>
付加追越車線の設置できる範囲を第一種の道路以外にも拡大して欲しい。
<見解>
第一種の道路で片側1車線の道路について原則分離することとしたため、低い速度で走行している自動車を追い越せないため、付加追越車線の設置を道路構造令で規定することとしています。片側2車線以上の道路や片側1車線の非分離構造の道路については、低い速度で走行している自動車に追従せざるを得ない道路構造とはなっていないため、付加追越車線の設置について道路構造令では規定しないこととします。
つまり、一般道で上下線が分離されていない道路は、理論上反対車線を使って追い越しが出来るので、付加追越車線を設置しなくていいとの旨です。冒頭の例でも取り上げたように、反対車線を使って追い越しをするから交通安全上問題があり、ゆずり車線を設置する例があるわけです。ゆずり車線より望ましい付加追越車線を一般道でも設置してしかるべきでしょう。
現実社会では道路交通法により車両通行帯が運用され、道路構造令にはなくても、3車線の道路、リバーシブルレーン、中央ゼブラゾーンなどが生み出されています。
また運用上では2種、3種、4種(つまりすべての道路で)も可能だということです。(ただし、「可能」だということは構造令のどこにも載っていません。参考サイトに紹介した講習会資料には載っているのですが、根拠は見つかっていません。)
おそらく一般道でも付加追越車線は実現できるのだと思います。でも必要性を主張する強く意志が必要となります。道路構造令に1種(高速道路)の場合のみと書かれてしまえば、それを乗り越えてまで「付加追越車線」を追求するより「ゆずり車線」でいいや、と妥協してしまうのが設計者や事業者の気持ちでしょう。
これから先も、利用者から不評で、技術的に望ましくない「ゆずり車線」は作られていくに違いありません。
(05.10.24)
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